初秋のシーバスは「時間帯」と「距離」を意識して攻略すべし!【ヒヤマンの茨城涸沼1年釣記】

関東唯一の汽水湖であり、東京湾に次ぐシーバスフィールドとして名高い「涸沼(ひぬま)」。特に秋のイナッコパターンは有名で、毎年多くのアングラーがランカーシーバスを追い求めチャレンジしに訪れる。しかし、決してイージーではなく、地元の名手も手を焼くほど癖の強いフィールドであるのが涸沼。そんな涸沼に20年以上通い、エキスパートとしてコンスタントに釣果を出し続けるのが「涸沼のヒヤマン」こと檜山敏崇さん。今回は涸沼の8月〜9月の「イナッコパターン」の攻略法を解説していただきます!

●文:写真/文:檜山敏崇

2024 シーバス特集

涸沼シーバスから茨城サーフまで! 茨城のランカーハンター・ヒヤマン!

檜山敏崇(ひやま・としたか)
茨城シーバスの聖地・涸沼をホームとするDAIWAフィールドテスター。「涸沼=ヒヤマン」と呼ばれるほどの涸沼水系エキスパートであり、これまでに数多の涸沼ランカーをキャッチしてきた凄腕。大型ルアーからワームまで、幅広いルアーを使いこなし、難攻不落とされるボイル攻略も得意とする。茨城サーフのフラットフィッシュのエキスパートとしての顔も持つ。

檜山さんの涸沼シーバス攻略「盛夏から初秋はこう狙え!」

攻略項目涸沼攻略情報
季節8月~9月
水温涸沼本湖は30℃前後、茨城沿岸は21℃前後
ベイトイナッコ(10cm前後)
パターンイナッコがシャローに出入りするタイミングの表層攻略(朝夕のマズメ時)、ナイトゲームの中層攻略、近距離ボイル攻略
ルアー選択タイトローリング&ワイドS字スラロームのシャッドシンキングペンシル、マイクロベイト対応のリアル系シャッドワーム、トップウォーターペンシル、ワイドスラロームのシンキング系ジョイントミノー
ルアー例「モアザン レイジーファシャッド70S、90F&S、100S、120F&SS」
「モアザン トリックアッパーR105F」
「モアザン レイジーファシャッドJ100F&J100S」
「モアザン シーバスロデムミニ10g」
ロッド例「モアザンブランジーノEX AGS 97ML/M」

檜山さんの過去の記事はコチラ

雨量が少なかった2022年夏。水温上昇により食い渋る涸沼のシーバスたち

檜山「7月後半から8月前半に掛けての私の釣行の割合は、涸沼川4割、涸沼本湖が6割でした。流れのある釣りが好きなので普段は河川での釣行が多いのですが、今シーズン、涸沼本湖に足を運ぶ回数が多かったのは河川よりシーバスがたくさんいたからです」

――今年はどこも降雨が少なく、降ってもゲリラ豪雨のような突発的なものだったと思います。涸沼はいかがでしたか!?

檜山「はい、全国的にではありますが、今年の梅雨明けは非常に早かったですね。私が住む茨城県央地区も例外でなく、7月の雨量は例年よりも少ない状況でした。8月に入ると陽射しもさらに強くなり、涸沼の水温は日に日に上昇。場所によってはぬるま湯に感じる程です」

――ぬるま湯の状態! そんな水温で釣りが成立するのですか!?

