【太平洋エリアにも拡大中!】意外とのん気な海のハンター

海の中はどうなっていて、どんな魚がいるのだろうか。魚たちが暮らす場での、そのリアルな生活を垣間見たい。そんな思いで水中に潜り、撮りためた写真を集大成しました。キジハタは全国の岩礁帯に広く分布するハタ科の魚で、特に日本海側に多いことが知られています。大きくなると50cmを超えることもありますが、よく見かけるのは30~40cmくらいまで。関西では「アコウ」の名で知られています。(※本原稿は『水中釣魚ワールド』からの抜粋です。)

●文:ルアマガプラス編集部

2024 シーバス特集

水中写真で見るサカナの生態:キジハタ

【Target Profile】

キジハタ

青森県以南に分布。暖海性のハタの仲間でもキジハタは北に分布する種類になる。体色は赤褐色で橙赤色の斑点が多く散在。沿岸から沖合にかけての岩礁帯に住み定着性が強い。甲殻類や小魚を食べる。

キジハタは「マンション」住まい?

キジハタには好みの〝根〟があるようだ。というのも、そこに潜れば必ずいるという隠れ家が存在するのである。それは岩礁帯であったり、テトラ帯であったりいろいろだ。ただし、岩礁帯やテトラ帯は総じて砂地に隣接するシチュエーションがキジハタの好みであるような気がする。

隠れ家は岩の割れなど全身をすっぽり隠すことができるようなすき間になる。キジハタの多くはそんな場所に身を潜めている。

岩の割れの間はキジハタにとって安全な居場所。何尾も同じ割れ目に同居していることもある。

大きな根になると、多くのキジハタが集うマンションになることもある。さらに、住みやすいのはキジハタたちにとってだけではなく、メバルやグレ、イシダイにとっても快適な居場所のようで、異魚種が割れ目に混在していることも珍しくない。まるでシェアハウスのような〝物件〟もけっこう存在する。

さまざまなサイズのキジハタが潜んでいるが、中には40cmを超える大型も見受けられる。

身を潜ませるのに飽きた魚はバルコニーよろしく岩棚に出てきたり、中には海藻に体をくるませて海藻浴(?)を行っている魚もいる。マンションライフを満喫するキジハタたちを眺めていると飽きない。

すっぽり体を収められ、さらに藻が守ってくれる。キジハタはそんな居心地のよい場所が大好き。まるで猫のようだ。

しかし、潮が流れ出したりしてエサとなる小魚たちの動きが活発になると、キジハタたちは隠れ家から出てフラフラとパトロールに出る。どこへ向かうのかというと、狩り場だ。狩り場とは、彼らがエサを捕食できるポイントに他ならない。

食事の時間、キジハタはハンターと化した

日本海側のある場所での観察例を紹介しよう。そこは、砂地に大きな岩礁があり、多くのキジハタの隠れ家、先に述べたマンションのようになっている。その岩礁から15mほど離れた場所には沈船があり、沈船には小魚が付いていおり、キジハタにとっては格好のエサ場になっていた。

潮が流れ出したのを機に、隠れ家に潜んでいたキジハタは岩礁から砂地へ出て、這うようにゆっくり泳ぎ出した。

すみかである大きな岩から、離れた場所にある沈船へと移動中。

ときおりストップし海底に鎮座。周りを伺うような素振りを見せながら、また移動する。

止まっては、まるでほふく前進するように進んでいく。10分ほどかけて沈船に着くと、眼光が鋭くなり、キジハタはハンターと化した。

捕食シーンを見ることはできなかったが、キジハタたちはきっと毎日こんな行動をしているのだろう。今日も元気に隠れ家周りをパトロールしているに違いない。

水深30mほどにある沈船に到着。ストップして様子を伺う。捕食がはじまるのを邪魔してはと忖度し、ここではストロボはいったんオフにした。

魚は水中でどんなふうに暮らしているのだろうか?

海の中はどうなっていて、どんな魚がいるのだろうか。魚たちが暮らす場での、そのリアルな生活を垣間見たい。そんな思いで水中に潜り、撮りためた写真を集大成しました。釣魚の行動観察録にはじまり、海中を彩る多種多様な魚たちの生態、そして捕食の瞬間まで、釣魚の生の姿を大紹介。水中撮影での苦労話やトピックス、各魚種の釣り方なども盛り込んでいます。

『水中釣魚ワールド』

●発売日:2021年8月4日
●価格:1,980円(税込)


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