〈初心者の釣り〉“ヤリイカ”の生態/釣りシーズン/釣り方/仕掛け/食べ方【冬の夜に煌めく海の幸、繊細なアタリと極上の味覚】

●文:ルアマガプラス編集部

ヤリイカとは?

ヤリイカは、ツツイカ目ヤリイカ科に属するイカの一種。その名の通り、体の先端が槍のように尖っているのが大きな特徴だ。ケンサキイカと姿が似ているが、ヤリイカは触腕(2本の長い腕)が短く、胴体に対するヒレの比率が小さい点で見分けられる。上品で繊細な甘みを持つ身はとても美味で、「イカの女王」とも称される。寿司ネタや高級料亭で扱われることも多く、釣りのターゲットとして、また食の対象として高い人気を誇る。

釣りをしたことがない方でも一度は食べたことがあるだろうヤリイカ。

ヤリイカの生態

日本の沿岸域に広く分布し、水深50m~100m前後の砂泥底を好む。寿命が約1年という“年魚”であり、秋に生まれた新子の群れは成長しながら回遊し、冬から春にかけて産卵のために沿岸の浅場へ接岸する。この産卵期が、ヤリイカ釣りのハイシーズンとなる。夜行性で、日中は深場でじっとしていることが多く、夜になるとベイトを求めて活発に活動する。小魚や甲殻類などを捕食する肉食性である。

お寿司屋さんの生簀水槽で生きたヤリイカが見られるかも。

ヤリイカの釣りシーズン

ヤリイカは秋から春にかけての長い期間狙うことができるが、釣れるサイズや釣り方によってベストシーズンが異なる。

秋シーズン(9月~11月)

その年に生まれた「新子」と呼ばれる小型のヤリイカが数多く釣れるシーズン。船からのイカメタルゲームや、堤防からの小型エギを使った釣りが人気となる。サイズは小さいものの、群れの規模が大きく、数釣りが楽しめるのが特徴だ。

冬~春シーズン(12月~4月)

産卵を意識した大型のヤリイカが接岸する、いわゆる“パラソル級”と呼ばれる大型が狙えるハイシーズン。とくに日本海側ではこの時期の船釣りが風物詩となっている。産卵のために浅場を群れで回遊する時期でもあり、堤防からの電気ウキ釣りがもっとも盛り上がる。身の厚み/甘みともに最高になる時期であり、多くの釣り人がこのシーズンを待ち望んでいる。

ヤリイカの釣り方

ヤリイカは船からも堤防などからも狙うことができる。夜行性のため、いずれの釣り方も夜がメインとなる。

陸からも船からもヤリイカを狙う場合は夜釣りが一般的。

イカメタル

船から集魚灯を焚いてヤリイカを狙う、近年とても人気の高い釣り方。「メタルスッテ」と呼ばれる鉛製のルアーと、「ドロッパー」と呼ばれる浮きスッテや小型エギを組み合わせた仕掛けで、繊細なアタリを取って掛けていくゲーム性の高さが魅力だ。ヤリイカは基本的に一貫してボトム(水底)を狙うため、数釣りよりも一杯一杯の価値を楽しむ釣りが展開できる。

船から集魚灯を焚いて狙うイカメタル。繊細なアタリを掛けるゲーム性の高さが人気。

仕掛け例

  • ロッド: イカメタル専用ロッド(6ft~7ft前後)
  • リール: ベイトリール(水深が分かるカウンター付きがとても有利)
  • ライン: PEライン 0.4~0.8号
  • リーダー: フロロカーボン 2~3号(8lb~12lb)を1m~1.5m
  • 仕掛け:
    • メタルスッテ: 10号(約37g)~25号(約94g)。潮の速さや水深に応じて重さを変える
    • ドロッパー: 浮きスッテや1.8号~2.5号の小型エギを、スッテの上30cm~1mほどの位置に1~2個付ける

電気ウキ釣り

堤防や磯から手軽にヤリイカを狙える、古くから人気の釣り方。夜の海に浮かぶ電気ウキが沈む瞬間は、この釣りの醍醐味と言える。エサを巻いた専用の「テーラー」やエギを使って狙う。

仕掛け例

  • ロッド: 磯竿 1.5~2号 4.5m~5.3m
  • リール: スピニングリール 2500~3000番
  • ライン: ナイロンライン 2~3号
  • ウキ: 電気ウキ 3~5号
  • 仕掛け: ウキ止め/シモリ玉/電気ウキ/からまん棒/オモリ/ヨリモドシの順にセットし、その先にハリスを結んでエサ巻きテーラーやエギを接続する
  • エサ: キビナゴ/鶏のササミ/サンマやサバの切り身などをテーラーにワイヤーで巻き付けて使用する
  • タナ: 2ヒロ(約3m)~竿2本分(約10m)まで、その日の状況に合わせてウキ下の長さを調整する

ヤリイカの食べ方

上品な甘みと柔らかい身質が特徴で、どんな料理にも合う万能な食材だ。鮮度が落ちやすいため、釣った後はすぐに氷で締めるのが美味しく食べるコツ。

刺身

釣りたてのヤリイカでしか味わえない最高の食べ方。透き通った身は見た目にも美しく、コリコリとした食感と濃厚な甘みは絶品の一言に尽きる。細切りにしてイカそうめんにするのも良い。

透き通るほど新鮮なヤリイカの刺身は釣り人でないと食べる機会が少ない。

天ぷら

熱を通すことで甘みがさらに増し、身が驚くほど柔らかくなる。サクッとした衣とふんわりとしたヤリイカの身のコントラストがたまらない。ゲソやエンペラ(ヒレ)も美味しく食べられる。

ヤリイカの天ぷらも定番料理の一つ。身を余すところなく美味しく食べられる。

煮付け

甘辛い煮汁でサッと煮付けたものは、ご飯のおかずにも酒の肴にもなる定番料理。子持ちのヤリイカであれば、卵の濃厚な味わいも楽しめる。

沖漬け

船上で釣れたてのヤリイカを、醤油/みりん/酒などを合わせたタレに生きたまま漬け込む豪快な漁師料理。中までタレが染み込んだヤリイカは、最高の珍味だ。

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