神技を駆使するバスプロといえばまず挙がるのが青木大介の名前だろう。今シーズンでのトーナメント活動の休止を発表したが、ひとたびフィールドに浮かべば鋭いセンスと状況判断の速さはあいかわらず。霞ヶ浦&利根川水系を舞台に冬のフィールド攻略のヒントを教わった。今回は青木大介さんが利根川&北利根川を攻略。冬をテーマに攻めるポイントを解説してもらった。
●文:ルアーマガジン編集部
青木大介さんのプロフィール
青木大介(あおき・だいすけ)
ディスタイル主宰。JBトップ50はもちろん、陸王やバサーオルスタークラシックなど、あらゆるコンペティションを制してきた職業バスプロ。ここ数年はアメリカでのトーナメントを中心に活動してきたが、来季からは再び国内での活動が本格化予定。
冬でも「カレント」が鍵を握るケース
今回、青木大介に依頼したテーマは「冬」取材時期は11月上旬で、平野部ではまだ紅葉も色づいていないタイミングだったが、これからやってくる厳しいシーズンを想定しながら冬の釣りを展開してもらう。
青木「利根川に行ってみましょうか。もしも流れがなかったら、すぐに北利根川へ戻ります」
常陸利根川のマリーナを出て、霞ヶ浦や北浦方面という選択肢もあったが、まずは利根川で「消波ブロック(テトラ)」を釣っていくことに。10月末に開催されたBasserオールスタークラシックの練習時には、消波ブロックエリアのクランキングパターンで1kg前後の魚がコンスタントに反応したという。
青木「ただ、本番はぜんぜんカレントが出なくてノーバイトでした。利根川のようなリバーフィールドでは、ハイシーズンでも真冬でも『流れ』の有無がいちばん重要だと思ってます」
まずはJR鹿島線の上流・右岸にある消波ブロックエリアに入る。到着するやいなや「釣れそう。めっちゃ流れてる」と青木。ウイニングクロー3.6inのリーダーレスダウンショットを撃っていく。とはいえ、消波ブロックの穴を撃っているのではない。沖側でブロックが途切れてブレイク状の壁になっているところに落としていった。
青木「これだけ流れていれば活性も高いはず。ブレイクを泳ぎ回っているバスに見つけてもらうイメージで撃ってます。カレントが止まって、しかもピーカン無風だったりすれば、穴の奥を撃っていくアプローチも試します」
真冬になっても基本的な考え方は同じ。ただし選ぶルアーが変わってくるという。
青木「今は5gのリーダーレスダウンショットでやってますが、冬だとこれは中途半端。『リアクションか食わせ』のどちらかにもっと寄せたほうがいい。メタルバイブをギラッと落として反応させるとか、もしくはダウンショットやスモラバでスローに釣っていきます」
その後も佐原エリア周辺の消波ブロックを探ったが、1時間もせずにカレントが消失。「早めに見切ったほうがいい」と判断してカスミ方面にUターンすることを決めた。
ルアーローテーション
テトラ狙いはウイニングクロー
今回はウイニングクローの5gリーダーレスダウンショットでテトラを釣ったが、「冬はもっとリアクションか食わせに寄せたルアーがいい。リーダーレスを使うならシンカー10gぐらいでストン! と」。
ウイニングクロー 3.6in【ディスタイル】
「リアクションなら」Dα-メタルバイブレーション【ディスタイル】
ディスタイルの新作メタルバイブ。多様なフィールドで使えるオーソドックスなアクションで、フォール時はスライドを抑制して真下にストンと落としやすい。1/4~1/2ozの3ウエイトをラインナップ。
青木「どうしても根掛かりが多発するルアーなので、価格設定にもこだわりました」
「食わせなら」D.Sカマー2.5in/3.5in【ディスタイル】
青木のダウンショットといえば長年レッグワームを愛用してきたが、さらにに弱い波動がほしいときのために開発したのがこのアイテム。穴のあいているカーリーテールの内側に切れ込みを入れるとさらに弱くなり、ライトキャロなどでも姿勢が安定する。フックはDASオフセットの#4と#1を使用。
晩秋のシャロー攻略
続いてやってきたのは北利根川。霞ヶ浦本湖からの流れ出しにあたるエリアだ。川といっても利根川とは違い、干満や水門操作による強いカレントが発生しにくい。どちらかといえば水が安定している水域であり、その「安定感」こそが北利根川の長所だという。