檜山「涸沼本湖も夏は30℃近くまで水温が上がりますが、今年の茨城沿岸の海水温は例年と比べると若干低く、8月半ばで21℃前後でした。干満の差を大きく受ける汽水の涸沼水系は勿論海水が流入してきます。そのため海水温が若干低い今シーズンの夏に関して言えば、涸沼の全体的な水温は驚くほどの高水温にまでは至ってないというのが個人的見解です。

上げ潮時にウェーディングしていて下げ潮が効き始めると、夏特有の涸沼の温かい水が動くのが感じられます。シーバス釣りは雨の恩恵とよく言いますが、雨量が少ない今シーズンの夏の涸沼。8月中旬時点では、例年並の夏の水温上昇による食い渋りで難しい状況でした」

夏からが涸沼シーバスのハイシーズン! メインベイトは10cm前後のイナッコ

イナッコとはボラの幼魚のことで、10〜30cmほどの個体のことを指す。涸沼の8月〜9月もこのイナッコがメインベイトとなる。

――シーバス釣りはベイトの種類や発生するシーズンに大きく影響されます。これからの涸沼のベイトはどのように推移していきますか?

檜山「6〜7月までのベイトはサッパで、今年は涸沼川にはサッパの数が少なく、涸沼本湖にサッパが多く居る状況でした。シーバスが本湖寄りに多かったことも頷けます。そしてこれが8〜9月になると、メインベイトは『イナッコ』になります。特に朝夕のマズメ時になると、群れで移動するイナッコを追うシーバスボイルが多数目撃できます」

【チャンス1】朝夕の攻略パターン

こだわりを捨てて新たな境地を切り拓いた『モアザン シーバスロデムミニ(DAIWA)』

檜山さんが提唱する8〜9月の攻略パターンのひとつが朝夕のマズメ時だ。

檜山「イナッコが夕方に浅瀬に集結するタイミングと、明け方に浅瀬から沖に出るタイミング。これらの時間帯にシーバスの捕食行動が活発になります。

シーズン的にも水面を意識したシーバスが多く、トップに反応が良くなります。そのため、基本的にはトップウォータープラグでのドックウォークアクションやウェイク系ルアーの引き波でセオリー通りに誘うと効果的ですね」

ラトル音が大きくなったニュータイプの『トリックアッパーR(DAIWA)』でのヒット!

――どんなところを狙えばいいですか?

檜山「カギを握るのは『ベイトの濃さとレンジ』です。ボッコボコにボイルしていたとしても、ベイトが多過ぎるとルアーに見向きもしてくれないのは、涸沼のこのパターンを経験したことがある方なら周知の事実かと思います。だいたい同じポイントでボイルすることが多く、水中にある『何か』に身を潜めていると考えます。それは、沖のブレイクラインだったり、何らかの沈んだ障害物だったり」

――ベイトの濃すぎないエリア、且つ障害物や地形変化があるポイントがキーとなるわけですね。

檜山「薄暗いタイミングでベイトが出きってしまう前なら比較的ルアーも目立たせやすく、トップウォータープラグにも反応が良いことが多いです。明るくなるとボイルもさらに増えていきますが、そうなると逆に釣り難くなるんです。場所によっては朝のスーパーボイルが発生することもありますが、シーバスはベイトとなるイナッコに狂ったようにボイルしていて、釣れそうで釣れません」 

――実際にどんなルアーを使いますか? やっぱりトップ系プラグ?

檜山「時合いもポイント毎で続く時間も異なりますが、夏は30分から長くて1時間程。せっかく場所取りしてボイルも起きているのに釣れなかった…ってのは悔しいものです。そんな時は、最近のお気に入りでもある『ジグヘッドワーム』を投入しちゃいます!」

檜山「今までの自分の概念は『ワームは釣れて当然 プラグで釣るべきでしょ!』 というものでした。とくに涸沼に関してはタックルボックスに入れることも無かったのですが、『シーバスロデムミニ』をボイルが多発するエリアに投入すると、嘘みたい連発したことがあったのです。この時から、変なこだわりは抜きにして、単純にシーバスとのファイトを楽しみたい、と純粋に思えるようになりました」

――固定概念を捨てて、新しいパターンを発見したのですね! ジグヘッド+ワームのどの部分が有効なのでしょうか?

