釣り人にとってカワハギはフクザツな感情を抱く魚だ。水中をホバリングするように器用に泳ぎ回る性質があり、上手にエサだけを掠め取っていく。難しい釣りなだけに、釣り人は夢中になる。が、釣れない。だから面白い。なんといってもその美味しさも際立っている。釣ったカワハギの肝臓の美味しさは、食べたことがある人ならカワハギこそ最高……と惚れ込む。夏場は身の旨味が際立ち、歯ごたえとあわさって「美味いフグ」のよう。が、とにかく釣れない。……最高である。売っているカワハギで肝が食べられることはまずない。釣ってきたらぜひ肝を味わってみてほしい。
●文:ルアマガプラス編集部
カワハギについて
カワハギの生態
フグ目カワハギ科カワハギ属。体長20~30cmほどで側偏した魚体を持つ。身にはほとんど脂肪がないが、大きな肝臓は脂肪分豊富。それは他の魚のように泳ぎ回ることがないので、身に脂肪を貯めこむ必要がなく(=貯めこむことができない)、かわりに肝臓が貯蔵庫となっているから。晩秋から冬にかけて身ではなく肝が大きくなるのはそのためである。
小さな口を器用に使うエサ取り名人
釣り針に付いたエサだけを器用に食い逃げすることから、釣り人からは「エサ取り名人」と呼ばれているカワハギ。実際にエサを取るのが非常に上手で、口から海水を吹き出して砂を舞い上げ、砂の中のエサを掘り出して食べたりもする。また硬く鋭い口を使って、フジツボや貝、甲殻類などの硬いエサも噛み砕いて難なく食べる。
面白いように剥けるんです
カワハギを漢字で書くと「皮剥」。それが示す通り、カワハギの皮は簡単に剥がすことができる。カワハギの皮は鮫肌のようにざらざらしていて、ぬるっとしていないので掴みやすい。口を切り落として、そこから皮を指でつまんで引っ張れば、面白いようにツルンと剥ける。
ちなみに「バクチ」とも呼ばれるが、これも皮の剥ぎやすさからきていて、賭博師が負けると身ぐるみ剥がされることに由来する。
代表的なブランド
北海道以南の日本各地の沿岸に生息し、全国で水揚げされているカワハギ。暖かい水を好むため、南の海の方が種類も生息数も多い傾向がある。ブランドとしては、長崎の「生月はぎ」がある。
おすすめ料理 | 旬 | 全国の主な産地 |
---|---|---|
肝和え、唐揚げ、煮付けなど | 夏(身が旨い)、晩秋~冬(肝が肥大する) | 長崎、富山、東京湾など |
繊細な白身に濃厚な肝寒い冬のごちそう
横から見ると菱型で正面から見るとペッタンコの独特な体型。
こう見えてカワハギはフグの仲間である。確かに小さなオチョボ口にフグの面影がある。そして皮にウロコがなく、硬くザラザラしているところも似ている。
食材として見てもフグとの共通点は多い。脂が少なく弾力のある白身は歯ごたえがよく、薄造りにして美味しい。鍋物や唐揚げ、そして干物にも合う、等々。
しかしカワハギはフグにはない凄い武器を持っている。それは肝だ。
肝に絡めていただく薄造りのウマイこと!! 繊細な白身に芳醇な旨みと深いコクが加わる。肝と一緒に食べて初めて本領を発揮すると言ってもいいだろう。
ちなみにカワハギの旬は晩秋から冬にかけて。寒くなるにつれて、カワハギの腹が肝で膨れ上がってパンパンになるからだ。
カワハギのレシピ集
旨味の強い魚で出汁も最高! カワハギの煮付け【釣り人のお魚料理レシピ】
釣り人にとってカワハギはフクザツな感情を抱く魚だ。水中をホバリングするように器用に泳ぎ回る性質があり、上手にエサだけを掠め取っていく。難しい釣りなだけに、釣り人は夢中になる。が、釣れない。だから面白い[…]
やはり肝和え最高か……! カワハギのポン酢と肝醤油のお造り【釣り人のお魚料理レシピ】
釣り人にとってカワハギはフクザツな感情を抱く魚だ。水中をホバリングするように器用に泳ぎ回る性質があり、上手にエサだけを掠め取っていく。難しい釣りなだけに、釣り人は夢中になる。が、釣れない。だから面白い[…]
『前略 奥様 釣った魚は自分で料理します。』発売情報
全24種の美味しい魚レシピ集!
釣った魚を料理できれば 「また釣り行くの!?」と言われず、 気持ちよく釣りへ行けるじゃないか~! そんな編集部の声(願望)から生まれた魚のレシピ集です。
春夏秋冬の季節感豊かな魚とその食べ方を幅広くご紹介。魚の捌き方もしっかり掲載しています。1冊あれば、何かのときに役立つと思いますので、お手元にぜひ。
電子版ではタブレット端末での閲覧が最適です。
※本記事は”ルアマガプラス”から寄稿されたものであり、著作上の権利および文責は寄稿元に属します。なお、掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な記載がないかぎり、価格情報は消費税込です。
関連する記事
カンパチはブリにも煮ている「青物」を代表する魚。やや扁平な魚体で体高があり、その分だけ遊泳力が強い。強烈な引きを見せる魚で、青物狙いの釣りでは人気が高い。遊泳力が高いだけあって身も締まっていながら、脂[…]
近年釣り物としての存在感が上昇中のマゴチ。夏場に浅場に入ってくるフィッシュイーターで、ルアー釣りのターゲットとしても、イワシなどを泳がせて釣るエサ釣りでも人気のターゲット。少し変わった風体でまん丸の胴[…]
近年釣り物としての人気が高まるばかりのキジハタ。生息数の多い関西ではアコウの名で知られる。水温上昇などの要因があるのか生息域が東に拡大しつつあり、ハタ科の魚を中心に狙うグルーパーフィッシングとして人気[…]
カツオといえば味の強さ、においの強い魚というイメージがあると思われる。高速で泳ぎ回り血の回りの多い青魚ならではだが、一般的に手に入るカツオは血抜きがされていないもの。釣りカツオであれば血抜きが可能で、[…]
食用魚としてもっともポピュラーな魚といえばマアジだろう。大衆魚の代表格であり、釣りの対象魚としてもエサ釣りからルアー釣りまで大人気の魚。たくさん釣れて、美味しいとくれば当然といえば当然なのだが、実は生[…]