今江克隆の深堀りバスカレッジ「ニッポン・ビガーベイトの夜明け」

ルアーマガジン本誌にて毎号連載している今江克隆氏の語り下ろし連載「深堀りバスカレッジ」。今回は、ビッグベイト以上ジャイアントベイト未満というニッチなサイズ感の『ビガーベイト』がテーマ。山口県・山代湖での実釣取材記事をメインに、ビガーベイトを適切にアプローチできる新機軸ロッド“ジャイアントディアウルフ”を徹底解説する。

●文:柳生豊志 ●写真:柳生豊志

2024 チニング特集

なぜ時代はビッグ・ビガー・ジャイアントなのか? 日本でビッグ・ビガー・ジャイアントベイトが流行る理由

およそ20年前のバスブームの頃からは考えられないほど、ニッポンのルアーは巨大化した。

きっかけは2005年ごろに訪れた最初のビッグベイトブームで、ビッグルアー=ビッグバスという方程式が成立し始めた。そしてその後に訪れた琵琶湖超ビッグバスブームにより、ジャイアントベイトというカテゴリが新たに生まれたが、それは琵琶湖や池原ダム専用という特殊性の塊だったため全国的なムーブメントとはならなかった。

しかし近年に3度目のビッグベイトブームとして流行りはじめた、ビッグベイトよりも大きくジャイアントベイトよりも小さい『ビガーベイト』の波は、釣れるバスの大きさ、ルアーとしての魅力、そしてフィールドを選ばない汎用性から全国的に大きな波となりつつある。

今回はビガーベイトを適切にアプローチし、快適に操ることのできるタックル面にスポットを当てていきたい。

20世紀終盤にバスブームが始まった当初は、バスルアーの中心は10cm(4in)だった。実際に5inや6inのワームには”ジャンボ”や”ビッグ”という名前が付けられていた。これはアメリカ製ルアーも同様で、プラグならボディ長4〜6cm、ワームは4inというのがひとつの基準だった。

その後、大きなニジマス形状そのままのトラウトベイトがアメリカ西海岸で流行っているという情報が入り始めたのを皮切りに、日本でもビッグベイトブームが起こり日本のルアーは大型化を始める。30cmを超えるジャイアントベイトの登場で加速度的な大型化は一旦頭を打つが、数が釣れなくなってきた近年でも大きなルアー=大きなバスの方程式は健在であることが現在のビガーベイトブームを引き起こしている。ちなみに『ビッグ』の比較級が『ビガー』であり、ここではビッグベイトとジャイアントベイトの間サイズを『ビガーベイト』と定義している。

イマカツでも近年リリースされているのは29cmレプリケーター神龍、28cmレイジーハード、9inレイジースイマー(まもなく発売)とビッグベイトサイズ以上の巨大なものが目立つ。なぜ近年、ビガーベイトブームが起こっているのか。

取材時のひとコマ。アンドロイド180改造モデルでグッドサイズをキャッチ。180mmは一昔前なら相当でかいビッグベイトだったが、今の基準では普通ベイトに感じてしまう。

今はサバンナでライオンを探すようなもの

「バスの個体数が一時期に比べると大きく減り、その分クオリティが上がったからだろう」と今江は言う。

「減ったというよりも、バスがいる生態系としての通常の状態に戻っただけじゃないかな。食物連鎖の頂点付近にいる生物は、本来個体数が少ないものだ。サバンナに行ってライオンを探しても、観光用に餌付けされていないところではほとんど目にすることはできない。インドでトラを探すのも同じ。もともと数が少なく、より強いものが生き残る。それにともなって強いものは餌を独占でき、ますます大型化していく。バスの個体数の減少が大型化を招き、必然的にルアーが大型化していく。その流れが今のビガーベイトブームの根底にあると考えられるね」

ジャイアントワームでジャイアントバス! フラットハドル5.8in(イマカツ/プロト)
現在プロトタイプで実戦テスト中のジャイアントギルワームのネイルリグで55cmクラスをキャッチ。全長5.8in(約15cm)だが厚みが強烈で、無数のリブが水を掴んだときの引き心地が最高だという。現在テストしているフックはマスキーパイク用10/0(BKK)という異次元サイズ。ブータフロッグと並べるとその巨大さがわかりやすい。

常時使える80~250g対応のバーサタイルロッドが不可欠

昔は漠然と大きいと感じるルアーをビッグベイトと呼んでいたが、当時のビッグベイトを今改めて見ると、それほど大きいと感じるものばかりではなくなった。

「昔でいうビッグベイトが今や並ベイトになっている。ギルロイドジュニアはビッグベイトですか、と問われたら返答に困る。ルアーのカテゴライズをやり直さないと、うまく説明できない事態になってきているね。

ひとつの基準として長さでカテゴライズした場合、ビッグベイトは150〜200mm、ビガーベイトは200〜300mm、ジャイアントベイトは300mm以上ということになるだろう。

大きなルアーは各種出揃った感があるが、ここでひとつ問題が起きてきた。200mm以下、3オンス未満のビッグベイトに対応するロッドは市場に溢れている。逆に300mm以上のジャイアントベイト用には、ニッチな市場向けにマニアックなロッドがいくつか発売されており需給バランスがとれている。

しかし現在の主流となっているビガーベイトには、実際適したロッドがほとんど存在していない事実に直面したのだ。今一番使いたいルアーを適切に扱えるロッドがない。80〜150gレンジをストライクゾーンにしたロッド開発の必要性を強く感じたんだ」

今江はトーナメンターであり、専門のビッグバスハンターではない。デッキに並べられるタックル数には制限がある。そのため特殊な一点突破型ではなく、狙いのビガーベイトを中心にしつつ、いわゆるビッグベイトからジャイアントベイトまでを広く扱える汎用性の高い重量級ロッド、が開発コンセプトとなった。

10数gのフロッグから150gオーバーのビガーベイトまで、できるだけ少ないロッドで扱えるのが実際の釣り場での理想。

小さなボートで釣りをする場合、あまりに多くのロッドは載せることができないし、長過ぎるロッドも扱いにくい。バーサタイルな6ft11in、というコンセプトは現場から導き出された解答でもある。

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