今江克隆の深堀りバスカレッジ「ニッポン・ビガーベイトの夜明け」

時代が求めた”ジャイアント”ディアウルフ

ビガーベイトを存分に、意思通りに使いこなせるロッド。しかも、ビッグベイトクラスの軽量級ウエイトからジャイアントベイトクラスの重量級ウエイトまで幅広く。これこそが時代が求めたロッド作りだった。

IRSC-611XXXHR-SXF<SG> ジャイアントディアウルフRS

全長2.11m 継数
標準自重178g パワートリプルエクストラヘビー 
ルアー範囲14~230g ライン範囲12~30lb 
価格91,000円(税別)

ラインを鳴らさず気持ちよく20lbが使えるロッド

新しいビガーベイトロッド『ジャイアントディアウルフ』を作るにあたって今江が重要視したのは、意外にもラインの太さだった。

「20lbを使う釣りが見直されている。直接的にはカバースキャットの釣りがきっかけだと思うが、20lbラインの『耐久性』としては約10kgもあり、バス釣りでは過剰な太さかもしれない。しかし重要なのは太さではなく、フロロ20lbはめちゃくちゃ重いのでラインをオモリ代わりに使えるという事実。ビッグベイトの釣りは、ラインを強く動かして糸鳴りがすればまず食わない。ラインをしっかりボトムに馴染ませて、ラインの重さを利用してルアーを動かすようなイメージが大切な、実に繊細な釣りなんだ」

20lbをしっかり巻けるリール
ビガーベイトロッドに適したリールは20lbをしっかり巻けることが最低条件。グラビアスのノーマルスプールは20lbを80m以上巻ける。軽く投げたいときはKTFネオスプールを使い、16lbは68m,18lbは58m巻けるので必要十分。

20lbを快適に使えることが、ビガーベイトをうまく扱えるロッドにつながるという新しい概念。そのためにガイドバランスも新しい考え方を導入しているという。

「フロロ20lbはナイロン20lbに比べるとコイル状になりにくい特性がある。それでも少しはコイルになるので、ガイド径が大きいとガイド間でスラックがコイル状になり、アクションしたときにブランクスをラインが叩き、微妙なアクションの入力ができなくなる。それを解消するための方法のひとつとして、ガイド径を小さく設定し、キャスト時のライン通過で自然にコイルがとれるようにしてある。またトップガイドだけは最大径サイズを採用し、フリーにラインが動くようにしている。トップガイド内で自由にラインが動くほうがスラックラインを扱いやすくなるんだ」

超大型トップガイド
超が付くほど大きなトップガイドを採用。他ガイド径が小さくティップガイドのみが大きいと20lbラインでもフリー感がでるため、ラインスラックを使いやすくなるという。

7ftの壁

今江のビガーベイトの釣りを見ていると、ほとんどの場面で10m程度のショートゲームが多い。

「ビッグ〜ジャイアントベイトは基本接近戦。マサカリぶん投げフルキャストはバラムの全開高速巻きの釣りぐらいだろう。重要なのは飛距離よりも精度。そして取材や試合では2日間、3日間に渡ってキャストし続けることも多いので、肩や手首への負担も考慮しなければならない」

2日間のロケ中、時計を外さずにビガーベイトのキャストを続けていると、手首がアザだらけに。これほど体に負担が掛かる釣りでもある。

コントロール性と負担軽減から必然的にショートロッドを意識し、最短は6ft3inから開発をスタートした。しかし全長30cmクラスのルアーとブランクス長とのバランスがまったくとれなかったため、65、66と少しずつ長くしていった。もちろん逆ベクトルから7ftオーバーも何本も試したという。

「竿というのは面白いもので、7ft以上と以下とではまったく別の竿になる。7ftを超えた途端に重くなり、操作性が一気に悪化する。軽くすることはできるがエゴイストのような竿になるため、とてもじゃないがジャイアントベイトの負荷には絶えられなくなる。長くして負荷を分散させようとすれば重すぎて使い物にならない。7ftオーバーから短くしていくと、不思議なことに7ftを切った途端に違う竿になるんだ」

