冨樫浩さんに聞いた「ペンシルベイトは死んだのか? 説」【横沢鉄平の※諸説あります】

バス界には様々な通説がある。しかし通説があれば風説や異説も飛び交い、諸説がある。そんな諸説を深掘りする連載企画、今回のお題は「ペンシルべイトは死んだのか?」そういえば最近、ペンシルべイト使っているだろうか? 持って行ってる? 最後に釣ったのはいつ? 実はもう何年も前だったりして。そんなペンシルべイトの現在地を探り、安否の確認をしてみよう。超人気釣りブログ「RED PEPPERS」を運営、多彩な活動をされている富樫浩さんに伺った。

●文:ルアーマガジン編集部

2024 シーバス特集

冨樫浩(とがし・ひろし)
超人気釣りブログ「RED PEPPERS」を1997年から開始。釣りブロガーのパイオニアだ。プロショップオオツカのネット業務全般を統括し、JBの公式ページの管理人も務める。彼自身、凄腕を持つ釣り人であり、多様な立ち位置から日本のバス釣りを見つめてきた人物。

3つの視点を持つ男のペンシル生存確率とは?

『JB公式サイトの管理人』、『プロショップのスタッフ』、『人気釣りブロガー』という3つの視点から、日本のバスフィッシングを見つめてきた男がいる。冨樫浩さんだ。冨樫さんには3つの視点に分けて、ペンシルの生死について語ってもらった。まずは、JBの公式ページ管理人として、長年トーナメントシーンを観察してきた視点から。

冨樫「正直、現在JBのトーナメントでペンシルべイトを使う人は、ほぼないに等しいです。皆無とは言わないですけどね。1回だけ上位に絡んだのは、2011年のJBトップ50旭川ダム戦ですね。地元の小林知寛プロが、シャワーブローズを使って予選をトップで通過したことがあるんです。決勝はノーフィッシュで終わったというオチがあるんですけど(笑)。小林プロ本人にも確認したんですけど、やっぱりペンシルが活躍したのはあの試合だけだったようです。ポッパーとかハネモノは、ほかの選手も結構使うんですよ。でもペンシルベイトになると、上位に絡まない。もちろん、人知れず使ってる人もいるかも知れないけれど、成績として結果が残っているのはその試合だけなんですね」

元気なバスがいないからペンシルを使う場面がなくなったのでは

冨樫さんは、小林プロになぜペンシルが活躍できないのか、その理由も聞いてみたという。

冨樫「小林プロによると、結局ペンシルベイトというのは、シャロー側に小魚を追い込んでいるバスを釣るルアーなんです。昔は、大きなオイカワとかハスを岸まで追い込んでは、バンバン食ってる元気なバスがいっぱいいた。だから釣れたけど、今は元気なバスが全然いなくなったから、使う場面がない…という話でした。特にトーナメントレイクのバスは元気がないんでしょうね。だから決して表層がダメなのではないんですね。むしろ、今は表層が大ブーム。ハネモノとかポッパーとか虫系の遅い動きのものには反応します。ハンクルジョーダンなどの放置系にも反応します。でも、悲しいかな、ペンシルべイトに食いつく元気はないんです」

日本全体から見たら終わってますよね。
これは野尻湖の沖ボイルをパイロンで攻略した成果。
ボイルを直撃するのが鉄則だ。

冨樫「着水後に、3回首を振らせて止めると出るんです」

釣具店でも存在感がなくなってきた

冨樫さんは、長年大手プロショップのスタッフとして勤務してきた。だから、お客さんのニーズやルアーの人気と売れ行きなど、生々しい情報も把握している。

冨樫「釣具店の中で、ペンシルべイトはほぼ存在感ないですね。人気のあったペンシルべイトって、サミーとかコンバットペンシル辺りまで遡りませんか? だから釣具屋としても、メーカーが出さないので、そもそも仕入れないですよね。お客さんにもニーズは感じません」

このままいくと、ペンシルべイトのご臨終が近そうだ。冨樫さんは、自分自身が凄腕のアングラーであり、釣りブロガーの草分け的存在でもある。そんなアングラー視点で見るとどうなる?

