【帰ってきた、シン・ネバギバ。】清水盛三、復活連載!! 『バス釣り上達100のヒント』前編・プロローグ「バス釣りは自然相手の推理ゲーム」

モリゾー・ザ・復活!! 「帰ってきたネバギバ」ということで、約3年の充電期間を経て新たにFISH ON!! モリゾーさんの近況釣りネタトピックを皮切りに、日頃のバス釣りの悩みを解決すべく“モリゾー流・基礎からのバスフィッシング論”を存分に語っていただきます。というワケで、栄えある初回は前後編2回に分けてお届けだ。前編のテーマは先だって開催されたバサー・オールスター・クラシック2023の心境と試合における心構えを語っていただいたゾ!

●文:ルアーマガジン編集部(写真提供:エバーグリーンインターナショナル、MORIZO SHIMIZU)

PROFILE

清水盛三 MORIZO SHIMIZU 
1970年5月29日生まれ。大阪府出身。’97JBスーパーバスクラシックウィナー、’00JBワールドU.S.チャレンジinレイク・ミード優勝を経て渡米。老舗トーナメント団体B.A.S.S.が主催するエリートシリーズやFLWなどに参戦。2018年をもって引退、17年間の米国競技生活にピリオドを打った後は日本国内の各メディアへの出演他、ご意見番として後輩の指導にあたる。バサー・オールスタークラッシック2022優勝。
オフィシャルサイト http://www.morizoshimizu.jp/
<スポンサー>
エバーグリーンインターナショナル、グローブライド、東レ・モノフィラメント、グレンフィールド、モーターガイド、マーキュリー、カラーズインターナショナル、ALL of FAN
<バスマスター通算成績>
●B.A.S.S.
’01ウェスタンオープンでデビュー。1シーズン目で、翌年からのツアー参戦権を獲得。公式戦出場151回、クラシック出場3回、2006年にエリート・ケンタッキーレイク戦優勝、入賞66回(優勝:1回、準優勝:2回、トップ10:9回、トップ20:21回、トップ30:34回)。獲得賞金77万1299ドル(約1億1492万円 *1ドル149円換算)。

2024 シーバス特集

バス釣りは自然相手の推理ゲーム…立てた仮説をもとに答えを導き出せ!

オールスターに出場する際、必ずやっている一つのコト

――モリゾーさん、ご無沙汰しております!

清水「連載休止から3年?…もうそんなになるかぁ。ちなみに『ネバギバ』がスタートしたのは?」

――2006年ですね。

清水「15年以上やってたんやね…まあ、あの時は自分の現役時代のキャリアワークをみんなに語ってたけど、これからはアメリカに行っていた頃のヨモヤマ話とか、日本のバス事情、スポーツその他、今の近況を振り返りながら、あらためてバス釣りの楽しさと奥深さを皆さんに伝えていければエエかな、と」

――というワケで…

清水「近況といえばのバサー・オールスター、やろ? もう、ホゲってんのに~」

――釣れなかった試合のお話をしてもらうのは、やっぱり気を使います(汗)。

清水「ディフェンディングチャンピオンが今年はゼロ申告、最下位になるという…思い出したくもない話をせなアカンのがね、ホゲッたときこそのインタビューやったなぁ、ってアメリカ現役の頃を思い出すワ。しかも、この辛い立場からネバギバ復活連載スタート(笑)。まあ、詳細を語る前にひと言。僕はね、現役引退後のオールスター出場に関して、一つだけ決めていることがあって。それは、現役と同じような状態に身体を戻して…いや、現役以上やね、試合に臨むことやねん。現役の時って、アメリカで競技を散々やってきてからの晩秋の試合やから、物理的に練習期間が取れなくても勘が研ぎ澄まされているというか、身体が仕上がっていた。だから、毎年優勝に絡むような試合展開ができていたってのもある」

――なるほど。

清水「それが引退してからは当然試合勘も含めて全てにおいて鈍ってるから、少しでも取り戻す努力に時間を費やしてた。ただ、試合でやらなアカンことの大半は、19歳の頃から日米含めて30年間、現役引退までずっと試合をやってきたおかげもあって、どうやるべきかを脳の記憶が感覚として覚えてる」

――とすると、最低限必要なのはフィジカル?