幾本ものプロトロッドからたどり着いたのは、6ft11in。7ftから1in(約2.5cm)短いだけという微妙(絶妙?)な長さだった。

「ロッドの操作感はグリップとブランクスのバランスによって左右される。ブランクスが7ftを超えると、先重りさせないように普通はグリップも伸びていく。グリップが伸びるほどトゥイッチ等で邪魔になるから操作性は悪くなり、キャスト時にグリップエンドが腹に当たってキャストバリエーションが減少してしまう。

ジャイアントディアウルフは操作性の高さを目指したパワーロッドのため、キャストや操作の邪魔にならないようグリップ長を標準より1in短くしている。ブランクスの有効レングスは実質7ftロッドと同じだが、グリップが1in短いという意味の6ft11inなんだ。その短さをエイト形状のリードグリップでバランスさせているという、他にはない特徴をもった機種。グリップエンドバランサーで辻褄を合わせるようなことはしていない」

特殊形状リアグリップ
リアグリップには握り込みやすくズレにくいリードグリップを採用。ロッドに比べリアグリップが短いが、このグリップがバランスをとる役割も果たしている。

T1100Gとレジンリッチカーボンの融合

ジャイアントディアウルフにはカレイドで長年培ったトレカ®T1100Gカーボンは当然使用されている。だが、その使用方法はまったく新しく斬新なものとなった。

「究極の破断強度と軽さを実現するためには当然T1100G33tは使わなければならない。ただ、このロッドには懐の深いムチのようなしなりも不可欠。そこで近年のロッドクラフトでは避けられてきたレジンリッチの24tカーボンをベースブランクスに使用し、圧倒的なタフネスさと柔軟なしなりを手に入れている。しかしこれだけでパワーを得ようとすると異常に重くなるため、外装を低レジンピュアカーボンのT1100Gで補強している。

脂肪分多めのタフな筋肉を、脂肪の少ないシャープな筋肉で薄く巻き上げたようなもの。レジンリッチとT1100Gの融合で、細身であるのにパワーとトルクのバランスがとれ、軽量でシャープだが250gのジャイアントベイトをオーバーヘッドでフルキャストできるほどの奥深さを秘めたロッドに仕上がった。そしてこのカーボンの組み合わせには、もうひとつ違う目的も隠されている」

(写真左)レイジーハードをバックハンドで狙いすましたピンスポットへ。サイドハンド、バックハンド、サークルキャストでもブレないアキュラシー性能も開発目標のひとつだった。(写真右)200gオーバーのレイジースイマー9inをオーバーヘッドでフルキャスト。この超重量級を振り切れるブランクスは、驚くほど細く華奢に見える。

低弾道アキュラシーキャストを実現
岩盤まで10m強の位置からフラットハドル5.8inをアンダー気味のサイドハンドキャストでリリース。ルアーは低い弾道で岩盤の際に到達し、チャポンと小さな音で着水。ルアーの大小に関わらずロッドのしなりを生かした低弾道キャストができるから、サミングによる着水音コントロールも高いレベルで実現できる。

ジャイアントディアウルフ(GDW)ロッド工場提供各種試験画像

ロッド製作現場から各種耐久試験の画像が届いた。画質が鮮明でないものもあるが、どれもが圧倒的な耐久性と破断強度を示している。

ねじれ耐性

スピニングロッド [写真タップで拡大]

ジャイアントディアウルフ(GDW) [写真タップで拡大]

わかりやすいように上向きのスピニングロッドとの比較。スピニングは負荷を掛けるとブランクスが捻れてトップガイドが90度以上横を向く。GDWにはスピニングロッドの4倍以上の負荷を掛けているが、ガイドはまったく倒れていない。

超肉厚設計

ティップ先端比較
(左)ジギングロッド、(右)GDW。ジギングロッド以上の肉厚設計に驚く。

バット比較
(左)ヘビークラスバスロッド、(右)GDW。カーボンシートの巻きの厚さの違いがよくわかる。

リフティングパワー

一般のバスロッドでは4kgが検査上限だが、掟破りの7kgまで実施したがまだまだ余裕。実際は10kgまで試したが、折れずにグリップが変形してしまったという。

180度引き込みテスト

ティップをグリップ方向に引き込む過酷な破断強度テストで、なんと7kgをクリア。バスロッド基準の4倍という異次元の強度を証明した。

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