藤田京弥、来期エリートシリーズ昇格決定!【藤田京弥 最高峰への道 Part.6】

日米のトーナメントシーンを股にかけた藤田京弥さんの戦いぶりを追うこの連載。今回は、エリート昇格を決定づけたバスマスター・ノーザンオープンの最終戦直前に聞いた、プラクティスや生活の様子を紹介しよう。

●文:ルアーマガジン編集部

2024 シーバス特集

藤田京弥さんのプロフィール

藤田京弥(ふじた・きょうや)

昨年はJB戦で10勝の偉業と共に、最高峰トップ50をはじめ3つのシリーズ戦で年間優勝を獲得。もはや国内に敵なしの天才アングラーは2022年、国内と世界の「二刀流」での頂点へと挑む。1996年4月2日生まれの26歳、埼玉県出身・山梨県在住。

東京湾規模のフィールドを10日間で!? 過酷な練習期間とアメリカ自炊生活

――夕飯時にすみません(アメリカ東部夏時間の20時すぎに電話インタビュー開始)!

藤田「いえ、ちょうど湖から上がったところです」

――こんな時間まで練習してるんですか。

藤田「こっちは暗くなるのがだいぶ遅いんですよ。朝は6時にホテルの朝食が始まるので、それからスロープに向かって、毎日20時前後まで練習してます」

――そういえば、前回のオナイダ戦ではプラクティス中に遭難しかけたとか。

藤田「あのときは21時ぐらいまで明るくて、ギリギリまで湖にいたらエンジンとエレキトラブルで動けなくなってしまって。しょうがないので船首に座って、オール1本で2時間ぐらい漕いで帰りました」

――真っ暗闇のなかを?

藤田「湖岸に家の灯りがちらほら見える程度でした。航行灯をつけていたらでっかい羽虫みたいなのがたくさん集まっちゃって、大変でした(笑)」

――スロープからどれぐらい離れていたんですか。

藤田「漕ぎながら魚探で確認したら、せいぜい時速1.5kgだったので、4~5kgですかね。帰り着いたときには23時半になってました」

――過酷すぎますね。

藤田「今、練習しているチェサピークはもっとキツいですよ。これまでやってきたフィールドのなかでも最難関だと思います。今日(日本時間の9月4日)でプラクティス6日目なんですが、昨日は完全にノーバイトでした」

一面のウイードマットが琵琶湖南湖の何倍もの規模で広がる沖のフラット。これもチェサピーク・ベイのほんの一部分でしかない。「日本の感覚だと、ほとんど海みたいなフィールドです(笑)」。

――そんなに釣れない?

藤田「初めての湖だからというのもありますが、そもそもバスが少ないフィールドらしいです。以前、エリートシリーズが開催されたときもノーフィッシュ続出だったと聞きました。選手以外のバスアングラーにはほとんど出会わないし、近隣の釣具店に置いてあるのもソルトウォーター用がほとんど」

――チェサピークは南北に細長い入り江状のフィールドで、下っていくとそのまま大西洋に繋がるんですよね。

藤田「さすがにそこまでは行けませんが、可能性のあるエリアだけでも東京湾ぐらいの規模があるんです。東京湾と、そこに繋がるすべての河川を、たった10日間でチェックするのを想像してみてください」

――無理ッス……。

藤田「普通に考えたら日本人がポッと来て釣れるようなところじゃないです。バスのいる場所、いない場所がハッキリしているんだろうなとは思ってますが、それにしても情報がなさすぎます」

メインレイクのほかに大小のクリークが複雑に入り組む。エリアが広いうえ、潮の干満も計算に入れる必要がある。

アスリートと自己管理

藤田「YouTubeなどで調べたかぎりでは、北のほうにあるウイードフラットが有名らしくて、2日間釣り込んでみたんですが……。規模がデカすぎました。琵琶湖南湖よりも広いぐらいの場所が一面、ウイードのじゅうたんなんですよ」

――そちらのフィールドの季節感は?

藤田「9月に入ってから風が変わって、朝は肌寒いくらいの気温になってきました。最低気温が16~17℃ぐらい。それが余計に難しさに繋がっていて」

――というと?

