藤田京弥エリートシリーズ昇格決定! 波乱だらけのチェサピーク戦を振り返る【藤田京弥 最高峰への道 Part.7】

日米のトーナメントシーンを股にかけた藤田京弥さんの戦いぶりを追うこの連載。バスマスター・ノーザンオープン最終戦は直前の悪天候でフィールドコンディションが一変。メインエリアを捨て去った藤田を支えたのは、戦い抜くための『気持ち』だけだった。

●文:ルアーマガジン編集部

2024 シーバス特集

藤田京弥さんのプロフィール

藤田京弥(ふじた・きょうや)

昨年はJB戦で10勝の偉業と共に、最高峰トップ50をはじめ3つのシリーズ戦で年間優勝を獲得。もはや国内に敵なしの天才アングラーは2022年、国内と世界の「二刀流」での頂点へと挑む。1996年4月2日生まれの26歳、埼玉県出身・山梨県在住。

激変のメインエリアと新たな展開

――前回お話をうかがったのは、バスマスター・ノーザンオープン最終戦のプラクティス中でしたね。

藤田「10日間のプラを組んでいたのですが、最後の3~4日でようやくひとつのパターンが掴めたんです。場所はおもに流入河川で、特に東岸側にあるエルクリバー、ボヘミアリバー、ササフラスリバーの3箇所。なかでもカレントが効いていて、特定の条件が揃う大規模なレイダウンをねらっていました」

会場は海のように広大なチェサピーク・ベイ。プラクティスの前半はバスの居場所を見つけることにも苦戦するほどだった

――カバー撃ちですか?

藤田「はい。3/8ozのリーダーレスダウンショットでクロー系ワームを撃っていく釣りです。ほかでは1~2lb台が大半なのに、この3つの川だと3~4lbクラス、最大で5lbまで混じったんですよ」

――ところが直前に天候が急変したとか。

藤田「試合の2日前がとんでもない大雨でした。翌日に確認したときはまだ大丈夫だったのですが、試合当日にエルクリバーに向かうと、日本では見たことのないレベルで濁ってました。水温も27℃から23℃に落ちていた。かなり丁寧に探ったんですが、釣れたのは2lb弱が1尾だけ。これでメインエリアはすべて見切ることにしました」

――残りふたつの流入河川は?

藤田「チェックすらしてません。あとから振り返ると、ここでプラの内容を引きずらなかったことが、かなり重要な判断だったと思います」

――ほかにバックアップ的なパターンは?

藤田「ありません。なので、改めてマップを確認して、濁りの影響が少なそうなブッシュリバーというクリークに走りました。ここはインレットの流量が少ないんですよ。予想どおりねらいたいカバーはまだ濁っておらず、10箇所ぐらい撃って3尾キャッチ」

メインパターンはカバー撃ち。バスが好むスポットの条件を完全に把握していた藤田だったが、濁りと水温低下でメインエリアが壊滅する

――アジャスト成功ですね!

藤田「とはいえ、ウエイトはせいぜい7~8lbです。このあとも可能性のありそうな場所を走り回ったのですが、リミットメイクできなくて、ラスト30分、東岸の小さなクリークに入ってみたんです。プラではざっくりとしか見ていない場所だったんですけど、ちょうど流れが効いていて、しかも濁っていなかった。ここで立て続けに2本釣ることができて、最後の15分でキャッチした魚が4lb級でした」

「気持ち」で戦い抜いたラスト2時間

――初日の結果は23位。この順位をキープすればエリート昇格、という好位置です。

藤田「ただ、初日はフライト順が遅くて17時20分まで釣りができたんです。一方の2日目は14時半帰着」

――3時間近く繰り上がるわけですね。

藤田「それもあって朝から苦戦しました。初日の最後に入ったクリークに向かうと、まったくカレントがなかったんですよ。さらに潮位(水位)も高くて、カバーだらけでねらいを絞れない」

初日は11lb14ozで23位。200名を超える参加選手のなかではかなりの好スタートとなった

――流れが出ないと食わない?

藤田「まったくですね。はやめに見切ってブッシュリバーに移動してみると、なんと釣っていたエリアに濁りが蔓延していて、ここでもノーバイト。もう一度朝イチのクリークに戻って、11時半ごろにようやく最初の反応があったんですが、アワセた瞬間からカバーに絡んでいて、外れてしまった」

――ということは正午前までノーフィッシュ?

藤田「そうです。さすがにメンタルが崩壊しそうでした。ここでエリート昇格を決めないと、来年はオープン全9戦にエントリーしなきゃいけない(先日レギュレーションの変更が発表された)」

――必要な時間もお金も、膨大に膨れ上がります。

藤田「最近わかってきたんです。こういうときに弱音や愚痴を吐くとダメ。『気持ち』が負けてしまう。動画カメラマンが乗っていたんですが、ここはガマンのしどころだと思って、無言で釣りを続けるうち、これまでとは違って『旧吉野川っぽいところ』で反応が出ることに気づきました」

――キューヨシ?

藤田「大規模レイダウンではなく、『流れがガンガン当たるところのショボいカバー』みたいな。そこからは完全にインスピレーションだけで動きました。よさそうな雰囲気のところをランガンして3尾釣ったあと、プラでは一度も入っていない隣のクリークに飛び込んでみたら4尾めが来てくれた。そしてラスト30分、もとのクリークに戻ってキャッチしたのが、この日最大の4lb級でした」

――完全にゾーンに入りましたね!

藤田「2日目は完全に『気持ち」だけで試合していたと思います。あとでエンジンを調べたらスケグが壊れて、プロップシャフトも曲がってました(笑)」

2日めはラスト3時間を切ってノーフィッシュ。そこから驚異的なラッシュを見せて総合11位にまで持ち直した。このようすはテレビ東京系『ザ・フィッシング』でも放映予定。

――ちょっと気がはやいかもですが、エリートシリーズでの目標は?

藤田「勝つことよりも、毎試合で安定して決勝に進んで、年間優勝を目指したい。甘くないことはわかっていますが、そのくらいの『気持ち』で臨まないとダメだろうなと思ってます」

藤田京弥2022トーナメントスケジュール

バスマスターオープン

試合日参加試合開催場所
4月14~16日ノーザンオープン第1戦ジェームズリバー(バージニア州)【10位】
4月28~30日セントラルオープン第1戦ロスバーネットレイク(ミシシッピ州)【46位】
7月7~9日ノーザンオープン第2戦レイクオネイダ(ニューヨーク州)【16位】
9月8~10日ノーザンオープン第3戦チェサピークベイ(メリーランド州)【11位】

JBトップ50

試合日参加試合開催場所
4月1~3日第1戦遠賀川(福岡県)【優勝!】
6月3~5日第2戦弥栄ダム(山口県)【11位】
7月22~24日第3戦北浦(茨城県・千葉県)【10位】
9月9~11日第4戦霞ヶ浦(茨城県・千葉県)【不参加】
10月14~16日第5戦桧原湖(福島県)

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