ルアーを凝視しない。広い視野で周囲の変化を察知。ヒロ内藤にトップの真髄を学ぶ。

2024 シーバス特集

トップウォータープラグで「釣れた」から「釣った」へ!

徐々に日が傾いてきた。

残念ながら風はやまないものの、風裏やその付近を中心に、ポップRをアプローチし続けるヒロさん。終了時間との相談で、最後はボート桟橋周辺を攻め続け、ブイの脇で2度ほどストライクがあった。

しかし魚が小さかったのか、フックアップには至らなかった。残念ながらこの日はノーフィッシュに終わってしまったものの、ヒロさんはおよそ13時間にわたり、ほぼポップRを投げ通したのだった。

「来る前に聞いていた状況としては、お題が50アップを釣れ、とかではなかったのでなんとかなるかとも思ったのですが一筋縄ではいきませんでしたね。最初のバイトはものすごく悔しいです。深場から出した魚なのに気が早って動かしてしまいましたからね。最後の2発は魚にもう少し根性がほしかった(笑)。やはり数日前に来た台風や荒天で濁ったのが効いていたのでしょうね。水位が高いのは好きな釣り(穴釣り)ができるし良かったのですが…。でもやりきることができたのは良かったかなと。今回はお見せすることができませんでしたが、地物の魚は体高があってものすごくきれいな魚体なんです。その分難しいんですけどね」。

釣れなければ面白くないし、釣れ過ぎたらそれはそれでおもしろみを感じなくなってしまう。そんな究極的にワガママな人種「アングラー」が満足する、狙いたい魚を、釣りたいルアーで、意図したアクションで釣るという考え方。

この夏はぜひ、トップウォータープラグでストライクを作り出す釣りを味わって見てほしい。「釣れた」から「釣った」に変わったとき、バス釣りがもっともっと楽しくなるはずだ。

なぜ釣れなかったか? を大切に!

ヒロさんいわく、釣れた経験よりも釣れなかった経験を大切にするべきなのだという。バスが釣りにくくなっている昨今、釣れたというひとつの結果から正確な情報を引き出すのは難しい。対して釣れなかったという状況は非常に多く遭遇するため、ダメだった状況の積み重ねは容易であるといえるだろう。釣れなかった理由のケアを続けることこそが、釣果へとつながるのだ。

ヒロさんがイチオシのアメリカントップウォータープラグをまとめてご紹介!

デビルズホース(スミスウィック)/Wスイッシャーの奥深さを教えてくれる2つのモデル

AF100は細身ボディかつ大きめのペラが組み合わさったモデル。これにより、低めの浮力に大きな抵抗がかかるため、ジャーク時には水中に頭を下げるように潜り込みやすく、ブレーキがかかりやすい。つまり移動距離を抑えた誘いに優れているというわけだ。一方、太めのボディに小さめのペラが取り付けられたAF200。こちらは反対に高めの浮力に小さな抵抗で水面を滑りやすく、1ジャークでもしっかりと長い距離をひいてくることができる。ウィードフラットのような広範囲を効率よく探るのに適しているといえるだろう。

ペラには通常、ヒネリが加えられており、これがきついほど水をよく掴んで回ってくれる。その一方、平らに近づけるほど大きな抵抗となる。通称「直ペラ」と呼ばれるこの設定をAF200のフロントペラに施すと、AF100のようにダイブするように変化した。同じスイッシャーも、ペラの曲げ角を調整するだけでもそのアクションに変化を与えることができるのだ。

ロッドの上下さばきを考える

ルアーをロッドの操作で動かす際に、そのロッドを上に動かすのか、下に動かすのかでもルアーの動きが変わるという。引っ張るという動作は変わらないのだが、ルアーが水面より平行方向に引かれるのか? 水面から浮き上がる方向に引っ張られるのか? の違いや、ラインが水面から離れるか否かの違いが生まれる。これにより、同じルアーであってもアクションに違い生じるので、自分が使うルアーがそれぞれどう変化するのかを理解しておこう。次のページで紹介するジャンピンミノーはその典型だ。

