メガバス初代デストロイヤーはどこが凄かったのか?「破壊者」たる所以とは?

メガバス初代デストロイヤーはどこが凄かったのか?「破壊者」たる所以とは?

バスロッドの歴史にその名を刻むメガバスの「デストロイヤー」。1996年のその誕生は、当時の業界に大きなインパクトを与え、常識を破壊した。そしてその革新は今日のバスロッドにも脈々と受け継がれ、現代バスロッドの礎を創造した。では実際のところ、デストロイヤーは何が違ったのか? 温故知新の扉が開かれる。

●文:ルアマガプラス編集部

profile

伊東由樹(いとう・ゆき)
世界にその名を轟かせるタックルメーカー「メガバス」と「アイティオー」グループを一代で築いた人物。カリスマアングラー、デザイナーにしてCEOを務める稀有な才能の持ち主だ。今回紹介するデストロイヤーシリーズはもちろん、ポップXやワンテンなど、バス釣りの歴史を語るうえでは欠かせない名作をいくつも世に送り出してきた。

模倣ではないバス市場のために

バスが日本にやってきて2026年で101年目を数えるが、日本のバス釣りは1960年頃にアメリカの模倣から広がっていった。そして国内人気の高まりに呼応するかのように国産品も市場に並ぶようになっていった…。そんな時代の変遷に影響を与えた一人が伊東由樹さんであり、今なお歴史を紡ぎ続けている名竿・デストロイヤーだ。

「初代のデストロイヤーが発売されたのは1996年。当時はバス釣り業界にとっても激動の時代だったんじゃないでしょうか」。 

伊東さんは当時のことをこう振り返る。

「まだまだロッドは輸入物こそ至上であり、価値のあるものとされている時代でした。でもよく考えてみてください。日本人は欧米人と身体つきも筋力も違うし、独自の釣りも発展しつつありました。そうであるならば日本人のためのロッドを日本のフィールドで創るのは必然です。そしてそれが日本独自の市場を創造していくためにも必要なことであると考えたわけです」。 

すでにルアーメーカーとしては軌道に乗りつつあったメガバスだが、創業当初の86年に手掛けていたARMS以降はロッド製造からは距離を置いていた。そんな中で発売したデストロイヤーは、メガバスがロッドメーカーとして再び歩み始めるターニングポイントでもあったのだ。

「ARMSでやりたかったこと、世の中に伝えたかったことにもう一度挑戦しようと思ったんです。自分ならバス業界をも変えられるという自負もありましたしね」。 

奇しくも同時期に某メーカーからも国産ロッドが登場して人気を博し、デストロイヤーと鎬を削ることになるのはご存知の通りだ。そしてその切磋琢磨とも呼べる市場競争によって、国産製品によるバス釣り市場は拡充の時代を迎えることとなったのだった。

常識を壊せ!現代バスロッドの礎

創造のための破壊を名に冠した『デストロイヤー』の登場が後世のロッド開発に与えた影響はあまりにも大きい。 

特に注目すべきなのは、高弾性カーボンの使用を筆頭にした、バスロッドの高感度化だろう。

「水中のことをより明確に感知できる、解像度の高さをロッドに求めました。だからARMSには航空機業界でしか使われていなかった高弾性カーボンを採用しましたし、チークウッド製のグリップを組み合わせることで、驚くほどの高感度を実現しています。そして今度はそれをビルダーとしてではなく、ロッドメーカーの工業製品として生み出したかった。それがデストロイヤーです」。 

そうして伊東さんは当時の常識を破壊する。

「当時はボロンという金属繊維を使うことで感度を高める手法もありましたが、少しでも軽くするためにメガバスはカーボンによる高感度化にこだわりました。そして研究の結果、カーボンシートをうまく組み合わせることで、重量増と感度減退の原因となるレジンを減らせるようになったんです。いわゆる多軸製法に近い手法ですが、30年たった今も他社さんが気づいていない手法だと思います。現行のデストロイヤーにもこの手法は活かされていますね」。  そして感度の向上はブランクスによるものだけではない。 「グリップに、内径とあわせたカーボンシャフトをはめ込み、そこにブランクスを差し込む方式を考案しました。こうすれば、カーボン同士の接触によって振動伝達に優れ、グリップ内部に反響空間が広がることで振動を増幅させることもできます。グラコンポシステム(PAT.)と名付けたこの特許構造は、現在に至るまで歴代デストロイヤーに搭載してきました」。 

