バス界には様々な通説がある。しかし通説があれば風説や異説も飛び交い、諸説がある。そんな諸説を深掘りする連載企画、今回のお題は「ペンシルべイトは死んだのか?」そういえば最近、ペンシルべイト使っているだろうか? 持って行ってる? 最後に釣ったのはいつ? 実はもう何年も前だったりして。そんなペンシルべイトの現在地を探り、安否の確認をしてみよう。アメリカと日本のバス釣りに精通する、ヒロ内藤さんに伺った。
●文:ルアーマガジン編集部
死んだのではない殺されたのだ
最後にお話を伺ったのは、アメリカのバスシーンを知り尽くし、日本のバスアングラーのために尽力してきた重鎮、ヒロ内藤さん
内藤「最近の日本のルアーを見て凄く心配になるのは、本物っぽいのが一番いいという傾向が強いことだね。あとは、投げれば勝手に食ってくれるのがいいルアーということになってる。それがダメとは言わない、でも、それでいいのかなと思うね」
なぜ、エサを使わずに、わざわざルアーで釣りをしているのか? その原点に立ち返れば、内藤さんの言わんとしていることもわかってくる。
内藤「1902年、ジェームズヘドンが僕たちアングラーに向けて、カタログ上に残したメッセージがある。『ルアーを自然界に生きる生物に似せたところで、得るものはない』とね。ヘドン社では、その信念が今までずーっと受け継がれている。僕も何もしないでルアーが勝手に食われちゃうような、そんな釣りで釣れる魚は欲しくないのよ。折り重なる枝と枝の間を通す究極のキャストでポイントに入れて、そこから2回くらいアクションさせて、ドカーンと出たらそれは楽しいじゃん。それが僕の求める釣りの世界なんだ」
長い前置きとなったが、内藤さんはついにペンシルについて言及し始めた。
内藤「ペンシルは死んだ…と言ってるでしょ? 僕は違うと思う。ペンシルはみんなが殺したんだと思ってる。だってさ、誰も買わない、誰も使わない、だから話題に上がらない、だから売れないという負のスパイラルになっているよね。ペンシルを使って釣れる人と釣れない人の違いはというと、ストライクを作り出すための仕掛けを、どれくらいやってるかというのが重要なんだ。例えば切り株の横ギリギリを通して、1回コツンと当てるのは誰でもやる。そこをハーフトゥイッチというテクニックを使って、何度もしつこく当ててみるとかね。すると、ドーンと出たりする」
ハーフトゥイッチとは、左右どちらか一方のスライド幅を半分にして、ペンシルの泳ぐコースを曲げていくテクニック。こうした技術を駆使してバスを騙したときの楽しさは、また格別なのだ。
5人の諸説を総合すると、出しどころさえ間違わなければ、ペンシルも十分活躍できそうな気がしてきた。死んではいないけど、仮死状態みたいなものかもしれない。日本のルアーは、小手先のギミックを練り込み過ぎた感がある。ただ、ペンシルだけはそうはいかない。なぜならギミックを入れると、ある意味ペンシルではなくなってしまうからだ。だからわかりやすい進化がなく、影が薄くなったのかもしれない。ペンシルのギミックは、自分の腕で加えればいい。それを知れば、ペンシルの本質に開眼するだろう。内藤さんの言葉で、目が覚めた気がした。
ヒロ内藤さんのペンシルセレクト
スーパースプーク・ボイオ【へドン】
『ルアーマガジン』2023年9月号 発売情報
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