某誌勤務時代に「釣り場の徐霊」を試みた短期集中連載。その取材で訪れた有名心霊スポット、雄蛇ケ池(千葉県東金市)で霊との交信を行った結果、意外な結末が待っていたというお話。
●文:ルアマガプラス編集部
突如押し付けられた、釣り場の除霊という大命
今から10年ほど前、ワタクシが某誌の編集者として勤務していた時の話。
編集長「夏と言えば、怪談だよな。よし、お前ら釣り人の安全のためにも釣り場の除霊してこい」。
唐突に始まった釣り場の除霊企画。若手編集者二人がその企画を任され、釣り場としてはもちろん、心霊スポットでも有名な雄蛇ケ池へ向かったのです(深夜)。
釣り場としてはかなり魅力的な雄蛇ケ池
周囲が林で覆われているため、日陰が多く、昼間に行ってもそこそこ雰囲気のある雄蛇ケ池。冠水した木々やポンプ小屋が若干不気味ではあるが、シェード&ストラクチャーと捉えてしまうとおいしそうに見えるのは釣り人の性(笑)。
そんな雄蛇ケ池をめぐる心霊証言には諸説ある。
かつては自殺の名所でもあったため、誰もいないはずなのに視線を感じるとか、朝まずめの湖面に浮かぶ人の影を見たとか、駐車場で車中泊していたら急にエンジンが止まったなどありがちな話のほかに、某釣り雑誌のライターが「くそ釣れねー雄蛇ケ池め!」と暴言を吐いた後日、重症の痔で手術し、本人曰く「生死の境をさまよった」という話も・・・。
霊感もないし、霊を信じない若者がどうやって除霊をするべきか。
そんな雄蛇ケ池で除霊をするにも、困ったことに若手編集者の二人は霊感を持ち合わせていないし、その手の類を信じていない。除霊だけでなく、釣りにも言えることだが、対象物のだいたいの居場所を絞り込んでから戦略を立てることが効率の良さに繋がるわけで、霊感のない彼らにはこの広い雄蛇ケ池から霊を探すのはバスを釣るより難しい。
そこで安易ではあるが、裏に墓地がある堰堤で霊を探すことにしたそうです。
場所は絞った、問題は「やり方」である
雨がしとしと降る夜中に目標の場所へ到着した二人。
何度も言うように霊感を持ち合わせていないため、たとえ霊がいたとしても交信する方法がない。そこで思いついたのが「こっくりさん」だったのです。
この手の話を信じていない若手編集者二人は半笑いで「どうせ動かないし、オチどうする?」なんて話をしながら、ネットで調べた手順でこっくりさんを呼び出してみました。
「こっくりさん、こっくりさん、どうぞおいでください。もしおいでになられましたら『はい』へお進みください」
すると、驚くことに10円が「はい」へ動き出したのです。後輩編集者は「ちょっと、何動かしてンスか!」と先輩に言うと、「お前が動かしてんだろ! 冗談はやめろよ!」と声を荒げ、自分たちの意思ではない他の力が目の前で働いていることに驚きを隠せませんでした。しかし、動いたからにはインタビューをせざるを得ない。そこでこっくりさんに聞いてみました。
Q.さまよう霊の数は?
すると、ゆっくり10円玉が数字の方向へ動き・・・
A.3
を示しました。この堰堤だけで3人!? と戦慄が走りましたが、すかさず
Q.池全体で?
と問うと、
A.はい
という返答に意外と少ないと感じてしまった。
Q.釣り人に悪さをする霊の正体は人間?
A. いいえ
二人は冷静さを取り戻し、本来の目標である除霊に向けて質問を投げることにしました。
Q.なんの霊ですか?
A.ハス
後輩編集者は疑問に思いました。雄蛇ケ池に「ハス」なんていたか?と。もしくは「ハス(蓮)」なんかあったか?と。
しかし、先輩編集者はその答えに納得したようで、せっせと白装束を身にまとい、コンビニで買ったアジシオとワンカップで周囲を清め、九字切りしたのち、般若心経を唱えてその日の取材は終了したのです。のちに、出来上がった記事を見て後輩も納得しました。
霊の正体はソウギョに殲滅された、ハス(蓮)の怨念
実は雄蛇ケ池はかつて、一面ハスとカナダモで覆われた池だったようで、1980年代にソウギョを放流したことで水生植物は激減。2006年には再び繁茂した水生植物を駆逐するために、再びソウギョを放流したことで現在は一面がハスに覆われていたことが想像もつかないほどの壊滅状態になっているとのこと。
なるほど、これはストーリー的にもオチもあって面白い。しかし、実は彼らはひとつミスを犯していたのです。現場へ持っていったこっくりさんシートにはなんと濁点がなかったのです。つまり、霊の正体は「ハス」かもしれないけれど、「バス」または「バズ」だった可能性もあるわけで、その真相は未だ迷宮入りになったまま・・・。この話、嘘のようで本当のはなしですが、信じるか信じないかは・・・あなた次第です(笑)。
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