冨樫「俺は実をいうとペンシル大好きなんです。野尻湖と榛名湖での話なんですけど、沖ボイルを狙うには最強ですね」

これは以前、バスプロの五十嵐誠さんから教わったパターンらしい。ただし、五十嵐さんはシャワーブローズを使用していたが、冨樫さんは違うペンシルを選ぶ。

冨樫「ハイドアップにパイロン84というペンシルべイトがあるんですけど、沖ボイルにはそれしか使いません。沖と言っても、湖のど真ん中です。ど真ん中で、どこで起きるかわからないボイルを待ちます。今は近距離の場合、ライブスコープである程度予測できますけどね。そしてボイルが起きたら、そこにペンシルを正確に投げるんです。これが1mずれちゃうと、もうダメ。だから、遠くに飛ばせなきゃいけないし、正確に飛ぶペンシルじゃなきゃ釣れない。そんなキャストができるペンシルは、パイロン84しかないんです。めちゃくちゃ遠投できるし、姿勢が崩れないのでまっすぐ、正確に飛ぶんです。この釣りはめっちゃ面白い。だから個人的にはパイロン84が大好きです」

しかし、ペンシルベイトは終わってないのでは

そんな冨樫さんだが、だからペンシルは死んではいない…とは結論付けなかった。

冨樫「これも超ローカルなテクニックなので、日本全体から見たら終わってますよね。でもペンシルは1周回って効くかもしれませんよ。単純に投げる人が少ないだけかもしれません。小林プロはペンシルについて『シャローに投げて、沖側に引っ張らせるには強い』と言ってました。今それが釣れないというなら、逆にオカッパリがいいかもしれませんね。ペンシルべイトは小魚を岸に追い込むバスに強いらしいので、オカッパリの方が方向的に合ってますよね」

よく考えると、オカッパリ専門の人は、まだまだペンシルを使っているのかも? ペンシルが死んだと思っているのは、ボート釣りの人だけかもしれない。

富樫浩さんのペンシルセレクト

パイロン84【ハイドアップ】

冨樫さんがPEラインのスピニングタックルで使用。抜群の遠投能力を誇るペンシル。正確に飛ぶし、遠距離でもしっかり動く。

シャワーブローズ【モード】

ワンノ2011年のJBトップ50旭川ダム戦で大活躍。ずば抜けた遠投能力と、強烈なアクションで、ペンシルの可能性を一気に広げたルアーだ。ッカーペンシルの代表格で、そのサウンドの集魚効果には定評があります。アメリカでは不動の人気を誇り、伊藤さんも愛用する逸品。

番外編「日本のペンシルベイト小史」

独断と偏見でまとめたペンシル史の要点整理

名著「ブラックバス釣りの楽しみ方」がバイブルだった70年代後半、ペンシルの代表格はオリジナルザラスプークだった。

そして80年代にかけて、バルサ50、ズイール、ハトリーズなどの哲学を持ったトップウォーターブランドが出現。それぞれ、ビッグラッシュ、テラー、ブッシュペッカーなどの名作ペンシルを輩出。

80年代の終わりに登場したレッドペッパーは、画期的な「小魚逃走アクション」で革命を起こした。90年代中盤から空前のバスブームが到来し、ジャイアントドッグXとサミーはあまりの人気で、入手困難な状態に陥った。

ブーム後に登場したヒット作はヤマトとシャワーブローズ。どちらもスプラッシュ系だ。ペンシル史はその後途切れている。

『ルアーマガジン』2023年9月号 発売情報

ルアーマガジン史上初めてのスモールマウス×オカッパリの表紙を飾ってくれたのは川村光大郎さん。大人気企画「岸釣りジャーニー」での一幕です。その他にも北の鉄人・山田祐五さんの初桧原湖釣行や、五十嵐誠さんによる最新スモールマウス攻略メソッドなど、避暑地で楽しめるバス釣りをご紹介。でもやっぱり暑い中で釣ってこそバス釣り(?)という気持ちもありますよね? 安心してください。今年の夏を乗り切るためのサマーパターン攻略特集「夏を制するキーワード」ではすぐに役立つ実戦的ハウツー満載でお送りします! そして! 夏といえばカバー! カバーといえば…フリップでしょ!! 未来に残したいバス釣り遺産『フリップ』にも大注目ですよ!


※本記事は”ルアーマガジン”から寄稿されたものであり、著作上の権利および文責は寄稿元に属します。なお、掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な記載がないかぎり、価格情報は消費税込です。

最新の記事