水面で中空フロッグを踊らせるメソッド“Froggin’(フロッギング)”は日本で独自の進化を遂げた。そのムーブメントを牽引する立て役者のひとり、菅沼史朗が「遊びの精度」を上げるために作り出したフロッグ専用ロッド。それが『GLOK Gen2』である。
●文:ルアマガプラス編集部
菅沼史朗(Shiro Suganuma)
1979年静岡県出身。中学生時代からNBCジュニアトーナメントに没頭、大学卒業後に渡米してFLWのコアングラーを経験。imaでダビートなどの開発を担当したのち、2017年に「Deep Forest」を立ち上げてミクラ・キュー・エイトをリリース。全国のフロッグジャンキーから熱狂的な支持を受けた。
現代フロッギングの「精度」
筋金入りのフロッグ使いでなくとも、バスアングラーなら「ミクラ」「キュー」といった名前を耳にしたことがあるはず。コンパクトフロッグのひとつの完成形として高い評価を受けているこれらのフロッグは、ルアーデザイナー・菅沼史朗が2017年に立ち上げたルアーブランド“Deep Forest(ディープフォレスト)”のプロダクトである。
かつてトーナメントの場にも身を置いていた菅沼さん。20代のころには単身アメリカに渡ってFLWのコアングラーを経験、その後は大手ルアーメーカーで開発を担当。さまざまな形でバスフィッシングと関わってきたが、なかでもいちばんのめり込んだのが「フロッギング」だった。
菅沼「フロッグって、ほかのルアーのようにレンジを入れることもできないし、汎用性も低いですよ。だけど『これだけで釣るんだ』と決めてしまえば、やることが明確になるから、そこからどんどん世界が広がっていく。結局は自分ひとりの遊びなんだけど、その精度をどんどん高めていって自分だけのサカナを獲りにいくのが面白い。月並みな表現かもしれませんが、自分の好きな世界観のなかで遊ぶ楽しさを、フロッグを通じて伝えていきたいんです」
遊びの精度を上げること。フロッキングという唯一無比のスタイルにおいて、“精度”に関する役割の多くは「ロッド」に委ねられている。
シャローカバーへの正確なキャストや、トレースコースのコントロールは言うまでもない。意図したとおりにフロッグを操る操作性、PEラインを用いてもトラブルレスであること、貴重なバイトを確実にフックアップに持ち込む性能など、求められる能力は多岐にわたる。
だがその一方で、フロッギングにのめり込めば込むほど、この釣りにふさわしい「専用ロッド」の不在という問題に菅沼さんは直面することになる。
菅沼「現代的なフロッギングの歴史は意外に浅い。オープンウォーターで首を振らせて使うメソッドがアメリカで確立されたのは、ゼロ年代の前半でした。それが日本にも伝わってきて、7~7ft半ぐらいのミディアムヘビーを使うものだ、と当初は言われてた。だけど実際に関東のリザーバーや霞ヶ浦水系で使い込んでいくと、そんなスペックじゃ扱いづらくてしょうがないんです」
環境もシチュエーションも違う日本のフロッギングには、それ相応の専用ロッドが必要なはず。菅沼さんが自分なりの解釈でロッドを作りはじめたのは、しごく当然の流れだった。
心臓部を一新した第2世代『GLOK Gen2』
今年5月に発売された“GLOK Gen2”シリーズは、ディープフォレストが提唱する「現在の日本のフロッギング」に最適化した専用ロッドである。「Gen2」(第2世代)の表記からもわかるとおり、2021年に発表された初期GLOKの後継機種ではあるが、コンセプトや搭載された機能にはかなりの隔たりがあるという。
菅沼「前回のモデルは、極端にいえばクラシックカーだったんですよ。アメリカ製のブランクスを採用して、ガイドセッティングもややオールドスクールで、装飾の少ない無骨なデザインに仕上げた。もちろん現代的なフロッギングロッドにはなっているけれど、既存のブランクスを使っているぶん、どうしても自分のイメージを反映しきれないところが残っていたんです」
トータルのデザインこそ初期モデルを踏襲しているが、“GLOK Gen2”の中身はまったくの別物といっていい。まず、オリジナルのブランクスを一から設計。PEラインの4~5号で使うことを前提に、ガイドセッティングも現在考えうる最先端のスペックで構築した。
