日米のトーナメントシーンを股にかけた藤田京弥さんの戦いぶりを追うこの連載。バスマスター・ノーザンオープン最終戦は直前の悪天候でフィールドコンディションが一変。メインエリアを捨て去った藤田を支えたのは、戦い抜くための『気持ち』だけだった。
●文:ルアーマガジン編集部
藤田京弥さんのプロフィール
藤田京弥(ふじた・きょうや)
昨年はJB戦で10勝の偉業と共に、最高峰トップ50をはじめ3つのシリーズ戦で年間優勝を獲得。もはや国内に敵なしの天才アングラーは2022年、国内と世界の「二刀流」での頂点へと挑む。1996年4月2日生まれの26歳、埼玉県出身・山梨県在住。
激変のメインエリアと新たな展開
――前回お話をうかがったのは、バスマスター・ノーザンオープン最終戦のプラクティス中でしたね。
藤田「10日間のプラを組んでいたのですが、最後の3~4日でようやくひとつのパターンが掴めたんです。場所はおもに流入河川で、特に東岸側にあるエルクリバー、ボヘミアリバー、ササフラスリバーの3箇所。なかでもカレントが効いていて、特定の条件が揃う大規模なレイダウンをねらっていました」
――カバー撃ちですか?
藤田「はい。3/8ozのリーダーレスダウンショットでクロー系ワームを撃っていく釣りです。ほかでは1~2lb台が大半なのに、この3つの川だと3~4lbクラス、最大で5lbまで混じったんですよ」
――ところが直前に天候が急変したとか。
藤田「試合の2日前がとんでもない大雨でした。翌日に確認したときはまだ大丈夫だったのですが、試合当日にエルクリバーに向かうと、日本では見たことのないレベルで濁ってました。水温も27℃から23℃に落ちていた。かなり丁寧に探ったんですが、釣れたのは2lb弱が1尾だけ。これでメインエリアはすべて見切ることにしました」
――残りふたつの流入河川は?
藤田「チェックすらしてません。あとから振り返ると、ここでプラの内容を引きずらなかったことが、かなり重要な判断だったと思います」
――ほかにバックアップ的なパターンは?
藤田「ありません。なので、改めてマップを確認して、濁りの影響が少なそうなブッシュリバーというクリークに走りました。ここはインレットの流量が少ないんですよ。予想どおりねらいたいカバーはまだ濁っておらず、10箇所ぐらい撃って3尾キャッチ」
――アジャスト成功ですね!
藤田「とはいえ、ウエイトはせいぜい7~8lbです。このあとも可能性のありそうな場所を走り回ったのですが、リミットメイクできなくて、ラスト30分、東岸の小さなクリークに入ってみたんです。プラではざっくりとしか見ていない場所だったんですけど、ちょうど流れが効いていて、しかも濁っていなかった。ここで立て続けに2本釣ることができて、最後の15分でキャッチした魚が4lb級でした」
「気持ち」で戦い抜いたラスト2時間
――初日の結果は23位。この順位をキープすればエリート昇格、という好位置です。
藤田「ただ、初日はフライト順が遅くて17時20分まで釣りができたんです。一方の2日目は14時半帰着」
――3時間近く繰り上がるわけですね。
藤田「それもあって朝から苦戦しました。初日の最後に入ったクリークに向かうと、まったくカレントがなかったんですよ。さらに潮位(水位)も高くて、カバーだらけでねらいを絞れない」
――流れが出ないと食わない?
藤田「まったくですね。はやめに見切ってブッシュリバーに移動してみると、なんと釣っていたエリアに濁りが蔓延していて、ここでもノーバイト。もう一度朝イチのクリークに戻って、11時半ごろにようやく最初の反応があったんですが、アワセた瞬間からカバーに絡んでいて、外れてしまった」
――ということは正午前までノーフィッシュ?
藤田「そうです。さすがにメンタルが崩壊しそうでした。ここでエリート昇格を決めないと、来年はオープン全9戦にエントリーしなきゃいけない(先日レギュレーションの変更が発表された)」
――必要な時間もお金も、膨大に膨れ上がります。
藤田「最近わかってきたんです。こういうときに弱音や愚痴を吐くとダメ。『気持ち』が負けてしまう。動画カメラマンが乗っていたんですが、ここはガマンのしどころだと思って、無言で釣りを続けるうち、これまでとは違って『旧吉野川っぽいところ』で反応が出ることに気づきました」
――キューヨシ?
