
既報の通り、メガバス・伊東由樹さんは、ドイツのデザインアワード『レッドドット』にて、最高栄誉とも呼ぶべき『ベストオブザベスト』を受賞した。このことは、これまでの受賞とはかなり意味合いが違うと伊東さんが語った。
●文:ルアマガプラス編集部
伊東由樹
いとう・ゆき/世界にその名を轟かせるタックルメーカー「メガバス」と「アイティオー」グループを一代で築き上げた人物。カリスマアングラーや天才デザイナーとしての顔も持つ。ロッドでは「デストロイヤー」シリーズをはじめ、ルアーなら「ポップX」や「ワンテン」など、バス釣りの歴史を語るうえで欠かせない名作を数多く世に送り出してきた
最新ロッド『レヴァンテ』を語る伊東由樹さん
プレ40年イヤーを迎えるメガバス。今年の新製品最大の目玉は何といっても『レヴァンテ』だろう。ともすればメガバス的なエントリーモデルと思われてしまいそうなロッドではあるが、その実は全く違う、デストロイヤ[…]
わびさびの文化から生まれた釣具への『emotion』
ドイツ・エッセンで開催される世界三大デザインアワードのひとつにして最大規模を擁する「レッドドットデザインアワード」にて、最新ロッド「レヴァンテ」で伊東さんはレッドドットデザインアワード最高栄誉賞『ベストオブザベスト』を受賞した。
国内で行われる「グッドデザイン賞」や、同じく世界三大デザインアワードのひとつに数えられる「iFデザインアワード」で幾度も受賞している伊東さん。レッドドットデザインアワードにおいても、デストロイヤーP5やオロチX10
といったプロダクトで受賞経験を持つ。
しかし今回の『レヴァンテ』は、それまでの賞とは異なる『ベストオブザベスト』。エントリー作品のうち、ごく限られたプロダクトにしか与えられない最高栄誉なのだ。
「レッドドットデザイン賞の受賞作品は、その年の年鑑に記載されます。ベストオブザベストが授与されたデザイナーは、デザイン理論と概念が公式年鑑に記載され世界に発信されます」。
つまり、伊東由樹のデザイン哲学が、レッドドットデザイン賞の、ひいてはデザインという学問の歴史に刻まれる時がきたのだ。
「インタビューでお話させてもらったのは、『フォルムフォローズファンクション(形態は機能に従う)』のその先の話でした。例えばフォークという食器は、モノを食べるということに関して言えば機能性に優れたものです。でもフォークで『ソバ』を食べたところで、個人的にはおいしいとは思えないのはなぜか?」。
食事は単なる栄養摂取のためだけの行為ではない。現代社会においては、食べるという行為そのものへの喜びや、美食という価値観がそこには存在するはずだ。ところがフォークが持つ機能性に優れたデザインとは、そういった価値観には寄り添うとは限らないのだ。
「だとするなら、それは『形態は機能に従う(Formfollowsfunction)』では作れないんです。つまり、形態は人の気持ちよさによって決まることがある。それが『形態は感動に従う(Formfollowsemotion)』。感情に従う形も正しい形態と言える。機能だけでいえば、フォークはパスタもステーキももちろんソバも食べられるでしょう。でもソバを食べても美味しく感じられるとは限らない。機能的に優れているはずなのに、食べているものを美味しく感じさせないのはなぜか?その答えがそこにある」。
釣りにも同様のことがいえるだろう。とにかく釣るというのが『形態は機能に従う(Formfollowsfunction)』フォークなら、そこにドラマ性を求めより釣りを深いものにする『形態は感動に従う(Formfollowsemotion)』は箸なのだ。
「私が作っているのは工業製品です。でも、それによって生み出されているのはバス釣りを通して感じていただく『emotion』。それこそが、メガバスの道具を使って得られる喜びの正体です」。
デザインを釣具から学ぶ時代がやってくる。
先にも記した通り、上記の伊東由樹流のデザイン哲学はレッドドットデザイン賞の公式年鑑に記録される。
それはつまりこの先の未来、デザインを学ぼうとする人々が、伊東さんから学ぶ機会がやってくるということ。今後のデザインの歴史において、釣具やその文化を介して新しいものが生まれる可能性を示唆しているともいえるのだ
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