菅沼「たとえば、フロッグが障害物にスタックしたときの『ほぐし感』は、かなり向上していると思います。テキサスリグ用のロッドみたいにティップがきれいに入りすぎると、挟まったフロッグがなかなか外れない。そこでグッと力を込めてしまうと、せっかくキャストを決めたスポットからフロッグが移動しすぎたり、カバーを壊してしまったりする。些細なことに思えるかもしれませんが、昨今の厳しいフィールド状況ではひとつひとつのアプローチが超重要。フロッグをやり込んでいる人なら『ほぐし感』の大事さがわかってもらえるはずです」
トヨタの名車「2000GT」の外装を完全再現しつつ、機関面などを最新鋭のスペックに置き換えた「3000GT」というレプリカモデルがある。“GLOK Gen2”もそういうことがやりたかったんです、と菅沼さんは笑う。
DF GLOK Gen2 630MH ‘TECHNICAL’
【スペック】
- ルアーウエイト:1/4~3/4oz
- ライン:10~25lb/PEラインMAX65lb
- 価格:57,200円(税込)
フロッギングに欠かせない正確無比なアプローチをサポートしてくれる一本。コンパクトフロッグからレギュラーサイズまで対応、操作性の高さを生かしてバックハンドやフリップキャストも快適にこなせる。
DF GLOK Gen2 650MH ‘Versatile’
【スペック】
- ルアーウエイト:1/4~3/4oz
- ライン:10~25lb/PEラインMAX65lb
- 価格:57,200円(税込)
コードネームのとおり、フロッギング専用ロッドの中心的スペック。一定のディスタンスが求められる近年のハイプレッシャーフィールドでも活躍の場が多い一本だ。
「630MH/650MH」それぞれの特性と用途
3機種がラインナップされている“GLOK Gen2”の根幹をなすのが、6ft3inおよび6ft5inのMHモデルだ。これは初代GLOK、さらにさかのぼれば、菅沼さんがプロショップに依頼して自分用のロッドを作っていた時代から変わらないスペックである。
菅沼「水面までの高さがないレンタルボートで、なおかつコンパクトフロッグを正確に投げ込むには6ft3inというレングスが理想的。この考えは10年近く前から変わりません。ではなぜ650MHが必要なのかというと、『もう少しディスタンスを取りたい。でもキャストも決めたい』といった局面もあるから。クリアウォーターなら当然ですし、たとえば霞ヶ浦水系のアシを釣っていくときでも、最近はディスタンスを取ったほうが食う。ひと昔前のようにピッチングで撃っていくだけでは獲れない魚がいます」
わずか2inの差と侮ってはいけない。「短いロッドでがんばって遠くにキャストを決める」のと「レングスに余裕のあるロッドで同じ距離を投げる」では、後者のほうが明らかにアキュラシーが高まるからだ。離れた位置からしっかり掛けるのにもロッドの長さは有効だし、食ったバスが手前に走ってくるときも(ポストスポーン期によくあるという)、6ft5inのほうがフックアップさせやすい。
菅沼「この2本を比べると、630MHのほうがややレギュラーテーパー寄り。曲がりの支点がベリー側にあるので軽いものを背負って投げやすいのはたしかですが、650MHがレギュラーサイズ用、という使い分けを提案したいわけじゃないんですよ。ウチのフロッグでいうと、『エイト』はウエイトが13.5gあってコンパクトサイズではないですが、僕は630MHで投げてます。ティップを下方向に振って、スライド幅が長いドッグウォークをさせるには、この短さがちょうどいいんです」
さて、ここまではショートレングスの2機種を紹介してきたが、“GLOK Gen2”にはもうひとつ「680XH」というアイテムがある。これは初代GLOKには存在しなかったモデルで、ヘビーカバー専用機を想起させるスペックではあるのだが、そこはこだわりの強い菅沼さんのこと。単なるパワー違いの枠に収まらない1本として仕上げてきた。「The Mighty」と名付けられたこのロッドについては、後編で詳しく紹介しよう。
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