このグリップ内反響による感度増幅という概念もまた、デストロイヤーに端を発しているといえるだろう。 

そのほかにもエンドバランサーや、リールシートの塗装、小口径ガイドセッティングなど、デストロイヤーが当時の常識を壊し、後のバスロッドに与えた影響は枚挙にいとまがない。最新素材・革新技術で武装したロッドはまさしく破壊者としての出で立ちだったのだ。

日米問わず過去モデルが現在入手困難

最近では、フェイズ1を筆頭に、デストロイヤーの旧モデルが注目を集めているという。

「クラシック市、つまりオールドタックルコレクターによる市場がアメリカにありまして、そういった場所に歴代のデストロイヤーが登場することが珍しくありません。旧モデルにしかない特徴を活かした釣りを楽しみたい、マニアックなお客さんが増えているみたいです」。 

それは日本でも同様のことが言えそうだ。今でも釣り場で初代デストロイヤーやフェイズ2を使っているアングラーを見かけることは、決して少なくない。

「当時のF6-69Xのブランクスが今なら食わせを意識したジグ撃ちに使えるな、とか。ジャークベイトをやるなら初代エヴォルジオンのエルザイルがいいよねという人もいるし、オロチX4のワンテンスティックがいいという人もいる。もちろん現行のワンテンスティックのエルゴノミクスはグローバルに評価されている。だから各年代ごとにデストロイヤーはバリューが維持されているんですよね。苦労して作ったロッドたちを長く相棒として迎え入れてもらえるというのは竿屋として非常にうれしいところです。でもそうした選択肢に選ばれるのは、その時代時代の釣り味を楽しむ方法がそれしかないからなんですよ」。 

製法や素材を変え、絶えず進化を続けるメガバスのバスロッドは、ある種の不可逆性を持つ。つまり、過去のモデルを今作ることはできないのだ。 「当時持たせたキャラクター性が、今になって、あるいは今だからこそ新鮮味を感じてもらえているのだと思いますね」。

バスロッドは漁具ではない

旧モデルへの需要の背景には、価値観の変化があるのではないかと伊東さんは推測する。 「フィッシングエンジョイメントとでも言いましょうか。ロッドがただ魚を釣るための棒ではなく、釣り味や釣り心地を味わう道具として捉えられはじめているのかなと。日本でも最近はバス1匹の価値って重たくなってきていますよね。そうなってくると、1匹といかに深く関わるかが重要になってくるわけです。今はSNSを使えば自分に対する他人からの評価やリアクションはすぐに得られる時代です。だからこそ、自分自身の内面へと影響を及ぼす要素を追求したいと思うのでしょう」。 

人の、言わば感性に訴えかけるロッド作りとは、伊東さんの思い描くプロダクトの姿でもある。

「工業製品的には優れた機能性を持つ物こそが優れたデザインであるとされるわけですが、こと釣具に関していえば、『カタチは感動に従う』。感動できるからこそ、それは良いデザインであると評価されてほしいのです。例えばフォークはあらゆるものを食べるのに適した優れたデザインと言えるでしょう。でもフォークでソバを食べたところで感動できるでしょうか? ソバを食べるのであれば、私の場合はお箸のほうがおいしく食べられます。何なら割り箸ですら、その時には『優れたデザイン』と呼べるものになる。これが『カタチは感動に従う』という考え方です」。 

そう。バスロッドは漁具ではない。バス釣りという時間の使い方を、より素晴らしいものへと昇華してくれる特別な道具なのだ。 「日米問わず、そういった感性に気が付いている人が増えてきているのだと思います。『感性工学』という学問がありますが、釣具作りはそういった側面も併せ持っているんです。中でも趣味性を高めるためのバスロッド開発は、究極の『感性工学』かもしれません」。 

