近距離をスピーディーにチェックしていけるフリッピングは、マッディシャローを攻略する上で欠かせないテクニック。一見単純な作業の繰り返しに見えるフリッピングだが、人よりも釣っていくコツは存在する。その釣れるフリッピングの極意を、ケイテック代表の馬路久史さんに早春の印旛沼で実践してもらった。
●文:ルアマガプラス編集部
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バスにこちらの存在を気取らせない それがフリッピングの強み
釣りがシームレスに続くから圧倒的に効率が高い
フリッピングを日本に広めたのはケイテックの初代代表、故・林圭一さん。アメリカのバスプロ、故・ディー・トーマス氏から教わったテクニックを日本に持ち帰り、牛久沼で実践したことがきっかけで、フリッピングは日本のバス釣り界に浸透した。それが1980年代初頭で、そこから変わらず同じスタイルで現在でも残っている。ずばり、フリッピングの強みとは?
「まずキャスト数が増やせる点にあります。ピッチングの場合は、ルアーを手に持って、リールのクラッチを切り、キャストしてルアーが着水したらクラッチを戻して…、という動作になる。フリッピングの場合、クラッチも切らないし、リールも巻かない。すでに出ているラインを手で調節するだけのキャスト方法だから、次のキャストまでの動作がシームレスなんですね。なので、アプローチの手数をどんどん増やしていくことができるんです。そして、振り子の要領で低弾道でルアーを送り込んでいくので、アキュラシーが高いし、着水音を抑えることもできます。シャローカバーに魚が入っている状況なら、ほかの釣りでは替えがきかないくらいの強い釣法になりますね」
リールのクラッチのオンオフがない、これもフリッピングが釣れる理由だという。
「以前クリアウォーターで同じようなワーミングの釣りのテストをしていたときに、バスがルアーを見にきてバイトしようかどうしようか迷っていたんです。そして、リールのクラッチを戻したら逃げてしまったということがありました。ときにはカチッというクラッチを切る音や振動すらバスは嫌うことがあると実感しましたね。技術の進歩でロッドやラインの感度が上がっているということは、バスにもこちらの情報が伝わりやすくなっていると思うんです。フリッピングはクラッチのオンオフでバスに警戒心を与えることはないので、ほかのキャストよりも繊細に誘える釣りといえます」
バスにリールのクラッチ音すら気取らせない超フィネスなアプローチ方法、それがフリッピングだ。
タックルセッティング
ロッドはナナロク、リールは同一モデルのハイギアで統一
ロッドはケイテック76シリーズおよびF-SPEC。リールはベイトフィネス用のハイギアモデル。ギア比が高いほうが、魚を掛けたあとすぐにカバーから魚を引き離すことができる。
「タックルはできるだけ軽くしたいので、軽いベイトフィネス機をチョイスしています」
フリッピングの所作
フリッピングの有効長は約3m
ティップからリールまでの長さプラス、ロッドを持つ反対の手でラインを引き出した分が、フリッピングの有効長。
「リールの位置までルアーを垂らして、ルアーをその位置から動かさないように、クラッチを切ったままもう片方の手で最大までラインを引き出す。これでフリッピングの準備完成です」
千葉県 印旛沼
岸のほとんどがアシ・ガマに覆われており、カバー撃ちをするには持ってこい。近年は難易度が高くなっているが、春には2kgオーバーや3kg近い魚も期待できるまだまだロマンのあるフィールド。印旛沼を攻略する上でフリッピングは必須テクニックだ。今回はふな一ボートから出船。
●取材協力:
ふな一、モノプールMTM
「このキャストで釣れるかもしれない」の連続、だからワクワクが持続する
フォール中のラインは張らず緩めずを意識して
ルアーをアシ際に入れたら、ボトムまでフォール。ボトムでひと呼吸ステイを入れたらあとは回収と、1投にかける時間は短い。
「フリッピングの1番誘いとなるアクションはフォールです。そのフォール一発でいかに食わせるかという釣りですね。だいたい、ルアーを入れた場所の半径60cm以内にいるバスには気付いてもらえる、そんなイメージで釣りをしてます。着水したら、ラインを張らず緩めずの状態でフォールさせる。ラインを張りすぎるとカーブフォールしてしまうし、ラインがたるみすぎているとバイトが取りにくい。ピックアップは、ルアーをそうっと持ち上げて食っていないか確認してから回収するといいですよ。あとは、その日のコンディションによって、フォールスピードを上げたり、ボトムで少し待ってみたりと、いろいろ調節しながら釣っていってみてください」
バイトはどのように出る?
