【軽い! 強い! 静かな革命が起こる!】ベイトリール『ゼノン』がいよいよ発売! その特徴を開発者に独占インタビュー!



ついに登場するアブガルシア『ゼノン』のベイトキャスティングリール。スピニングリールでは大きな話題を呼んでいたが、ベイトの実力はいかに……!? 気になるその特徴を開発者に独占インタビュー!

ゼノンが3機種である理由

ゼノン MG7/MG7-L

  • 自重:135g
  • ギア比:7.5:1
  • スプール形:30mm
  • 最大巻取長:71cm
  • 最大ドラグ力:4kg
  • ラインキャパシティ:14lb85m、PE1.5号150m
  • ボール/ローラーベアリング:9/1
  • 価格:49,500円(税込)

ゼノン LTX/LTX-L

  • 自重:150g
  • ギア比:8.3:1
  • スプール形:30mm
  • 最大巻取長:78cm
  • 最大ドラグ力:5kg
  • ラインキャパシティ:8lb50m、PE1号100m
  • ボール/ローラーベアリング:9/1
  • 価格:47,850円(税込)

ゼノン ビースト6/ビースト6-L/ビースト9/ビースト9-L

  • 自重:195g
  • ギア比:6.8:1/9.5:1
  • スプール形:32mm
  • 最大巻取長:68cm/95cm
  • 最大ドラグ力:5kg
  • ラインキャパシティ:16lb100m、PE3号100m
  • ボール/ローラーベアリング:9/1
  • 価格:47,850円(税込)

これまで幅広く展開されていたレボシリーズに比べると、明らかに少ないラインナップの『ゼノン』。

そこにはどの様な意図が有るのだろうか?

「開発段階ではもっと多かったのですが、どんどん絞っていった結果、MG7、LTX、ビーストの3モデルとなりました。MG7のみ、マグネシウム素材を使用した軽量モデル。淡水オンリーですが、バスフィッシングにおけるオールラウンドモデルとして開発しています。カバー撃ちから巻き物まで、このリールさえあればかなり幅の広い釣りに対応できるはずです。そこからさらに軽いルアーを投げたいのなら、シャロースプールにセラミックボールベアリングを組みあせたLTX、もっと重たいものを扱いたいならより堅牢で糸巻き量の多いビーストと、リール選びに困らない、わかりやすいラインナップになっています。なお、LTXとビーストはソルトウォーターにも対応します」

日本のバスフィッシングシーンのメイン層であるオカッパリユーザーが迷うことなく選びやすいモデルを揃えつつ、アブガルシアが得意とするソルトウォーターベイトフィネス、そして大型ルアーを用いたシーバスゲームやロックフィッシュ狙いの釣りまで、要点をしっかりと抑えているわけだ。

「それからお問い合わせが多いので予めお伝えしておきますと、MG7とLTXはスプール径が同一の30mmですので、スプールに互換性があります。LTXの堅牢なボディに太めのPEラインを巻いて使ったり、MG7の軽量ボディにシャロースプールを組み合わせてよりフィネスなルアーを使ったり……といったことができるわけです」                                 

編集部ピックアップ:ハンドルノブ

担当編集が個人的に気になったのが、ゼノンのベイトリールモデルで初めて導入される新しい『ハンドルノブ』だ。

「レボシリーズのハンドルノブには軽くて加工製の良いEVA素材を使用してきましたが、唯一の欠点が薄さを出せないという点でした。そこでゼノンにはエンジニアプラスチックとエラストマーを組み合わせることで、これまでにない薄いエッジをもったハンドルノブを搭載。従来よりも繊細な操作性を実現しています。中空なので重量面においても懸念はありませんよ」                                                                                                                                                                    

ゼノンの基本コンセプト

ところでスピニングモデルの登場時にすでに語られている部分ではあるが、そもそもゼノンとはどういったリールなのだろうか。

「グレードで言えばレボシリーズのさらに上。と言っても、レボシリーズの延長線上にある高位リールではなく、次の世代につながるような、まったく新しいものを作りたかったんです」

