シーバスプロアングラー・小沼正弥さんが使うスピニングリールはローギア＆レバーブレーキ一択。その理由はズバリ、釣れるから。ではなぜこのリールが釣果に繋がるのか？ そのメカニズムを小沼さんに語っていただいた。
●文:ルアマガプラス編集部
リールへのこだわりは釣り業界トップクラス！ 大人気シーバスプロ・小沼さん！
小沼正弥（おぬま・まさや）
職業、プロフェッショナルシーバスアングラー。とことん現場に通い込み、魚の動向を追い、釣れるルアーの研究に勤しむ姿はまさに仕事人。ルアーのプロデュース力にも長け、人気ルアーをいくつもリリースしてきた。DAIWAフィールドテスター。ルアーメーカー「PickUp（ピックアップ）」代表。
時代はハイギア優勢、しかしそこには「落とし穴」がある。
1年を通してローギア、速巻きで食わせる時代は終わった
小沼さんのリールに対するこだわり、まずは「ギア比」について聞いてみよう。小沼さんが使うスピニングリールは、基本的にローギア。ローギアにこだわる理由とは？
小沼「それはもう釣れるからですよ。ルアーをゆっくり操作できるのと、慣れてくるとルアーの後ろに魚が付いてきたのがわかる。今食うなっていうのまでわかるようになりますよ。時代はスローリトリーブで、いかにルアーを見させて食わすかだと思うんで。
ウェイク系とか水面系のルアーも波紋の出方が変わりますよ。そして、水中での水圧変化を見つけやすいのがローギア。車と同じですよ。スピードを出せば出すほど、判断能力は鈍るでしょう。時速100kmと50kmだったらどっちがちゃんと標識が見えるのっていう。あと、ローギアのほうがラインが密に巻けるんで、ライントラブルが少ないですよ」
――具体的には、どのギア比を使うのですか？
小沼「昔ダイワにあったハンドル1回転73cmというリールがあって、それが自分の中でベストでした。それに合わせて、モアザンLBDは73cmで作りました。ベイトリールも71cmを好んで使ってます。水圧変化を見つけることが僕の釣りの真骨頂なんで。管釣りの人と近い感覚なんじゃないかな。
『1回転73cmを等速で巻いてこれる』これが大事なんです！ これは春でも夏でも冬でも変わりません。キャストしてから何回巻いてルアーが帰ってくるかっていうのを意識してやってるんで。30巻き目にアタリがあったとか、それで次のキャストでアジャストさせるんです」
――では、ハイギアを使うシチュエーションは…ない？
小沼「シーズンを通してローギアですね。夏のデイゲームでもローギアで問題ないです。超高速リトリーブじゃないと食わないなんてことはないですから。今はローギアのスピード感が身に付いているんで、僕がハイギアを使うと全く釣れないようになるんですよ。ハイギアを使うのは青物の時だけ。青物はルアーを速く巻かないと見切られるんで。でもセットアッパーは見切らないんでローギアのままですけどね。ハイギアリールはコンタクト感度が高い。何か物に当たった時とかに速く当たるんで。ハイギアのメリットはそこしかないと思ってます」
そして1秒間に1巻きする、これが基本のリーリングリズム。
小沼「ルアーもそのように作ってます。僕のルアーで釣れないという人は、ロッドが硬いかギア比が高い人です」
また、ローギアにはショートハンドルの方がおすすめ。より細かくスローに巻くことができるので、ファイト時にバレにくい。
小沼「急いで無理に寄せてくるから暴れてエラ洗いしてバレるんです」
ローギアだと水面ただ巻き系のルアーの引き波も変わってくる。ゆっくりと巻くことで、ルアーの水絡みも変化してくるのだ。
小沼「ハッキリ言ってこれはローギアリールにしか出来ないんです。ローギアリールだからこそ『釣れるスピード』を作り出せる。大袈裟な表現ではなく、僕にとって『魔法の道具』でもあるんです！」
ローギアリールにチャレンジするなら軽量モデルがおすすめ！
小沼「僕はレバーブレーキのローギアリールを長年使用していますが、20年前はエアリティの前身である、当時軽量モデルの最先端だった『トーナメントエアリティ』というレバーがないローギアリールを使用していました。
なので、これからローギアにチャレンジしたいと考えているアングラーは、まずは自重が軽量であるスピニングリールを使ってみてください。軽さにより感度も相まってローギアのメリットを感じられると思いますよ」
ファイトだけではない！アクション面でもレバーブレーキは機能する
実はレバーブレーキにしかできない芸当だらけ
――次はレバーブレーキについて。小沼さんがレバーブレーキをいつ頃から使っていたのでしょうか？また使うメリットとは!?