檜山「『シーバスロデムミニ』はテールが少し折れ曲がっています。この尾っぽが生み出す微波動が、イナッコが素早く逃げる時に発する波動と似ているのかもしれません。使い方は、ボイルが発生しているポイントの先にキャストして、水面直下をサーっとミディアムリトリーブで誘っていきます。

基本的にはただ巻きでOKですが、たまに少しフォールを入れてみたり、ダートアクションをさせたりすると躊躇なくガッツリ丸呑みしてくれます。バイトも深く、パターンにハマれば周りを出し抜いて連発もするかもしれません。 是非試してみて下さい!」

『モアザン シーバスロデムミニ』でキャッチしたグッドサイズのシーバス。

【チャンス2】ナイトゲームのパターン

涸沼での使用頻度No.1のルアー『モアザン レイジーファシャッド(DAIWA)』シリーズ

檜山「暑い盛りも過ぎ、秋に少しずつ近付くにつれて、沖に停滞しているイナッコの群れに突っ込んでシーバスがボコボコとボイルをするようになります。ベイトが多過ぎるがゆえに、攻略パターンもシビアになってきますが、涸沼ではよく見られる光景です」

――そういうシチュエーションはどう攻略していくべきですか?

檜山「食い気のある個体から反応させるべく、少し速いテンポで中層を探ります。こんな時こそ『レイジーファシャッド』の出番です。飛距離も稼げるうえに、任意でロッドポジョンをキープすることによりボトムを擦ることなく、レンジを刻めるので重宝しています」

――『レイジーファシャッド』はサイズ展開の多いルアーですが、どのように使い分けていますか?

檜山「70S、90F/S、100S、120F、と現在は4タイプ展開となり、季節やベイトの大きさで使い分けることができます。ミディアムリトリーブでテンポ良く探ることで自ずと手数も増えていくでしょう。リアクション気味に誘う攻め方なので食い損ねのショートバイトも多いのですが、そんな時はリトリーブスピードに変化を付けた可変アクションで食わせの間を入れてやると深いバイトが増えると思います。

S字スラロームで逃げるイナっこイナッコを演出でき、追わせて食わせるサーチベイトとしては私が使用する涸沼での使用頻度が一番高いルアーです」

――新作の『レイジーファシャッド120SS』がリリースを予定しているとか?

檜山「レイジーファシャッド120Sというモデルがあったのですが、こちらのウエイトは48g。ウエイト設定のためか使用頻度が低く、カタログからも姿を消してしまいましたが、今回のSSモデルはウエイト調整をし44gに。スローシンキングモデルとして再リリースされます」

――檜山さんもすでに使用したことと思います。使用感はどうでしたか?

檜山「飛距離もMAX77.5mと申し分なし! 秋のランカー狙いにも間違いなく通用すると思います。秋が深まれば、捕食対象もコノシロや15cm前後のイナッコなど大きめになってきたタイミングに非常に有効なルアーになるでしょう。是非とも試していただきたいですね! 9月リリース予定です!」

こちらが檜山さん愛用のモアザン レイジーファシャッドシリーズ。上から120mm(FとSSの2タイプ展開。SSは9月)、100S、90(FとSの2タイプ展開)、70S。

『モアザン レイジーファシャッド120F』とイナッコのサイズ比較。ベイトサイズを強く意識しながら、檜山さんは涸沼を攻略している。

檜山さんが涸沼で最も使用頻度の高いルアーが『レイジーファシャッド』シリーズだ。このルアーで数多くの釣果を叩き出してきた。

【チャンス3】近距離のボイルを攻略せよ!

――近距離のボイル? ボイルが発生する場所により攻略の方法は変化するのですか?

檜山「近距離のボイルは、シーバスが岸近くまでイナッコを追うことで発生します。涸沼ではよく見られるシーンですね。そういうシーバスを狙うメソッドは色々ありますが、シチュエーションごとに変わっていきます」

――例えばどんなシチュエーションですか?

