アメリカでも通用する? バス釣りトーナメンターが語る『攻撃的フィネス』とハードルアーの関係【青木大介流フィネス物語1】



ワームと聞くと、“食わせの釣り”を想起することから「守り」「フォロー」「スローダウン」と、どちらかといえば消極的なイメージがつきまとう。だが、青木大介さんが繰り出す『攻撃的フィネス』は鍛え上げられた日本刀の如し。ダグラスレイクの快挙を今一度、本人の言葉で振り返りながら『速いフィネス』の真意を確認してみたい。

【Profile】

青木大介(あおき・だいすけ)

国内最高峰カテゴリー・JBトップ50プロシリーズにおける3度の年間優勝を筆頭に数々のビッグタイトルを獲得し、2019年よりアメリカB.A.S.S.トーナメントへの参戦を開始。今年4月、テネシー州ダグラスレイクで行なわれたサザンオープン第2戦で220名の頂点に立ち、2022年のワールドチャンピオンシップ『バスマスタークラシック』の切符を手に入れた。

バスを釣ってこそ〝強い釣り〟

青木大介さんが、4月中旬開催のB.A.S.S.サザンオープン第2戦で優勝したのは既報のとおり。

ウイニングルアーもご存じだろう。

ヤマセンコー(ゲーリーインターナショナル)とトルキーストレート(ディスタイル)。

ヤマセンコー(上)とトルキーストレート(下)

そう、ワームである。

ところで、我々一般アングラーの多くは、釣れないときの2番手、3番手としてワームを起用しがちだ。

そこには「ハードベイトで釣りたい」という願望が存在したり、「釣れて当たり前」的などこかワームを軽視する心理が働いてはいないだろうか。

でも、1日ハードベイトを投げ倒したのにアタリひとつなく、傷心で桟橋に戻ってきたらフィネスを駆使したアングラーのビッグフィッシュ釣果を耳にしてさらに消沈…。

趣味の範疇でバスフィッシングの楽しみ方は人それぞれだから、ハードだろうがソフトだろうが優劣を決めるのは本人であって第三者がとやかく言うことではない。

ただし、個体数の減少やプレッシャー過多により、ワームなくしてバスの顔を拝むのは難しくなっているのが令和の現実なのだ。

これが賞金のかかったプロトーナメントならなおのこと、結果を出した釣りこそがストロングであり、自分の得意なスタイルに持ち込みたいという願望はあったとしても、状況にそぐわないルアーセレクトを貫くなど愚の骨頂でしかない。

予選落ちした選手が「でも俺は最後まで巻き続けたんだぜ」と言ったところで、注目するのはファンのみ。

バスマスターでは試合後、上位選手のメインルアーをオフィシャルサイトで公開するが、ダグラスレイク戦における青木さんのウイニングルアーには世界中のバスアングラーが興味津々だったに違いない。

いったいこれらを、AOKIはどう使ったのか?

そのキーワードは『速いフィネス』だ。

日本とアメリカの違い

動画等でご覧になった方もいるだろうが、青木さんはフィネスリグで流していくアプローチを多用する。

ファストムービング系ルアーほどの速さではないものの、その多くはシェイク&リトリーブ(ミドストのロッドワークを想像してほしい)で任意のレンジをスイム(=横の動き)させながら、エレキを踏んでボートを進めていくのだ。

ざっくりと言うならこれが『速いフィネス』=『攻撃的フィネス』である。

当然、ズル引きなどに比べるとカバーできる範囲は桁違いに広くなる。

そして流しながら常に周囲を観察し、さまざまな情報を収集するのが青木流(その収集量と解析能力が非凡であることは言うまでもない)。

ダグラスレイク戦では、まさにこの『速いフィネス』が軸となった。

――一般的にサーチベイトというと、ハードルアーをイメージするじゃないですか。でも青木さんの場合は、『速いフィネス』を中心にバスを探していくのでしょうか。

青木「日本なら、探してしまいますね。でも、アメリカではいきなりそれをやってしまうと厳しいかな…」

――それは規模的に?

青木「そうです。日本だったら、『速いフィネス』でひととおりチェックできるので、魚のいる場所が絞れるんですよ。状況にもよるけれど、日本のメジャーフィールドでは、ハードルアーの巻きだと魚がいても反応しないことのほうが多いでしょう。なので、ざっと巻いて食ってこなかったからといって、その場所を切り捨てるのは早計。もしかしたらすごくいい場所なのに、そのことに気付けないかもしれません。

とくに僕の場合は、ベースがトーナメントじゃないですか。プラクティスでみんなが叩くからプレッシャーが蓄積されて、ハードベイトがどんどん効きづらくなってしまう。『速いフィネス』の起用は、そういう意味合いもあります。プリプラクティスであれば、巻きから入ることもありましたよ。もちろん、それも状況しだいではありますが」

――たしかに過去の結果を思い返してみても、日本でハードルアーが効いた試合というのはあまり多くないと感じます。

青木「効くときは効くけれど、常に効いてはくれないというか…今日のこの状態なら効いているけれど、本戦で同じ状態になるかどうかは蓋を開けてみなければわからない。しかも、試合が近づくにつれて場所もタイミングもどんどん狭くなっていくんですよ。

ただ、まったくゼロになってしまうわけではないし、逆もなくはない。それまで巻いて釣れなかったのに、本番になったら雨が降りまくって濁りが入って、流れも生じて、巻いているほうが圧倒的に効率が良いとか。でもやっぱり、そういうのはレアケースですよね」

――アメリカは、本戦でもハードルアーが効くイメージがあります。

青木「いや、けっこうアメリカも同じですよ。少なくともオープンは200人以上の選手が出ているし、湖の規模がデカいといってもどこもかしこもが一級エリアなわけじゃないですからね。日本と同じように、良いエリアには選手が集中するし、試合ともなると人的プレッシャーはハンパないですから」

――そこで『速いフィネス』が出番になる。

青木「そんなに単純なものでは…いくら速いと言ってもそこはフィネスなんで、ファストムービング系に比べたらまかなえるエリアは狭いわけです。これが日本なら、すでに蓄積したものもあるので、たとえ魚を見失っても、それを軸に探せてしまう可能性が高い。だから練習であまり煮詰めなくても、場合によっては試合当日に辻褄を合わせることができてしまうんですよ

アメリカはというと、ほとんどが経験値ゼロの湖なわけで、そこで魚を探そうと思ったら、ハードベイトのファストムービング系のほうが割合的に出番が多くなりますね」

これは参戦初年度のセントラルオープン開幕戦、トリードベントリザーバーで撮影したもの。規模は琵琶湖の約2.5倍。ショアラインには延々と立ち木が続き、しかもマッディ…。そんなレイクでのバス探しは、やはりクランクベイトなどハードベイトの巻きが中心になる。

【青木大介流フィネス物語2】に続きます。



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