JBトップ50は「バスフィッシングの真の姿」が見えてくる戦い【藤田京弥 最高峰への道 Part.5】

日米のトーナメントシーンを股にかけた藤田京弥さんの戦いぶりを追うこの連載。「この場にいると、バスフィッシングの真の姿が見えてくる」そう語るJBトップ50の醍醐味とは?

●文:ルアーマガジン編集部

2024 シーバス特集

藤田京弥さんのプロフィール

藤田京弥(ふじた・きょうや)

昨年はJB戦で10勝の偉業と共に、最高峰トップ50をはじめ3つのシリーズ戦で年間優勝を獲得。もはや国内に敵なしの天才アングラーは2022年、国内と世界の「二刀流」での頂点へと挑む。1996年4月2日生まれの26歳、埼玉県出身・山梨県在住。

バイトの浅い灼熱の北浦水系と釣り負けた巻き物パターンの衝撃

藤田「どうすればトーナメントの面白さが読者の皆さんに伝わると思います?」

――いきなり難問ですね(汗)。

藤田「こういう連載をやらせてもらっていますが、いつも『自分はこんなふうにやりました』という報告だけになってしまうのが、もどかしくて」

――もっと伝えたいことがある?

藤田「僕にとってJBトップ50は『バスフィッシングの真の姿』が見えてくる場なんですよ。アメリカ以上に。向こうではリミットメイクが当たり前で、たまたまビッグフィッシュが混じるとポーンと上位に行けたりします。だけど毎日5尾釣るのも大変なトップ50の試合では、ほとんどマグレが存在しません。上位にいる選手は、間違いなくその瞬間、そのフィールドの芯を捉えている」

今年度はバスマスターオープンに専念するためJBトップ50の出場は全5戦中4戦のみ。それでも「この場にいるからこそ見えることがある」と藤田は語る。

――そこがいちばん面白い?

藤田「そうですね。自分がまったく気づいていなかった釣りで魚を持ってくる人もいるわけで、そういう話を聞くと、アメリカに比べてフィールドが狭くて全体像が見えているからこそ、余計に驚きがあります」

――そういった現場の感覚も混じえながら、北浦戦の流れを教えてください。

藤田「今回もプラクティスは直前の2日間だけでした。全域を見た結果、北浦本湖は『水が悪くて反応も薄い』と判断して切り捨てました。常陸利根川は魚がいるんですけど、時間がかかるのと、おそらく人が集中するだろうから、メインエリアにすることは避けました。最終的にたどり着いたのは外浪逆浦のアシですね」

――このエリアはバッティングが少なかった?

藤田「プラのときにはそう感じたんですが、本番を迎えるとけっこう混み合ってましたね。特に、3位に入賞した吉川永遠君とはほとんどエリアが被っていて、同じ魚をシェアしていた感じがあります。彼がいなければもうちょっと上に行けたのに~」

――きっと吉川さんもそう思ってますよ(笑)。外浪逆浦にもいろんなシチュエーションがあると思いますが、どういう条件の『アシ』がよかったんでしょう?

藤田「ここのアシは北浦水系のなかでも特に浅いので、風や流れの影響ですぐ濁ったり澄んだり、変化が激しいんですよ。そのときどきでよさそうな場所を探していく感じです。バスは全域にいて、アシ際を回遊していて、自分のエリアに泳いできたら釣れる。そんなイメージでした」

初日は3尾で3kgオーバー。バックスライド系の水中ドッグウォークなどでグッドサイズを揃えて4位からの好スタート。

――初日の藤田さんのウエイトは3尾で3,312g。単日4位の好成績でした。

藤田「北浦本湖で一箇所だけ、プラクティスで魚を目撃していた矢板があったんです。初日は朝イチにそこだけチェックして1kgクラスをキャッチしました。そのあとは予定どおり外浪逆浦のアシを撃ったんですが、5回食わせたのに3つもミスしてしまって」

――使っていたルアーは?