「手元にコンときたり、フォール中にラインが走ったり、ボトムからルアーを持ち上げたときに違和感があったり、いろいろですね。バイトを感じたらすかさずフルフッキングしましょう。この瞬間もフリッピングの醍醐味です」
フリッピングはカバーにルアーを入れる毎に新たなバイトチャンスが期待できる、常に気が抜けない釣りだ。
「だから、毎投ワクワクするんです。ルアーがカバーに入る度に、次はくるもしれないとドキドキする。釣りに没頭してるから、フリッピングは時間が過ぎるのが早く感じますね(笑)」
ボートの流し方
風下・下流側から操船するのがカバー撃ちのセオリー
ボートは風下、流れがあるときは下流側から流していく。
「そのほうが前進のペースが自由にできます。流されながらやると、止まりたいときに止まれなかったり、速度調整が難しいんですよ。あとは、カバーと一定の距離を保ちながら、静かに操船することが大事です」
フリッピングのお供たち
パドリンビーバー(ケイテック)
アクション
フリッピングはフォール一発で決める あとは手数で勝負
フリッピングでルアーをアシ際に入れたら、ボトムまでフォール。ボトムでひと呼吸ステイを入れたらあとは回収。シェイクをしたりというアクションを加える必要はない。「フォール一発でいかに食わせるかがフリッピング。あとは手数で勝負ですね」。
モデルⅠ Ver.2.0 1/4oz(ケイテック) フレックスチャンク・ミディアム(ケイテック)
カバークリーパー 5.8g(エバーグリーン インターナショナル) フレックスチャンク・スモールミディアム(ケイテック)
ウォブリン フィネス・プロト(ケイテック)
マッディでもクリアウォーターと同じように繊細に接するべし
とにかく静かに丁寧に、それがフリッピングの極意
印旛捷水路の最北部、北印旛沼へ広がる一歩手前のエリアに狙いを絞った馬路さん。本湖のシャローでスポーニングに入ろうとしているバスが、水路内で待機していると期待してのエリア選択だ。青く色付き始めたアシの新芽のまわりには、ひと足早くコイやフナなどがもじっている。馬路さんの予想通り、パドリンビーバーの3/16ozテキサスリグでグッドコンディションのバスをキャッチすることに成功した。
馬路さんのフリッピングの一連の動作はとても静かで丁寧だ。それはルアーのアプローチだけでなく、釣り全体の動きに現れている。エレキの操船は清流を進んでいるかのようにとてもスムース。デッキからロッドを持ち上げるといった動作も、物音を立てないように注意を払っている。それは、バスに余計なプレッシャーを与えたくないから。
「今はマッディシャローだから魚は見えませんが、これがクリアウォーターで魚が見えていて、同じ距離で釣りをしているとしたら、エレキの操作やキャストなどは細心の注意を払いますよね? だから、マッディシャローでも魚が見えているのと同じようにプレッシャーを与えないように釣りをすることが、釣果を上げるコツだと思います」
フリッピングは、ルアーの種類の違いや、カラーの差で食う食わないというよりも、アプローチの丁寧さで差がつくという。
「フリッピングはキャストで食わせる釣り。だから、より丁寧に、正確に動作を繰り返したほうがより釣れます。先行者がいるストレッチを後ろから流しても、釣れるチャンスが残っていたりします。動作のテクニックが釣果に直結する。それってすごくバス釣り的だなと思いませんか?」
アシの狙いどころ
まずはサーチしやすい手前側を重点的に狙う
ルアーを入れるのはなるべくアシの根が太そうな場所、アシの葉が複数重なっているところを重点的に狙うのがおすすめ。アシの奥行きが広い場合は?
「自分の場合は、まずは手前側を撃って反応を見ます。それで反応がなければ、次は奥のほうと狙いを変えていきます」
フリップの極意
ルアーはアシに極力当てないように
ルアーがアシに当たってガサガサ動くと、そこにいるバスに鳥などの外敵が来たと思わせてしまう可能性がある。なので、ルアーのアプローチは極めて静かに。
「ルアーをアシに当てずに、スッと着水させてください。丁寧に静かに入れられるかどうか、それで釣果に雲泥の差がつきます」
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