6月なのにバスが見えない? 季節感に翻弄された弥栄ダム戦【藤田京弥 最高峰への道 Part.3】



日米のトーナメントシーンを股にかけた藤田京弥さんの戦いぶりを追うこの連載。アメリカでの連戦を終えて帰国後、JBトップ50第2戦の舞台・弥栄ダムへ。十八番のサイトフィッシングが炸裂するかと思いきや、不慮のミスが重なってしまう。

藤田京弥さんのプロフィール

【Profile】

藤田京弥(ふじた・きょうや)

昨年はJB戦で10勝の偉業と共に、最高峰トップ50をはじめ3つのシリーズ戦で年間優勝を獲得。もはや国内に敵なしの天才アングラーは2022年、国内と世界の「二刀流」での頂点へと挑む。1996年4月2日生まれの26歳、埼玉県出身・山梨県在住。

体調不良とまさかの「忘れ物」

――今回の試合はプリプラクティスなし、直前2日間だけで臨んだそうですね。

藤田「そうなんです。6月のリザーバーなのでサイトフィッシングを軸にして、具体的な釣り方は本番中に探せばいいと思っていました。ところがプラの結果、やる気のある魚は湖全域でも4尾のスクールしか見つけられなくて」

6月なのに、これという魚が見当たらない。

――たったそれだけ? 2017年6月の弥栄ダム戦はサイト合戦だった記憶があります。

藤田「青木大介さんが勝った試合ですよね。僕もあのイメージだったんですけど、ぜんぜん魚が見えない。水温は20℃前後で産卵もほぼ終わっているはずなのに、浅いところに30cmぐらいの普通のサイズがいないんですよ。なので、キーパーを揃えることは考えず、毎日デカいのを3本釣って来ようと思いました。イチかバチかという心境です」

――初日は4,630gで6位の好スタートでしたね。

藤田「朝は、目をつけていた4尾がいるメインリバー(小瀬川)の上流から始めました。アフターから回復しようとしている個体で、岸際に大量に湧いているエビを食ってるんです。やる気もあったのにミスが多くて、獲れたのはサイコロラバーで食わせた52~53cmの1本だけでした」

弥栄ダム戦の初日は55cmオーバー・2,500g超のビッグフィッシュを持ち込んで6位スタート。半プリと思われる個体だった。「このパターンをもっと追いかけるべきだったと試合後に気づきました」。

――ミス、というのは?

藤田「キャストが決まらなかったり、食った瞬間にルアーを動かしてしまってアワセ損なったり。しかもスピニングのPEタックルで使う5lbフロロのリーダーを積み忘れていて、しかたなく4lbを使ったらアワセ切れしちゃって……。トップ50でこんな忘れ物をしたのは初めてです」

――試合前に少し体調を崩されていたとか。

藤田「その影響で身体が固まっていたんでしょうね。結局、13時まで朝イチの1尾しか釣れず、さすがにキーパーもねらわないとマズいと思って、展開を変えるために美和筋へ移動しました」

――小瀬川とは別の支流ですね。

藤田「岬の沖の水深15mラインに魚の反応があったので、3.5gのダウンショットを落とすと小さいのが釣れたんですよ。そのあと、同じ岬の浅いほうに岩のような障害物が沈んでいて、同じリグをスイミングさせたらあっさり食いました。キーパーだろうと思ってファイトしていたらめちゃくちゃ引いて、これが2.5kgオーバーでした(笑)」

――今戦のビッグフィッシュ賞になった1尾ですね。

藤田「はい。実はこの魚が、アフターじゃなくて半プリだったんですよ。たまたまポロッと釣れたので理解が及ばなかったんですが、今思えば、このパターンを追いかけたほうがよかったのかもしれません。最後はトナカイワンドでキーパーを追加して4尾、これが精一杯でした」

1尾が貴重。

アンラッキーの連鎖と最終日の失速

藤田「初日は6位でしたが、ほかの選手の成績を見ると、あと1尾釣っていれば2位も可能なウエイトだったんです。キーパーサイズも重要になるかもしれない、と考えながら2日目はスタートしました」

――この日のメインエリアはどこですか?