藤田「バラした魚の大半はパワーフィネスでした。アメリカ仕様の強めのセッティングでやってしまったのが原因だと思います。そもそもバイトが弱くてちゃんと掛かっていないから、ロッドが強すぎてフッキングやファイト中に吹っ飛んでいっちゃう」

――食いが浅いのには理由があったんでしょうか。

藤田「試合中は水温も32℃を超えていたし、元気のない魚が多かったんでしょうね。基本的にこの水系では、かなり送り込んで魚を走らせてからアワセるほうがいいんです。平均水深が浅いから、ラインの角度がつかなくて抜けてしまう。そのあたりもアメリカのリズムが抜けきれませんでした」

外浪逆浦エリアでのアシ撃ちが今回のメインパターン。トロフィーに手が届くだけの魚は反応させていたが、ミスバイトが多く3日間ともリミットメイクはできなかった。

――DAY2、DAY3はそれぞれ1尾ずつウエイイン。最終順位は10位でした。

藤田「そんな状態にもかかわらず、永遠君はほぼノーミスで釣っていたらしいです。しかもルアーは3.5gのチャター」

――巻き物ですか!

藤田「ほかの選手も驚いてました。熱中症で倒れそうな3日間だったのに、そういうパターンもあったんだなと。エリアは僕と同じ外浪逆浦で、ただし永遠君のほうがボートポジションが少し遠かった。アシから離れたところでも食ってきたそうで、淡水サヨリがキーだったと話していました」

――藤田さんもベイトフィッシュは意識してたんですか。

藤田「僕はプラのときからエビ食いがメインだと思っていたんですよ。ただ、あとから思い返すと、僕の最大魚も少し沖で食ってきたんです。ドリフトクロ―のバックスライドをピッチングで撃って、水中でフロッグみたいに首を振らせていたら、アシとボートの真ん中あたりでバイトが出た」

――釣りは違えど食うポジションは似ていた、ということでしょうか。

藤田「だけど3.5gのチャターなんて、普通は持ってませんよ(笑)。僕にとっては衝撃的な釣りでした。永遠君のように関西出身のプロが関東で試合をすると、そもそも釣りのベースが違うから、びっくりすることがけっこうあるんです。そういう違いに注目してみるのも、トーナメントの楽しみ方のひとつだと思います」

北浦戦を12位で終えた青木唯選手は暫定の年間ランキングで2位に浮上。藤田は2ポイント差でその上を行き、現在首位。折り返しの3戦目を終えた時点で、DAIWA期待の若手が年間1位2位を占めている。

藤田京弥2022トーナメントスケジュール

バスマスターオープン

試合日参加試合開催場所
4月14~16日ノーザンオープン第1戦ジェームズリバー(バージニア州)【10位】
4月28~30日セントラルオープン第1戦ロスバーネットレイク(ミシシッピ州)【46位】
7月7~9日ノーザンオープン第2戦レイクオネイダ(ニューヨーク州)【16位】
9月8~10日ノーザンオープン第3戦チェサピークベイ(メリーランド州)
9月22~24日セントラルオープン第2戦レッドリバー(ルイジアナ州)
10月20~22日セントラルオープン第3戦レイクサムレイバン(テキサス州)

JBトップ50

試合日参加試合開催場所
4月1~3日第1戦遠賀川(福岡県)【優勝!】
6月3~5日第2戦弥栄ダム(山口県)【11位】
7月22~24日第3戦北浦(茨城県・千葉県)【10位】
9月9~11日第4戦霞ヶ浦(茨城県・千葉県)※現時点では、不参加の予定
10月14~16日第5戦桧原湖(福島県)

JBトップ50第1戦の密着ドキュメント「京弥のターン」は必見です!

『ルアーマガジン』2023年9月号 発売情報

ルアーマガジン史上初めてのスモールマウス×オカッパリの表紙を飾ってくれたのは川村光大郎さん。大人気企画「岸釣りジャーニー」での一幕です。その他にも北の鉄人・山田祐五さんの初桧原湖釣行や、五十嵐誠さんによる最新スモールマウス攻略メソッドなど、避暑地で楽しめるバス釣りをご紹介。でもやっぱり暑い中で釣ってこそバス釣り(?)という気持ちもありますよね? 安心してください。今年の夏を乗り切るためのサマーパターン攻略特集「夏を制するキーワード」ではすぐに役立つ実戦的ハウツー満載でお送りします! そして! 夏といえばカバー! カバーといえば…フリップでしょ!! 未来に残したいバス釣り遺産『フリップ』にも大注目ですよ!


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