そうして誕生したゼノンの根幹にあるものは、スピニングでもベイトでも変わりはない。

「簡潔に言うならば、軽量だけど強いリール。決して軽量化戦争をしたいわけじゃないんです。それに軽くするだけなら素材を薄くしたり、部品を小さくしたり軽い素材を使えば決して難しい話ではありませんからね。目指したのは強度と軽さの両立。そのために注目したのが、リールのハウジング(外装)でした」

リールの構造を改めて見直した結果、実は無駄なスペースが多すぎることを発見。その部分を詰め、あるいは削ぎ落としていくことでたどり着いたのは、コンパクトで贅肉や余計な空洞の無い、密度の高さだった。

「結果としてスピニングのギアボックスが左右非対称になったりと象徴的なものもできましたが、それは目的のあるデザインではなく、軽量化と強度を両立させたことによる結果でしかありません。もちろん、ベイトリールも同様です。120g台のリールは作ろうと思えば作れますし、レボでももっと軽いリールは有りました。ですがゼノンなら軽さに加えてかつてなかったほどの堅牢さが共在している。それは部品を極限まで薄くするわけでもなく、しかも強度があれば有利なパーツは大型化して更なる強度アップを図っているからなんです。例えば全体的にコンパクトになっているゼノンですが、ドライブギア(ベイトリールの根幹となる大型ギア)はレボのそれよりも大型化させることができました」

ゼノン(左)とレボ(右)のドライブギア比較。

「それこそがゼノンなんです。ただし、高い値段に強みはありません。あくあでも釣りをするための道具として、新しい形状や機能を極めて、釣りを快適にするのが目的なのです」

エルゴノミクスデザインボディの追求

レボシリーズの時点からですでに、ベイトリールのコンパクトさという点において他のメーカーから頭ひとつ抜けた印象の合ったアブガルシアだが、ゼノンにてそのその優位性は更に確固たるものとなる。

「使い手のことを考慮し、最適化されたエルゴノミクスを追求していますからね。例えばコンパクトであるという要素は何も手の小さな人にありがたいだけではありません。人間の手が何かを握り込むとき、手首を効率良く使うことが出来るのはより小さいもの。例えばソフトボールと野球ボールを比べてみてください。スナップを使って投げやすいのは野球ボールですよね? これはルアーフィッシングのキャスティングに通ずる要素なんです」

「さらにゼノンでは、パーミングカップ側のサイドプレートの位置を1mm前方にずらしています。ほんの僅かな数字ですが、リールがさらに握りやすくなり、クラッチの誤動作を防ぐ効果があるんです」

レベルワインドの位置がもたらしたキャスタビリティーと強度

「ゼノンでは、レベルワインドにも大きな特徴があります」

レベルワインド。レベルワインダーとも呼ばれるこの部位は、スプールから放出されるラインを収束させて整え、ラインをスプールにきれいに巻く働きを持つ。

ゼノン(左)とレボ(右)のレベルワインダー位置の比較

「この部分を、従来よりもリール前方側に設けました。実はレボシリーズでは、コンパクトであるがためにここの距離がスプールに近すぎるという声を多く頂いていたんです。キャストでラインが放出される際にこの距離が近いと、スプールの両端からラインがあるときにレベルワインダーの部分で角度がきつくなり、大きな抵抗を生むことになっていたからです」

仮にスプールの回転性能が優れていたとしても、ラインが放出されるそばから勢いを殺してしまっていては意味がない。

「この問題を他社さんは様々な形でクリアしていました。でも機械はパーツ数が多いほど信頼性は落ちるもの。シンプルな設計でトラブルを抑えるべく、ゼノン開発の際にはレベルワインダーとスプールとの最適な距離を探しました。その結果、スプールから31.8mmが最適であることがわかったんです。なお、この前方に配置したレベルワインダーを保護するため、鍛造アルミを切削したフロントプレートを採用しています。多くのリールでただの飾りになってしまっているパーツですが、ゼノンでは重要かつ頑強な保護パーツなんですよ」