藤田「バスの行動が読みづらいんです。この『9月上旬』というタイミングは、1年のなかでも特に難しいと思います。ほかの季節なら地形や諸条件で絞り込んでいけるけど、この時期は釣ってみないとわからない。ダメそうな場所も延々やって潰していくしかない」

――なるほど。ひたすら辛い作業ですね。

約10日間の練習でたどり着いたメインパターンはカバー撃ち。プラでは5lbクラスのラージマウスも飛び出した。

藤田「『アメリカを楽しんできて!』ってよく言われるんですけど、こういう練習はぜんぜん楽しくない。ただ、今日はようやくまともに釣れるエリアを見つけたんです。ようやく心が軽くなりました。最近は疲れていても2~3時間しか寝れなかったので」

――不慣れな環境だと体調管理にも気を遣いますね。食事などはどうしてるんですか?

藤田「キッチン付きの宿を選んで、夜はできるだけ自炊するようにしてます。外食ばかりだと栄養素も偏ってしまうので、前日や前々日に食べたものとのバランスを考えながら作ってますね。カレーを多めに作って、プラのお弁当に持っていったり」

――ずいぶんマメですね!

藤田「昔から興味があったんです。部活をやっていた高校生のころから、スポーツと栄養補給についての本を読んだりしていました。おなかが減ってるときにカロリーの高いお菓子を食べちゃうと、急に血糖値が上がって思考力が低下する、みたいなことを学んだり。個人差もあるので、調べたことを実践しながら、自分の体に合うものを取り入れてきた感じです」

――そこまで自分のコンディションを考えているバスプロに、初めて出会った気がします。

藤田「プロのアスリートなら食事を管理してもらったり、練習後にマッサージを受けたりするのは普通のことですよね。本番でパフォーマンスを出すためには必要なことだと思います。ただ、今はとにかく時間がないのが悩みです。ご飯を作ってくれて、朝晩にストレッチしてくれる人がいれば最高なんですけど(笑)」

サブパターンは石積み周辺でチャターを巻くというもの。春のジェームズリバー戦でも活躍したラピッズブレード3/8oz+ラピッズテールの組み合わせがよく効いた。

藤田京弥2022トーナメントスケジュール

バスマスターオープン

試合日参加試合開催場所
4月14~16日ノーザンオープン第1戦ジェームズリバー(バージニア州)【10位】
4月28~30日セントラルオープン第1戦ロスバーネットレイク(ミシシッピ州)【46位】
7月7~9日ノーザンオープン第2戦レイクオネイダ(ニューヨーク州)【16位】
9月8~10日ノーザンオープン第3戦チェサピークベイ(メリーランド州)【11位】
9月22~24日セントラルオープン第2戦レッドリバー(ルイジアナ州)
10月20~22日セントラルオープン第3戦レイクサムレイバン(テキサス州)

JBトップ50

試合日参加試合開催場所
4月1~3日第1戦遠賀川(福岡県)【優勝!】
6月3~5日第2戦弥栄ダム(山口県)【11位】
7月22~24日第3戦北浦(茨城県・千葉県)【10位】
9月9~11日第4戦霞ヶ浦(茨城県・千葉県)【不参加】
10月14~16日第5戦桧原湖(福島県)

JBトップ50第1戦の密着ドキュメント「京弥のターン」は必見です!

『ルアーマガジン』2023年9月号 発売情報

ルアーマガジン史上初めてのスモールマウス×オカッパリの表紙を飾ってくれたのは川村光大郎さん。大人気企画「岸釣りジャーニー」での一幕です。その他にも北の鉄人・山田祐五さんの初桧原湖釣行や、五十嵐誠さんによる最新スモールマウス攻略メソッドなど、避暑地で楽しめるバス釣りをご紹介。でもやっぱり暑い中で釣ってこそバス釣り(?)という気持ちもありますよね? 安心してください。今年の夏を乗り切るためのサマーパターン攻略特集「夏を制するキーワード」ではすぐに役立つ実戦的ハウツー満載でお送りします! そして! 夏といえばカバー! カバーといえば…フリップでしょ!! 未来に残したいバス釣り遺産『フリップ』にも大注目ですよ!


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