レンタルボートアングラーをメインに、全国の多くのユーザーに指示にされているレジットデザインのワイルドサイドシリーズ。今年、その上位機種であるヴァリアントモデルが誕生。このモデルのコンセプトと開発の経緯を、 鬼形毅さんに語っていただきました。
●文:ルアマガプラス編集部
レジットでデザイン発足とワイルドサイドの誕生のきっかけ
まず議題に上がったのはワイルドサイドの価格設定
――ワイルドサイドの上位機種という位置付けのヴァリアントモデルですが、どのような経緯で開発に至ったのでしょうか?
鬼形「そうですね、まず今回はロッド製作のコストのところを詳しく説明したいと思います。 2014年にレジットデザインをスタートし、2015年にワイルドサイドをリリース。ワイルドサイドを作るに当たって、ロッドをどの価格帯にして、ブランドの位置づけをどうするかというのを徹底的に議論しました。いわゆるハイエンドの価格帯してエキスパート向けにするのか、あるいは手に取りやすい価格帯にして多くの人の手にわたるようにするのか…。
自分は前職ではハイエンド系のロッドを手がけていて、飯高(※レジットデザイン取締役)は広い価格帯のロッドをプロデュースしていたんで、市場の予測もある程度はできていた。そこで、最初はハイエンドでいこうかなという話もありました。ハイエンドモデルのほうが、コスト計算は楽なんです。自分たちの好きなもの作っていき、必要なコンポーネントを積み上げていった結果で値段を決めればいいわけですから。コストを抑えるということを考えなくていいんで」
――ロッドをどの値段帯で売るか…。これは、メーカーにとってはかなり重要な点ですよね?
鬼形「はい、これは物を売るという点でかなり大事な部分です。市場全体の話をすると、5万円の竿と2万円の竿では、本数でいうと約3倍、2万円の竿が売れていると言われている。6万円、7万円の竿を作って、プロや同業者から高評価を得たとしても、一般のアングラーからは手に取ってもらえなかったりする。高すぎて、そもそも購入の選択肢に入らない。
そういったことを考えると、ロッドメーカーを立ち上げて、無名の状態でユーザーに触ってももらえないのはよくないなと思ったんですよね。だからと言って、2万円アンダーまで価格を落としてしまうと、ブランドの体力的に他のメーカーに負けてしまう。そこで決めたのが、3万円クラスという価格です」
――ワイルドサイドは定価で3万円を切る値段。ハイエンドに手が届かないというユーザーにも訴求できる価格ですね。
鬼形「最初は『3万円は中途半端だよね』ってたくさん言われました。2万円アンダーを買っている人にとっては高く感じるし、3万円のロッドを買う人はもう1〜2万円出してハイエンドを買うんだからって。当時3万円のロッドは売れないって言われてましたから。
でも、僕たちは自分のブランドのファン、ロイヤルカスタマーを作りたかった。1本、2本とロッドを揃えてくれる顧客ですね。そうなると価格は安すぎても高すぎてもだめ。それで3万円というところに落ち着いたと。この価格設定がマッチしたのか、ふたを開けてみれば多くの方に受け入れてもらえました。自分や飯高が作るということで、当然高いものがくると思ってた人も多かったようで、それで意外にも安かったというギャップもあったのかもしれません」
――その後は一気に市民権を得て、ワイルドサイドの人気はどんどん広まって印象があります。レンタルボートレイクでは、ワイルドサイドを複数本積んでいるアングラーを見かけたり…。
鬼形「1年目から多くのアングラーに認められて、アイテムを増やしたり、マルチピースも出してみたりと、ブランドとして成長していきました。“レジッター”と言われるロイヤルカスタマーも増えてきました。先日、亀山ダムでレジットデザインのロッドを持っているアングラーのみで行われるオーナーズミーティングを開催。そこでレジットのロッドを何本持っているか、アンケートを取りました。1本の人もいれば、たくさん持っている人もいるんですが、平均すると一人11〜12本でした。ワイルドサイドで揃えてくれる人も本当に多く、ブランドとしても地位を築けたなと思いました」
数値よりも大事なのはフィーリング。『なんだか使いやすい』という感想が一番嬉しい
チタントルザイトガイドにすることで、ロッド設計が一から変わる
――そして、3万円クラスのロッドが認められてきた中で、あえてハイエンドにも挑戦していくと。
ワイルドサイド ヴァリアントモデル
鬼形「最初からハイエンドのロッドは作りたかったんです。それで、5周年記念にハイエンドモデルを2本作りました。4万円代中盤でしたが、記念モデルということもあり、それなりに受け入れられました。それでヴァリアントモデルを作る気持ちが固まりました。
1回だけの限定モデルということではなくて、レギュラーアイテムとしてのハイエンドスペックが、自分が使う用としても何アイテムか欲しいよねということで、ヴァリアントがスタートしたんです。それで、ガイドを乗せ換えたり、ブランクスの長さを調節したりして、アイディアを練っていき、今年ようやく4本出来上がったという感じです」
――ワイルドサイドとヴァリアントモデルの大きな違いは、まずはガイド設定。やはりガイドをステンレスからチタントルザイトにすると変わる?