清水「そう。体力。試合は本番の数日をゴールとして、公式練習の開始から1週間近くは丸1日の長丁場で釣りせなアカンから、体力作りは必須。ちなみに今年も昨年同様2ヶ月くらい身体を仕上げて試合に臨んだよ。でも、そもそもの話、僕がそこまでストイックにコンディションにこだわる理由、分かる?」

――…やはり『勝ち』でしょうか。

清水「当然そこはあるねんけど、それは最後の結果。僕のこだわりは…ここまでくるとプライドや信念に近くなるけど、日本で名の知れた一流選手が一堂に会す試合やからこそ、自分が出るのに遊びやお祭り気分では出られないし出たくない、というのが理由。とにかく失礼のない形で試合に臨むこと。“真剣”という熱くて強い気持ちを持たへんかったら、現役で活躍しているトップランカーの選手達にむしろ無礼やと思ってるからね。だからこそ、出るからには対等に戦える状態までコンディションを上げていかなアカン。それは勝ち負け関係なく、最低でも同じ土俵で戦えるまでね」

23オールスタークラシックは残念ながらゼロ申告という厳しい結果となった。最終日、ウェイインステージのウェイティングにて。モリゾー選手、果たして何を感じ何を思うか。

釣りに対して忠実であることの意義。FISH the MOMENT の徹底追及

――先程、試合勘という言葉が出ましたが、実際の釣り勘に関してはどうやって整えていくのですか?

清水「それに関しては…魚を見つけることに関しては不安や心配はないよ。直前練習で状況は把握できるし。僕の場合、霞ヶ浦に行かなくても、ロケなどでコンスタントに他の釣り場に行っていることもあって、魚を見つけるという意味では問題なかった。今年もそれなりにグッドサイズを見つけてはいたからね。僕の釣りのテクニック自体は、帰国後数年で日本にフィットした感はあるかな。

ここでひとつ言っておきたいのは、とにかく『釣りに対して基本に忠実である』こと。それをマックスまで持っていくことが、魚を釣るのに最高のテクニックやと僕は思ってる。あとは、そこに自然を読む力を加えていく。一週間前から天気をみて大体を予測する。晴れや無風ならタフ、雨風吹きそうなら期待大、気温水温が下降気味ならワーム系は渋いか、などといったセオリーを考えながら、本番を迎える前に、そしてフィールドに入る前に状況を踏まえてイメトレ&イメプラをする、という流れやね」

――で、試合を迎えると。

清水「それで昨年は結果、優勝を勝ち取ることができたんですワ。となると、今年は?…ってなるでしょ。当然、同じプロセスを組んだんやけどね。正直、昨年優勝したときに、勝ち逃げしたかった(笑)。勝ったけど試合がホンマにしんどかった。2日目の帰着後、気持ち的に気力エネルギーがゼロになったからね。もう、精も根も尽き果てるというか。だからこの優勝を機に来年はもう出ません、と、その日に編集スタッフに言ってたくらいやからねぇ。沢村さんからは『モリゾー、絶対ダメだよ。来年も出なよ。ゴルフおごるからさ』なんて言われたりしてたけど(笑)。今思うとね、昨年最高の結果を出せたからこそ、今年の最下位がメッチャ悔しい。魚をよう釣ってこれへんかったことに対して。本格トレーニングは同様にしたし、直前練習も日の出から日没までガッツリやってたしね」

――一人でコツコツと、ですよね。

清水「そうですよ。でも、今年はバスと対峙できなかった。冷静に分析するとね、昨年の優勝を引きずっていたと思う。今回のバスのポジションはもっと手前…夏寄りな感じやった。まあ、言い訳もなく完敗です。当日は、自分の最高の技術で“FISH the MOMENT”を展開したつもりやったけど、今思うとやり切れてなかったね。魚からの答えが返ってこなかった」

――今年は試合の一週間くらい前に大きな気候変化がありましたね。

清水「そうやね。それで昨年と一緒になるんかなと思ったけど、気温低下の後にまた元に戻って、半袖で一日過ごせるような日が試合当日まで続いたからね。試合中だけサンダーストームが来て…しかも僕が釣りしている場所だけ、ずっぽりハマるという(笑)。朝の2時間だけ釣りして、あとは避難しながらの釣りになっちゃったけどね」

――チョイスしたエリアで他の選手とのバッティングはありました?