小沼「1999年頃には使ってました。試しに使ってみたら気に入って、今に至ってます。レバーブレーキのいいところは魚が跳ねないこと。エラ洗いしそうになったらレバーをオンにすれば魚が沈んでいくんですよ。ファイトでエラ洗いさせたら負けだと思ってるんで」
小沼「あと、足元のピックアップでかかるとき。そんな時は沖にまず走らせて、ゆっくりファイトできる。レバーブレーキにすると、ピックアップの魚のキャッチ率が上がりますよ。あと、タモ入れも楽。ランディングネットまで寄せたら、最後にフッとテンションを抜けばスムーズに入っていくので。ドラグは緩めに設定してます。ヒットしたら強くする。強すぎると、そこでテンションがかかりすぎてジャンプしてバレますから。細かいところでは、キャスト時にルアーのタラシの長さをすぐ調節できるっていうメリットもありますね」
レバーブレーキの一番の特徴はファイト。魚をエラ洗いさせることなく、ネットインまでスムーズに取り込むことができる。
また、フッキング面にも好影響が生まれる。
小沼「あとはショートバイトにも対応できる。逆転のまま巻いてくれば、アタリがあったときに一瞬ハンドルが戻るから、それで吸い込んでくれる。レバーフッキングっていうんですけど。早合わせにならないんですよ。ちょうどいいラインスラックで、自動的に送り込んでる状態になるんで、魚が勝手に掛かってくれますよ」
そして、守りだけではなく、攻めの面でもレバーブレーキの恩恵は大きいという。
小沼「まずはレバージャーク。ペンシルベイトでなどで、レバーをオンにしてハンドルを若干戻しつつハンドルだけで首を降らせると、絶妙なラインスラックが出てルアーがよく動く。勝手にダートするんです。これはレバーにしかできない芸当です。ハンドルだけの操作なので、水切り音が出にくいので、クリアな場所でも効果的です」
小沼「そして、ラインスラックをキープしたままダウンでルアーを流し込んでいける。ルアーがちょうどいい姿勢を保ったまま流れていくんで釣れるんですよ。ダウンに入ったから回収じゃない。下げ潮のスペシャリストになれますよ。これはレバードリフトと呼んでいます。
そして、ボートのシーバスジギングでは、ジグをテンションフォールさせることができる。バイトがあったらすぐにアワセることができる。ベイトタックルだとバックラッシュしてしまうこともありますが、レバーブレーキならそういうことはありません」
レバーブレーキをオンにした状態で巻けば、ハンドル操作で自在にラインスラックを作り出すことが可能。ハンドルに遊びができるので、ショートバイトにも対応することができる。
ルアーアングラーにとって馴染みのないレバーブレーキ付きリール。使いこなすのはなかなか大変そうだ。
小沼「最初はちょっと大変かもしれません。3年はトレーニング期間で使ってください。そうすれば、レバーがないと気持ち悪い体になりますよ。だから、いきなり高いモデルを買っちゃえばいいんです。安いとやめちゃうんで『高いのを買ってとことん使い込む』それがいいんじゃないでしょうか」
レバーブレーキリールを使いこなすことは、どんなにシーバスフィッシングの経験値を積んだアングラーでも一朝一夕にはいかないだろう。しかし、使いこなすことができればファイト面はもちろん、アクションやアプローチと、既存のスピニングリールでは難しいことが、レバーひとつでコントロール出来てしまうのだ。
決して簡単ではないが、使いこなせば周りのアングラーよりも圧倒的なアドバンテージ、唯一無二の「武器」が出来るはず！ リールに悩めるシーバスアングラーの皆様、是非一度検討されてみてはいかがだろうか。
レバーブレーキのメリット
- ファイトで魚が跳ねない
- ラインスラックを作れるのでショートバイトを拾える
- 多彩なアクションができる（レバージャーク、レバードリフトなど）
- ジギングでテンションフォールができる
- ラインのタラシの調節が簡単
レバーブレーキのデメリット
- リールがやや重くなる
- リールが高価
小沼さんプロデュースのレバーブレーキリールはこちら！
モアザンLBD
シーバスフィッシング用レバーブレーキリールの最高峰。レバーの形状や角度はキャストがしやすいように設計され、各部にDAIWAの高水準テクノロジーを搭載している。
スイッチヒッターLBD
小沼さんが監修したレバーブレーキ・スピニングリールのスタンダードモデル。小沼さんが実践する釣りを始めるのにぴったりなアイテム。
小沼さんのYouTubeチャンネルでもリールのこだわりを解説してます！ 必見です！
関連する記事
2月に入り今年も関東のシーバスアングラーの心を弾ませるあの季節がやってきた。そう、東京湾を中心に起こる春のシーバスの「定番」パターンといえる『バチ抜け』。早いところでは年末からスタートし、関東以外の地[…]
2022年日本を代表する釣具メーカーDAIWAのシーバスルアーフィッシングブランド「morethan（モアザン）」が発足20年の節目を迎える。圧倒的な人気を誇る同ブランドを象徴するアングラーの一人が職[…]
まもなく春がやってきます！ シーバスの活性も上向き、コンディションが上がってくる季節。今回はシーバスフィッシングのプロフェッショナルとして、各メーカーでルアー開発に携わりながら、全国を釣り歩き、パター[…]
さて、産卵を終えて体力回復のためにシーバスたちがパクパク、パクパクあれを飽食する季節がやってきますよ（きましたよ）！ そう！ BA・CHI・NU・KE！ バチ抜けー。湾岸エリアには、シーバスの体力回復[…]
シーバスはベイト（小魚）の群れに着いていることが多い魚。そのベイトの種類やサイズ感に応じてルアーを選ぶのがいわゆる「マッチ・ザ・ベイト」の考え方です。その時シーバスが狙っているのがボラなのか、イワシな[…]