クレイジーシャッド(コットンコーデル)/変わってしまった名作Wスイッシャー

●全長:7.62cm●重さ:10.5g

アメリカのフィールドでメジャーなベイトフィッシュとしての「シャッド」らしい、扁平ボディのダブルスイッシャー。最大の特徴とも言えるのが、1955年に登場したころから採用されている、楕円形の穴が空いたペラ。真円でないことで着水時にペラが必ず縦になるためアクションの初動が良くなるほか、不規則な回転運動を起こし、ヒートンとペラ内部のぶつかり合うサウンドや、回転がブレることによる強烈なボディ振動を発生する。

写真はヒロさん手持ちのクレイジーシャッドのペラの楕円形の穴。ところが最新モデルではこの部分が真円になってしまっているという。ルアーの釣れる要素(理由)が理解されないと、こういった事態に陥るのだ。

ザラ+ポップRで何が起こる!?

ポップRの最小サイズ(ティニーポップR P50)のフックを取り外し、カップ側のアイにリーダーを結んでその先にザラスプークを結ぶ。そしてザラをドッグウォークさせると、まるでポップRを追いかけ回しているかのようなアクションが発生! リーディングルアーとも呼ばれるこの使い方は、バスの競争心を煽るのに最適なのだとか。

ルアー交換のしすぎに注意!

釣れるという自信や考えがあって選んだルアーなのだから、ローテーションはむやみにするべきではないというのがヒロさんの考え方。仮に釣れなかったとしても、そのルアーがたまたま釣れなかった理由を知ることができるからだ。すぐにルアーを変えていると、何が原因で釣れなかったのかがぼやけてしまうぞ。

クレイジーシャッドに限らず、ダブルスイッシャーを使用する際に有効なのが、ボールペンの芯のような細い管をラインに通す方法。2~3cmの長さに切ったラインを通し、ずれないようにシンカー止めと組み合わせれば、ラインがペラに巻き付くトラブルが激減する!

スウェイバックスプーク(ヘドン)/事故から生まれたモデルを製品化!

●全長:10.78cm●重さ:17.2g

アメリカからの輸送中の事故で上反りしてしまったザラスプーク(通称ソリザラ)を製品化。その絶妙な反り具合は入念なアクションテストを繰り返した上で決定しているという。当時の素材は若干熱に弱く、輸送中のコンテナ内が高温になったことが原因だったとか。作り手の意図を超えて生まれた奇跡と、それを再現した作り手の探究心にロマンを感じずにはいられない。スケーティング能力は落ちるものの、オリジナルザラスプークよりも動かしやすく、ダイビングのようなアクション変化の幅が広い。

アクション時の視野は広くとる

ヒロさんはトップウォータールアーを操作する際に、そのルアーを凝視していないのだという。あくまでもルアーを視界に入れつつ広い視野を持つことで、クリアウォーターであれば近づいてくる魚を視認できたり、マッディウォーターであっても周囲の植物が動くといった変化を察知することが可能。その反応に応じてアクションに変化点を与えて、ストライクを作り出すのだ。

ベビートーピード(ヘドン)/日本では流行らない!? 激釣れトップウォーター

●全長:6.35cm●重さ:10.5g

近年の日本ではあまり馴染みのない、シングルスイッシャーの超王道的ルアー。
スピニングリール文化の発展とともに、誰でも簡単に釣れる小さなルアーとして4.9cmの「タイニートーピード」からその歴史は始まっている。こちらのベビートーピードはひとまわり大きいサイズでベイトタックルでも使いやすい。基本となる動かし方はWスイッシャーと同様のトゥイッチやジャーク。静止状態では水中にあるペラが、ルアーを動かした瞬間に水面を切り裂きながら浮上。突如発生する音と飛沫が驚くべき集魚力を生み出すという。ヒロさんいわく、初心者にまずバスを釣らせたいならコレ。