アンバサダーシリーズがそうであるように、シンプルな構造は道具としての信頼性をもたらす。アバンギャルドな見た目を持つゼノンもまた、アブガルシアの正統な血統を受け継いでいるのだ。

「また、リールのコンパクト化に伴い、レベルワインダーの高さが約1mmほど低くなっています。たったこれだけの違いで、驚くほど剛性感が向上しているんです」

一本の立っている柱を倒そうとしたとき、その上側を引っ張れば容易に倒れてしまうが、下側を引いたところでそう簡単には倒れない。

これをリールに落とし込むとすると、レベルワインダーの位置が高いリールの場合は魚の強い引きでたわみやすい一方で、低いリールなら同じ力が加わってもよりたわみが少なくなるというわけだ。

「つまりレベルワインダーの位置は低くなるほど、ラインとロッドが近くなるほど剛性感が高くなるのです。と言ってもそんなに簡単な話ではありません。それでもなんとか下げた1mmが、あのキムケン(木村建太)さんすら満足させられる剛性感につながっているんです」



『ピニオンサポート構造』採用スプールの真意とは?

レボシリーズではシャフトレスのスプールを採用してきたが、ゼノンではピニオンシャフト付きのタイプとなっている。

一見すると、それまでの優位性を捨てたようにも思えるのだが……。

「確かにシャフトレスのスプールの場合、キャスト時にはサブシャフトと分離した軽量なスプールのみが回転することで『飛び』という要素においては優れた部分があります。ですが欠点もあって、リーリングの際には大きなドライブギアからの負荷をサブシャフトが一身で受けるため歪みが生じやすい。するとドライブギアとピニオンギアのかみ合わせにもズレが生じ、巻き感が低下したり、ギアの耐久性を落とします」

そこでアブガルシアが新たに導入したのが『ピニオンサポート構造』なのだ。

「これはピニオンギアそのものをボールベアリングで支持する構造で、スプールのシャフトはこの中を通ることで、ドライブギアからの負荷をまったく受けません。つまり強い負荷でも安定して快適に巻くことが出来るんです。一方、キャスティング時にもピニオンギアはボールベアリングによって支持され続けるため、内部を通るスプールシャフトの高速回転に一切干渉することがありません。またスプール重量そものも非常に軽くなっているため低慣性で簡単に回り始め、簡単に止まってくれます」

ブレーキ性能の最適化

すでに公開されている、青木大介さんがゼノンについて語る動画では優れた点としてキャスタビリティー、特にブレーキ性能が語られている。

ゼノンのブレーキはレボシリーズで好評の『マグトラックス』系だが、どのような点が優れているのだろうか?

「まず前提として、従来品よりもスプール重量が大幅に軽くなっていまして、ブレーキ性能が活きるようになっています。そこに今回のマグネットブレーキですが、研究の結果、どんな人でも箱出し状態のリールで快適に使えるブレーキ設定にたどり着きました。それが10個のポケットに4つ×2の計8個のマグネットを搭載した状態です。ダイヤルは真ん中くらいを基準に、重いものを投げるなら数字を小さく、向かい風なら数字を大きくといった具合に調整してもらえればOK。もっとハイレベルなセッティングを求めるときになったらマグネットの個数を変更していただければと思います。なお、ビーストはスプール直径が32mmであり、30mm径のMG7、LTXよりも慣性が大きいため、標準で10個のマグネットがセットされています」

ベイトリールを使う際のハードルであるバックラッシュ。それを未然に防いでくれるブレーキシステムの最適化は、あらゆるアングラーにとってありがたい要素なのは間違いないはずだ。

『ゼノン』いよいよリリース

「ゼノンの発売はまず日本からとなります。ちなみにアメリカのゼノンは日本とは違って遠心ブレーキモデルがメイン。もしかしたらこちらの国内販売もあるかもしれません」

ベイトリールの本質を突く進化を遂げた『ゼノン』。

その恩恵を受けられる日は近いのだ。

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