清水「なかったよ。まあ、僕は基本的にバッティングしないタイプやから。アメリカでも、一人ポツンと浮いていることが多かったし。現役時代、魚を釣ってきたりすると『アイツスゲーな。なんでいつも一人なのに釣ってくるんだ?』って現地選手に言われたりしてた。でも、さっき言った基本を知っていれば、魚はおのずと見つかるし釣れるから」

――その基本に忠実なことについてですが…。

清水「これは今後、おいおい話していくと思うんやけど、釣りは自然&生き物相手のゲームやから、水温、水色、水質、水深、天候、ベイトの有無、風などの環境の変化が主軸になる。で、その軸を元にバスの行動をシミュレートしていく。エサを食うための条件を、周りの環境から推察してアジャストしていく。それが基本。自然摂理的なセオリーですワ」

――それが、今年の試合に限っては噛み合わなかったと。

清水「まあ、しょうがない。事実として、初日のサンダーストームで水量が増して、本湖の状況が変化。これを基本のセオリーに当てはめると、増水によりシャローのベジテーションに魚が差すようになり、カバーフィッシングが有効になる。かつ、ストームからプロテクトされるスポット…といった、変化からくる流れを瞬時に読んで対応できたかどうか。ここに尽きると思う。今回も多くの出場選手が気付づいていて、釣り方に変化を持たせて実際に釣ってきた選手もいた。当然ながら僕もその思考に基づいてアプローチしたけど、僕が撃ったシャローに差したバスはいなかった。魚がいるであろう条件が整ったエリアはピックアップできたけど、そこに魚がいるかどうかはまた別問題やからね」

その日その時の条件を仮説として自ら整え、ルアーを投入して答えを待つ。「FISH the MOMENT…今を釣れ」。ゲーム性の高いバスフィッシングの一番の醍醐味ともいえる。*写真は弊社実釣取材時のヒトコマ。

クラシックウィナーとなる条件。ストーリーを持つ者のみの特権

清水「ていうか、ホゲった話はもう終わり。連載初回のイントロ、こんなに長くてエエの(笑)?…と言いつつやけど、最後にひと言だけ。僕はね、この試合って、その年、一番苦労して…苦しくても人知れず一番努力した選手に最後にご褒美をくれる大会やと思ってる。ナンボ調子良くても、その価値がなければ勝てないのがオールスターやねん。優勝する選手は、何らかの物語がある。その人にしか理解し得ないストーリーがね。だって、オレが昨年そうやったから。試合する前から『勝つから』って宣言してたからね。これで勝てなかったら釣りの神様が見ていなかったと思うしかなかった。でも実際勝てた」

――今年はそのあたり、感じるモノはありました?

清水「今年のウィナーは…巧君(伊藤)、もしくは昨年2位の悔しさを味わった早野君やな、と。彼は、オレの優勝の時のバサーの表紙を一年間リビングにずっと飾ってたって言ってたでしょ。悔しさをバネにするためにね」

――昨年、優勝が確定した瞬間に早野選手に握手をしに行ってましたよね。

清水「リスペクトの意味も込めて、ありがとうって。次は早野君やで、って。でも、今年の巧君のしんどさも知ってた。京弥君がエリートに昇格して破竹の勢いで優勝していたりする裏で、なかなかに厳しい戦いを強いられていたと思う。DHLっていうビッグスポンサーがついたことによるプレッシャーも感じてたんかな…。相当にしんどかったと思う。僕も航空会社のユナイテッドが付いたときはやっぱりプレッシャーがあったからね。上手い選手は他にもいたけれども、やっぱりあの二人には特別なストーリーがあったんかなと思う。オールスター・クラシックが特別だというのは、そういう“何か”があるということにおいて特別なんだってことですよ」…後編へ続く。

2022オールスター・クラシックのステージにて。優勝が決まった瞬間、早野選手と固い握手を交わすモリゾー選手。一緒に戦った選手へのリスペクトを忘れない。

<後編はコチラから!>

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