ジャンピン・ミノー(レーベル)/実は多彩な垂直浮きペンシル

●全長:8.89cm●重さ:8.8g

アメリカンルアーのペンシルと言えば、水平浮きのザラスプークが圧倒的に有名だが、垂直浮きペンシルも存在する。その代表作ともいえるのが、レーベルのジャンピンミノーだ。現在の日本では垂直浮きのペンシルといえば不規則な動きで使う「パニックアクション」がおなじみだが、ロッドワークを上下どちらかで行うことで、意図したアクションを安定して出すことも可能なのを覚えておこう。

ロッドを上方向にさばくことで、水面を安定して泳がせることが可能。一方、下方向で捌けば、水面直下をダートさせ続けるような使い方にも対応する。トップウォータールアーでありながら、ワンキャスト中にレンジにも変化点を与えられる珍しいルアーといえるだろう。

プランク(ブーヤー)/ポッパー+クランク=!?

●全長:5.96cm●重さ:7.75g

ポッパーの下顎部分にリップが付いた一風変わったルアー。その見た目の通り、ポッパー的な使い方もクランクベイト的な使い方も可能。ポッパー的に使って、バイトはあったけど乗らなかったバスにフォローとして潜らせて使う…なんて芸当が可能なのだ。

取材時のヒロさんは1日中、シングルハンドでキャストを続けていたが、その精度は時間によって落ちることなく、またアクションのキレが鈍ることもなかった。タックルセッティングが突き詰められていることがよくわかるだろう。

タックル

※ルアー交換の効率化を考え、ヒロさんは同じタックルを2セット使用。

ロッド:ヒロイズム カリプソSJ1(スミス)

「今回1日を通してポップRを投げたわけですが、長くて重いロッドではさすがにしんどかったでしょうね。だいたい13時間位釣りをしていたことになりますからね。カリプソの5フィート2インチだからこそ、やり続けることができたと思います。もう少しパワーのあるLJも用意していましたが、オリジナルザラスプークがメインになるようであればそっちがメインになっていたと思います」

リール:スティーズCT SV TW 700XH(DAIWA)

「軽くて小さくて握りやすいので、長時間釣りを続けるうえで疲労感の減少に貢献してくれます。同じくコンパクトなリールとしてはアルファスSVも使いますが、あちらはスプールの溝が浅いのでPEラインを使用する際に出番となりますね。ギア比が高いのは、カリプソが短いので掛けた魚が手前に走ってきたときにラインスラックを作らせないためです」

ライン:シルバースレッド バス クランクベイト12ポンド(ユニチカ)

「ラインはヒロズチョイスのクランクベイトを使用しています。ジャークベイトでもよいのですが、あちらはよく伸びるので今回のように少し距離を離して釣りをする際には操作性やフッキングの面で不安が残るので、より伸びないクランクベイトモデルを使用しました。12ポンドという選択肢は普段に比べて細いのですが、こちらも少し距離を離す都合、より飛距離を稼ぐために選んでいます」

『ルアーマガジン』2023年9月号 発売情報

ルアーマガジン史上初めてのスモールマウス×オカッパリの表紙を飾ってくれたのは川村光大郎さん。大人気企画「岸釣りジャーニー」での一幕です。その他にも北の鉄人・山田祐五さんの初桧原湖釣行や、五十嵐誠さんによる最新スモールマウス攻略メソッドなど、避暑地で楽しめるバス釣りをご紹介。でもやっぱり暑い中で釣ってこそバス釣り(?)という気持ちもありますよね? 安心してください。今年の夏を乗り切るためのサマーパターン攻略特集「夏を制するキーワード」ではすぐに役立つ実戦的ハウツー満載でお送りします! そして! 夏といえばカバー! カバーといえば…フリップでしょ!! 未来に残したいバス釣り遺産『フリップ』にも大注目ですよ!


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