藤田「大規模レイダウンではなく、『流れがガンガン当たるところのショボいカバー』みたいな。そこからは完全にインスピレーションだけで動きました。よさそうな雰囲気のところをランガンして3尾釣ったあと、プラでは一度も入っていない隣のクリークに飛び込んでみたら4尾めが来てくれた。そしてラスト30分、もとのクリークに戻ってキャッチしたのが、この日最大の4lb級でした」
――完全にゾーンに入りましたね!
藤田「2日目は完全に『気持ち」だけで試合していたと思います。あとでエンジンを調べたらスケグが壊れて、プロップシャフトも曲がってました(笑)」
――ちょっと気がはやいかもですが、エリートシリーズでの目標は?
藤田「勝つことよりも、毎試合で安定して決勝に進んで、年間優勝を目指したい。甘くないことはわかっていますが、そのくらいの『気持ち』で臨まないとダメだろうなと思ってます」
藤田京弥2022トーナメントスケジュール
バスマスターオープン
試合日 | 参加試合 | 開催場所 |
---|---|---|
4月14~16日 | ノーザンオープン第1戦 | ジェームズリバー(バージニア州)【10位】 |
4月28~30日 | セントラルオープン第1戦 | ロスバーネットレイク(ミシシッピ州)【46位】 |
7月7~9日 | ノーザンオープン第2戦 | レイクオネイダ(ニューヨーク州)【16位】 |
9月8~10日 | ノーザンオープン第3戦 | チェサピークベイ(メリーランド州)【11位】 |
JBトップ50
試合日 | 参加試合 | 開催場所 |
---|---|---|
4月1~3日 | 第1戦 | 遠賀川(福岡県)【優勝!】 |
6月3~5日 | 第2戦 | 弥栄ダム(山口県)【11位】 |
7月22~24日 | 第3戦 | 北浦(茨城県・千葉県)【10位】 |
9月9~11日 | 第4戦 | 霞ヶ浦(茨城県・千葉県)【不参加】 |
10月14~16日 | 第5戦 | 桧原湖(福島県) |
JBトップ50第1戦の密着ドキュメント「京弥のターン」は必見です!
『ルアーマガジン』2023年9月号 発売情報
ルアーマガジン史上初めてのスモールマウス×オカッパリの表紙を飾ってくれたのは川村光大郎さん。大人気企画「岸釣りジャーニー」での一幕です。その他にも北の鉄人・山田祐五さんの初桧原湖釣行や、五十嵐誠さんによる最新スモールマウス攻略メソッドなど、避暑地で楽しめるバス釣りをご紹介。でもやっぱり暑い中で釣ってこそバス釣り(?)という気持ちもありますよね? 安心してください。今年の夏を乗り切るためのサマーパターン攻略特集「夏を制するキーワード」ではすぐに役立つ実戦的ハウツー満載でお送りします! そして! 夏といえばカバー! カバーといえば…フリップでしょ!! 未来に残したいバス釣り遺産『フリップ』にも大注目ですよ!
※本記事は”ルアーマガジン”から寄稿されたものであり、著作上の権利および文責は寄稿元に属します。なお、掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な記載がないかぎり、価格情報は消費税込です。
関連する記事
日米のトーナメントシーンを股にかけた藤田京弥さんの戦いぶりを追うこの連載。今回は、エリート昇格を決定づけたバスマスター・ノーザンオープンの最終戦直前に聞いた、プラクティスや生活の様子を紹介しよう。 藤[…]
日米のトーナメントシーンを股にかけた藤田京弥さんの戦いぶりを追うこの連載。「この場にいると、バスフィッシングの真の姿が見えてくる」そう語るJBトップ50の醍醐味とは? 藤田京弥さんのプロフィール バイ[…]
日米のトーナメントシーンを股にかけた藤田京弥さんの戦いぶりを追うこの連載。初戦でいきなり決勝進出を決めたバスマスター・ノーザンオープンの舞台で、またしても初日2位の大躍進を見せる。 藤田京弥さんのプロ[…]
日米のトーナメントシーンを股にかけた藤田京弥さんの戦いぶりを追うこの連載。アメリカでの連戦を終えて帰国後、JBトップ50第2戦の舞台・弥栄ダムへ。十八番のサイトフィッシングが炸裂するかと思いきや、不慮[…]
JBトップ50とバスマスターオープンへの参戦を表明した藤田さんの戦いぶりをお届けするのがこの企画。2022年トップ50開幕戦で優勝を手にした翌日に渡米。アメリカでのデビュー戦となるバスマスターノーザン[…]