青木「たとえば冷たい大雨が降っても、その水は霞ヶ浦を経由して入ってくるのでダメージがやわらぐ。北利根川が一気に濁ったり冷えたり、ということが起こりづらいんです。だから1年を通じて魚影が濃いのだと思います」
ここで、リグっていたウイニングクロー3.6inのウエイトを3.5gに変更。アシやブッシュ、ベジテーションを撃ったあと、一気にボトムへ落とすのではなく、表層から徐々に誘い下げていく。ただしここで問題が。4~5mを超える北東の風が吹きつけ、ねらいたい南岸のアシ際を激しく揺さぶっていた。
青木「釣りづらい…。風で活性が上がってプラスに働くことももちろんあるんですけど、同時にローライトになっちゃうと、魚がモノから離れてウロウロしがちになる。こんなふうに撃って釣るなら、もっと穏やかなほうがいいですね」
と言いながら、風裏に逃げることはせずに、ボートポジションを工夫しながら丁寧なアプローチを継続。すると10時34分、潮来大橋上流の右岸バンクで明快なバイトが出て800g級がヒット。その5分後にも立て続けにウイニングクローがひったくられた。どちらもフックが口の奥にガッチリ掛かっていて、バイトの深さがうかがえた。
青木「わりと上のほうで食ってきましたね。活性は高いと思う。ただし、2尾ともアシの張り出しの『外側』なんですよ。インサイドの浅いほうにはいなくて、深いほうでバイトが集中した。冬に近づけば近づくほど、限られたポジションでしか食わなくなっていくのがこの季節の傾向です」
神ワームに化ける「青木漬け」!?
神ルアーよりも「美しいルアー」を
北利根川でサクッと2連発したあとは一気に北上。霞ヶ浦本湖を縦断して、東浦の奥にある山王川のインレットへ駆け込んだ。ボートで釣りができるのはせいぜい2~300m程度で、なんの変哲もない小河川なのだが、常にビッグフィッシュが出入りしていることで知られる場所。ただしいずれも天才だらけで食わせるのは至難の技、というのが定説になっている。ここで青木が取り出したのはPEラインを巻いたパワーフィネスのタックル。Dジグカバー3.3gにD2ホッグのコンビネーションだ。
青木「ベイトフィネスでもいいんですよ、手返しよく撃っていけるから。ただし繊細に操作したいときはスピニングが有利」
そう言って撃ち始めたが、すぐに違和感を覚えた様子でアプローチを中断。ハサミを取り出して、スモラバのラバーをトリミングしはじめた。
青木「ここのサカナは美しいスモラバしか食わない。ムダなラバーがあると見切られる」
青木自身は普段、「神ルアー」といった非科学的なフレーズをほとんど使わないタイプのアングラーである。だがその一方で「美しい・美しくない」というバロメーターでルアーを判断することはあるらしい。静かに船を進めながら、細い枝が水中に伸びたウッドカバーを撃つ。
誘いながらレンジを下げていくと、ほどなくして「コンッ」と生命感が伝わってきた。落ち着いてカバーの外に誘導してハンドランディング。推定1,200g、東浦らしい体格のナイスフィッシュだった。
青木「ちょうど陽が出てきたのがよかったですね。外側をウロウロされると食わせにくいので、シェードを求めてカバーに寄ってくれたほうがありがたい」
それにしても、いったいどのようにスモラバのラバーをカットすれば「美しいルアー」の条件を満たせるのか? われわれ凡人には理解しづらいところだが、最終的なジャッジを下すのはサカナである。ブラックバスと美意識を共有できる稀有な才能こそが「神」の領域、なのかもしれない。
『ルアーマガジン』2023年9月号 発売情報
ルアーマガジン史上初めてのスモールマウス×オカッパリの表紙を飾ってくれたのは川村光大郎さん。大人気企画「岸釣りジャーニー」での一幕です。その他にも北の鉄人・山田祐五さんの初桧原湖釣行や、五十嵐誠さんによる最新スモールマウス攻略メソッドなど、避暑地で楽しめるバス釣りをご紹介。でもやっぱり暑い中で釣ってこそバス釣り(?)という気持ちもありますよね? 安心してください。今年の夏を乗り切るためのサマーパターン攻略特集「夏を制するキーワード」ではすぐに役立つ実戦的ハウツー満載でお送りします! そして! 夏といえばカバー! カバーといえば…フリップでしょ!! 未来に残したいバス釣り遺産『フリップ』にも大注目ですよ!
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