鬼形「やはりチタンフレーム+トルザイトリングは軽い、それが大きなメリットです。ステンレスフレーム+SICリングが実釣においてマイナスかというとそんなことはない。
ただ、重量差はいかんともしがたい。さらに言えば、トルザイトとSICでは同規格なら内径がトルザイトの方が大きくできる。つまり、同規格なら軽く、内径も大きいので糸抜けもよい。
軽いので敢えてワンサイズ大きい規格を載せてもいい。全体の自重や糸抜けなど、ロッドの使用感に大きな影響を与えるパーツであるガイドとして、選択の幅が広くなったとも言えます。
例えばベイトフィネスの、『ワイルドサイド ヴァリアントWSC60L/TZ』のトップガイドには4mmのガイドを付けていますが、通常のワイルドサイドのベイトフィネスのトップガイドにも4mmを採用しています。だけど、トルザイトのほうが内径が大きいので、ラインの通りが良くて飛距離も出やすかったりというメリットが生まれます」
鬼形「スピニングはガイドのフレームが大きいので、もっと差は顕著に現れます。そこで、ガイドの重量差を考慮したアクション出し、ブランクスの設計、糸抜けの良さを、味付けしていくことができると。実際に使ってみると、やはり差を感じますね。ハイエンド化することで、パーツのコストに気を使わなくていいのは、バランスよく使えば単純にロッドのパフォーマンスアップにつながりますよね」
――そして、ブランクスもヴァリアントモデルならではの味付けが施してあると。
鬼形「2015年からリリースして、7シーズンになるワイルドサイド。その中にも、初期と後期ではよりブランクスは進化している。ヴァリアントには、T1100Gという素材を使っていますが、ワイルドサイドにもT1100Gを使っているモデルもあったりする。だから、ブランクスは、理想のアクションを出すための適材適所で、どれが一番いいとかはないんです。カーボンのトン数の数値が高いほど、ロッドは良いと思われていますが、それはやりたい釣りによって変わってきますから。クランクベイトみたいに重いけど粘りがあるピュアグラスがいい釣りだってあるわけですから」
鬼形「今回の4機種はT1100Gを多めに使ったりはしていますけどね。T1100Gは、軽くてシャープ、それでいて粘りもあるというブランクス。そこでアラミド繊維で補強することで粘りがアップ。シャープにするだけならアラミドはないほうがいいけど、よりしっとりした味わいになる。なので、メインの素材を軽くして、アラミドで補強してあげるという手法をとっています。だから想像以上にパワフルな竿になっていますよ」
目指しているのは豊かなバスフィッシングライフに貢献すること
――新しい素材が出てきても、それは適材適所だし、その特徴を理解していないと、良いロッドはできないというわけですね。
鬼形「そうですね。でも、一般ユーザーにとって大事なのは数字や理屈ではなくフィーリング。メーカーが素材自慢ばかりしていても意味がないんです。素材がいいからって、その釣りに合っているかは別の話。レジッターの人の感想で、「なんだかバレなくなった」「なぜだか飛ぶようになった」、「なんか使いやすい」とか、そういうのを言われると本当に嬉しんです。僕が目指しているのは、そういう感想を言ってくれること。『なんとなく、良い竿だよね』って。それでいいし、それがいい。
ヴァリアントも、決してとんがった難しい竿ではありません。自分は特別なアングラーではない。キャストがめちゃくちゃに上手いわけじゃないし、めちゃくちゃテクニックがある人間じゃない。そんな僕でも使いこなせる竿がヴァリアント。誰でもできる、誰でもメリットを感じられる竿にしていますよ。細かい差を追求してますけど、ピーキーで使いにくいというわけではないです。あくまでワイルドサイドの中のセルフチューン、アレンジを変えてみたというようなロッドですね」
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