Webメディアや雑誌、テレビやYouTubeなどでまことしやかに語られてきた「バス釣りのセオリー」。それを学ぶことでレベルアップできるはずが、実は逆効果になっているのかもしれない。まずは、バスアングラーなら誰もが見聞きしたことのあるフレーズを検証していこう。そんな目的で全32回+αの様々なバス釣りにまつわる「セオリー」の検証を、北大祐さんと木村建太さんの対談で贈る新刊ムック『僕たちのバスフィッシングに、セオリーは必要ない。』。
今回は「検証01『シーズナルパターンがバス釣りの基礎』なのか?」。よくいわれる「春爆」「秋爆」といった定説的な「シーズナルパターン」。どうとらえるべきなのでしょう。全文まるごとお届けします!
北大祐×木村建太、おふたりのプロフィール
【Profile】
北大祐(きた・だいすけ)
1982年石川県出身。ヒューマンフィッシングカレッジ卒業後、プロトーナメントの道へ。フィネス全盛期にありながら、クランクベイトやスピナーベイトなどハードベイトを多用するスタイルに活路を見出し、以降、国内最高峰カテゴリーJBトップ50において通算4勝、年間優勝2回、Basserオールスタークラシック3勝など、日本の主要タイトルを総なめにする。2018年に自身のブランド『ペイフォワード』を設立、ワンエイトやKITなどをリリース。2019年からはバスフィッシングのさらなる深奥を求めてアメリカでのトーナメント活動を本格化させている。
【Profile】
木村建太(きむら・けんた)
1982年京都府出身。10代からJBトーナメントに参戦するが、トップカテゴリー昇格を前にして渡米、FLWのコアングラーとしてエントリー(2005~2007年)。帰国後は琵琶湖でのガイド業やビワコオープン参戦などで注目を浴び、フロッグやパンチングなどのパワーゲームがトレードマークに。2013年からはバスマスターオープンにフル参戦、2021年にエリートシリーズ昇格を果たした。スリザークやバスターク、イヴォーク・シリーズなどルアーデザイナーとしても高く評価されている。2021年より、自身のプライベートロッドブランド『ウルフダウン』を始動。
バスの行動を季節で語りうるのはスポーニングシーズンだけ
――一般的に、バス釣りのセオリーと呼ばれるものの多くは、季節と関連付けて語られることが多いようです。だからこそ『シーズナルパターン』が重要で、それを学び、把握しておかなければいけない、とされています。
木村「んなわけない(笑)」
北「『毎年、この時期は間違いなくこうなるよ』と確実に言えるのは、産卵行動だけじゃないでしょうか」
木村「なかでも、スポーニングベッドに入った魚のサイトフィッシング・パターン。季節と釣り方をリンクさせて語れるのは、これだけだと思います」
――「水温が××℃になったらスポーニングが始まる」といったフレーズも、セオリーとしてよく見聞きするのですが。
北「水温はひとつの指標でしかないです。意外と重要性は低いですね」
木村「アメリカでよくあるのが、春に15℃ぐらいまで水温が上昇していたのに、極寒の雨でガーンと10℃まで落ちたりするケース。それでもムラムラしている魚がいればシャローに差してくる」
北「おそらく日照時間が大事なんだと思いますよ。具体的な数字はわかりませんが、積算温度(毎日の平均気温を合計したもの)が一定のレベルを超えたところで、バスは産卵行動に入るのだと思います」
木村「だから関西よりも九州のほうが産卵の始まるタイミングが早い。逆に河口湖なんかは初夏ぐらいまでスポーニングが続く。ただし浅いため池などでは地域にかかわらず、ガーンと水温が上がって3月ごろからベッドができたりすることもあります。これは例外かな」
潮回りの影響
北「あとは潮回りですね」
木村「釣りをしながらバスの動きを追っていると『この感じなら、次の大潮で差してベッドができるだろうな』というのがわかります」
――琵琶湖で言うと、それは4月ごろでしょうか?
木村「昔はそうだったんです。ところがそれも、年々遅れていっているんですよ」
北「最近だと5~6月がピークですね」
――もしや地球温暖化の影響?
北「というより、ヒトのせいかもしれません。4月に産卵していたバスが釣られまくった結果、そういう行動をするDNAを持った個体がどんどん滅んで、遅い時期にスポーニングする魚が残って現在に至る」
木村「常にアップデートしてますからね、バスたちも。20年前ならその『シーズナルパターン』が通用したのかもしれない。でも、それさえ理解していればずっと同じような方法で釣れ続けるとか、そんなことはありえないでしょ? 『シーズナル』がすべてなら、トーナメントの世界でもベテランが圧倒的に強いはず。だけど実際はそうとは限らない」
――ここまでの話をまとめると、『シーズナルパターン』といっても地域やフィールドごとに差があるから、季節とリンクさせて語るのはちょっと無理がある。さらに、かろうじて『シーズナルパターン』と呼べそうなバスの産卵行動でさえ、時代とともに変化していく。
木村「なかには完全なガセネタも混じってますからね。産卵前は『まずオスがシャローに差して、しばらくあとにメスが~』とか、よく言うじゃないですか。あれも実は……」
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『僕たちのバスフィッシングに、セオリーは必要ない』発売情報
過去の常識は非常識!? バス釣り脳をアップデートせよ!!
北プロと木村プロは、なぜセオリーの逆を伝えようとするのか。かつてセオリーとされた事柄のなかに、たくさんの誤解が混じっていたのではないか?
トーナメントプロとして活躍の場を本場アメリカへ移し、最先端を走り続ける北大祐と木村建太。次世代筆頭と言うべき2人が、半世紀にわたり日本で積み上げられたバス釣りのセオリーとウェブ上に溢れる釣果に結びつかない情報をバッサリと切り捨て、アップデートされた「現代のバスフィッシング様式」を語りつくす。
●発売日:2022年3月17日
●定価:1,980円(税込)
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