かつて業界の常識を破壊したロッドがあった。その破壊は創造のために行われ、今日のロッド開発への新たな可能性を生み出すに至った。そしてその破壊者は今もなお、新たな感性を創造し続けているのだ。

写真はどちらもフェイズ1のデストロイヤーで、右がF6-69Xスーパーデストロイヤー、左がF4-66Xトーナメントバーサタイル。69Xは明らかにグリップが太い。これは、カバー撃ちを想定したロッドであれば、とっさの動作で強い力をかけるためにはしっかりと握りたい、という心理的安定感を優先したデザイン。感性工学に基づいているといえる一例だ。

デストロイヤー F4-66X サイクロン (P5)

下写真の初代オリデス・トーナメントバーサタイルの系譜に当たる、最新式のデストロイヤーがコチラ。想定されるルアーのウエイト幅や釣りはほぼ同様だが、フェイズ5のデストロイヤーは明らかに軽く、明らかに丈夫である。間違いなく最高傑作だが、釣り味という意味では初代には初代の味が、最新式には最新の味が存在する。

デストロイヤー F4-66X トーナメントバーサタイル

「伝説が、かえってくる。」のキャッチコピーの元、ARMSの後継機として誕生したメガバスのフラッグシップロッド。5kgのカツオや6kgのシイラを仕留めるなど、現在でもバスロッドとしてはオーバーワーク気味なテストを潜り抜けて生み出された。剛性感と感度。そのどちらもが当時の常識をぶち壊すレベルの完成度だった。写真の「トーナメントバーサタイル」は特に人気だった番手の1つ。その名の通り、極限のシチュエーション下でも遠距離~近距離の釣りを高次元で行える。

ブランクス
当時としては高弾性のカーボンを積極的に採用し、感度を追求。釣具業界では知られていなかったそのカーボンはレーシングカー由来だった。また、初代デストロイヤーは年代によってカーボン素材が異なっており、写真のロッドは40tカーボンのHT800Xが使用された98年生産のモデル。後年には50tカーボンのHT1000Xが使用されることとなる。なお、マイナーチェンジの多い初代デストロイヤーは、デザインやパーツ類の違いから年代を読み解くことが可能だ。

グリップエンド
組み合わせるリールの重量を想定し、セットした状態で手元に重心が来るようなバランスを追求。そのためのパーツとして、一体切削のバットエンドバランサーを業界初導入した。また、スプリットショットリグを想定したロッドであればティップダウンさせるバランスにするなど、モデルごとのセッティングも施されている。

グリップ
ブランクス貫通式から脱却した「グラコンポシステム(PAT.)」を開発。高強度カーボンを内蔵したグリップにブランクスが接続された構造は、当時としては異例の強度を発揮。また、ブランクスから伝わる振動が減退することなく手元に伝わるほか、グリップ内部で反響することで振動を増幅する、つまり感度を向上させる効果ももたらされた。

リールシート
油脂を含む素材でできたリールシートは経年劣化に強いものの、塗装できないという特徴があった。そこでメガバスは子会社のITOユニオン社にて独自手法を開発し、デストロイヤーにてリールシート塗装を実現。デザイン性を高めた。

外見
超高強度カスタムコーティング仕上げにより、深みのあるツヤと透明感を持つ。保護としての機能も優れており、30年近く経過した今でもその輝きは色あせない。ブランクス外装の平織カーボンは装飾ではなく強剛性を追求した結果のものだが、結果としてロッドの外見的魅力にも大きく貢献。

ガイド
SiCリングとチタンフレームガイドをいち早く導入し、軽量化を追求。ガイドそのものはFuji工業製品を使用しているが、そのセッティングは飽くまでもメガバスが独自に研究したものだ。これにより、デメリットも抱える超小口径ガイドをいち早くバスロッドに導入することもできた。

スレッド
スレッドの美しさは今なおデストロイヤーを象徴する要素のひとつ。ロッドはティップからバットまで場所によって曲がり方が異なることを考慮し、それぞれに応じた4パターンのスレッドを使用。ブランクスの剛性向上にも貢献する。

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