檜山「例えば河川の場合であれば、ちょい投げでアップ気味にキャストし、流れを利用しながらドリフトでボイルポイントまで流し込む方法があります。ただ、流れのほぼ無い涸沼において、ましてや近距離、足下となるとスローのただ巻きでしっかりルアーの存在を認識させた上で口を使わせることが多く、ルアーは『引き波を立てて泳ぐウェイクベイト』や、『小型ペンシルのトゥイッチ』などで誘います。

ペンシルベイト等のドックウォークでも反応は出ますが、アクションの幅が広く移動距離がそれなりに多くなってくると、ボイルポイントをすぐに通過してしまい、ルアーの存在に気付かせるまでに数キャストしなければならないこともあります」

――具体的なルアーを…教えてください!

檜山「なるべく一発で喰わせたい。と考えた場合に、一箇所でネチネチ動かせて、なおかつアクションさせた時にイナッコが逃げ惑う時の音を演出できるルアーがあります。それが『モアザン レイジーファシャッドJ100F&J100S(DAIWA)』ですね。アクションもそうですが、プロップ音が絶妙なんです。

フローティングタイプでも11gと、軽量がゆえに飛距離は稼げませんが、一箇所でネチネチとテーブルターンを繰り返していると、周辺にいるシーバスはたまらず水面を割って飛び出してきます。最近で言えば、近距離戦でのランガンスタイルで涸沼を探る時はこのルアーしか使っていません。それくらいよく釣れるルアーに仕上がっています」

モアザン レイジーファシャッドJ100F&J100Sを使用したこのメソッドは、広いエリアを素早くサーチするような釣りには向いていないようだが、いきなりの目の前で起きたボイルにはかなりの好反応を示してくれるそうだ。

「もしアナタの目の前でボイルが起きたら、静かに数歩下がって水辺に背を向けてライトを付けて、『モアザン レイジーファシャッドJ100F』にルアーチェンジしてみてください。プレゼンテーションして小刻みなトゥイッチで誘えば、ビッグワンに巡り合えるはずです!」

レイジーファシャッドのネチネチアクションにたまらずバイトしたシーバス。「付属フックは#8と小さいので、初期ドラグは若干緩めにして、ファーストランでフックが伸ばされるのを抑えるようにしていますね」

タックルについて

――これまで紹介していただいた涸沼の8〜9月はどんなタックルで挑んでいますか?

檜山「全体的なバランスも重要だと思いますが、ロッドアクションを付けたり飛距離を出したり、とにかく1本でバーサタイルに使えるロッドが重要と考えています。僕が愛用しているのは『モアザン ブランジーノEX AGS97ML/M』。長さもあって飛距離を稼げるのはもちろんのこと、自重が軽いのでロッドアクションを付ける釣りでも疲れを感じません。感度が良くバットパワーも強いのに、9ft後半というレングスを感じさせない操作感は秀逸ですね」

【使用タックル】
●ロッド ・モアザンブランジーノEXAGS97ML/M●リール・ルビアスエアリティ4000-CXH●メインライン・UVFモアザンデュラセンサーx8+si²1.2号●リーダー・モアザンリーダーEX Ⅱフロロカーボン20LB ※メーカーはすべてDAIWA

これから秋に向けてシーバスの活性はさらに上がっていく

檜山「秋が深まるに連れて、シーバスの活性はさらに上がってきます。ヒットも増え楽しい釣行も多くなってくるかと思いますが、涸沼の9月はまだ夏を引きずったままと予想されます。必死にファイトして上がってきたシーバスは弱るのも早く、しっかりと蘇生をしてあげないと死んでしまう確率がかなり高まります。

なるべく陸にあげている時間を減らして、写真を撮る以外はできる限り水の中で全てを済ませてあげられるように心掛けていくべきでしょう。シーバスの無駄な死を減らし、大型個体の遺伝子を今後に残していければと個人的には考えています!」

檜山さん&ミッチー高橋による秋の涸沼シーバス攻略動画も必見です!

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