藤田「同じく小瀬川です。最上流へ到着したころには小森嗣彦さん(最終順位2位)がすでにビッグフィッシュを2本キャッチしていたようで、見える魚も減っていました。たまたま発見できた50アップを30分ぐらい追いかけて、虫系ルアーの放置でようやく口を使ってくれて、これがようやく1本目です」

――上々のスタートですね。

藤田「上流域はそれ以上釣れる気がせず、早々に下りました。そのあとインターセクションの少し上にある立ち木周辺でサイトしていたら、急に沖でボイルが始まったんですよ。ハドルスイマーエラストマーの4inをフルキャストしたらギリギリ届いて、それで食ったのが1,800g台の魚でした」

――なにを捕食していたんでしょう?

藤田「ハスかなにかの大きなベイトフィッシュでした。プラクティス期間も含めて、そんなボイルを見たのは初めてです」

――ラッキーな追い風ですね!

藤田「ただ、このあとがダメでした。なにを投げても食わなかったさっきの見えバスが、シャッドに変えたらやっと口を使ったんです。立ち木に巻かれないよう注意しながら、0.6号のPEラインに10lbリーダーだったので、まぁ獲れるだろうと高をくくっていたら、バスが想像以上に走っていて、ノーマークだった岩盤に擦れて切られました」

――貴重な1尾が……。2日目は3尾・3,728gでした。

藤田「まさかシャッドをやるとは思っていなくて、4月の遠賀川戦のまんまのタックルをストレージから出して使ったのも良くなかった。フックが細軸で、強引に寄せられなかったんです。完全に自分のミス、準備不足です。これはショックがデカかった」

2日目はボートの近くでビッグフィッシュのボイルが発生するラッキーもあり、初日に続いて2本の50cmオーバーをウエイイン。4位で最終日に臨む。

――最終日も小瀬川上流がメインですか?

藤田「それはやめて、美和筋に向かいました。岸から5mぐらい沖を1kg超程度のバスが回遊しているんですよ。それはプラからわかっていて、ただし食わせ方が見つからなかった。この日も1度だけ、ミナモのピクピクでチャンスがあったんですけど、ちょうどほかのボートの引き波が来てしまい、食った瞬間が見えなくて」

――不運が続きますね。最終日はキーパー1尾のみウエイイン、結果は11位でした。

藤田「あとから気づいたんですが、初日のビッグフィッシュは、こういう回遊系の魚が岬まわりのストラクチャーに止まって食ったんじゃないかな、と。早くそれに気づいていれば、もっと別の戦い方があったと思います」

――次のトーナメントはアメリカ・ニューヨーク州、7月上旬のレイクオネイダです。

藤田「得意なスモールマウス戦なので、優勝を狙っていきます。最低でも決勝には残りたいですね」

過密スケジュールによる体調不良、準備不足なども災いした今回の1戦。1日もリミットメイクできないまま3日間を終えた。年間ランキングは暫定2位。


藤田京弥2022トーナメントスケジュール

バスマスターオープン

試合日参加試合開催場所
4月14~16日ノーザンオープン第1戦ジェームズリバー(バージニア州)【10位】
4月28~30日セントラルオープン第1戦ロスバーネットレイク(ミシシッピ州)【46位】
7月7~9日ノーザンオープン第2戦レイクオネイダ(ニューヨーク州)
9月8~10日ノーザンオープン第3戦チェサピークベイ(メリーランド州)
9月22~24日セントラルオープン第2戦レッドリバー(ルイジアナ州)

JBトップ50

試合日参加試合開催場所
4月1~3日第1戦遠賀川(福岡県)【優勝!】
6月3~5日第2戦弥栄ダム(山口県)【11位】
7月22~24日第3戦北浦(茨城県・千葉県)
9月9~11日第4戦霞ヶ浦(茨城県・千葉県)※現時点では、不参加の予定

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