広大な海で釣りをしていると、ごくまれに、貴重な生物と遭遇することがある。今回は、世界を股にかけて活躍する釣り人であり、ルアマガプラスでも海外釣行レポートを寄稿してくれている前野慎太郎が体験した、巨大イカとの遭遇についてお伝えしよう。
●文:ルアマガプラス編集部 ●写真:前野慎太郎
世界をまたにかけた釣行記「セカマタチャンネル」にアップされた衝撃映像
この記事で紹介するエピソードは、釣り人、前野慎太郎さんのYouTubeチャンネルの動画作品からの紹介となる。
動画は、衝撃的なテロップでスタートする。「ダイオウイカが現れました」。状況がよく飲み込めないまま、次のシーンへ。場所はボートの上だ。
前野さんと釣友グループは、ヒラマサを狙うため、山陰沖の日本海へボートで出船していた。すると、見慣れない巨大な白い物体がボートの近くを流れてくるのである。そして、誰かが叫ぶ。
「ダイオウイカだ!」
この時点では、映像を見てもそれが何なのか判然としない、ただ白い物体のようにも見える。しかし、撮影者は肉眼で、その異様なフォルムからすぐに、ダイオウイカではないかと推測し叫ぶのである。
「ホンマや!(ダイオウイカや!)」。普段、魚などに慣れ親しんでいる釣り人にとって、常識はずれの巨大なイカの姿から、ダイオウイカだと判断するのは、そう難しいことではない。しかし、すでに息絶えている可能性が高いようで、なんとか捕獲しようと手持ちのルアーを投げ始める。
パワーのあるヒラマサ用タックル(釣り具)でも歯が立たない!
ルアーを投げていたうちの1人が、見事、ダイオウイカを掛けることに成功するのだが、しかし、リールのドラグ(糸切れ防止装置)がけたたましい音をたててライン(釣り糸)が出ていく。
見かねた船長が、どんどんと離れていくダイオウイカらしき白い影を、船で追うことを決意。ルアーがかかった状態をキープしながら、たくみな操船で白い影に近づいていく。一体、白い影の正体は本当にダイオウイカなのか? 見ている側もドキドキ、ハラハラする展開だ。
決して細くはないPEライン(編み込みの釣り糸)だが、ことダイオウイカに対しては、なんとも頼りなく感じてしまう。どうか、どうかうまくキャッチしてほしい…。
状況を冷静に観察する船長が「浮いてきた、浮いてきた!」とアナウンス。ダイオウイカと思しき白い影に対して、確実に距離を詰めていっている。
最近でこそ、ダイオウイカが捕獲されたニュースをたまに聞くが、しかし、この遭遇がどれほどレアな体験なのか、普段、海に親しんでいる人ならおわかりいただけると思うが、毎日のように海に出いているような漁師さんや遊漁船の船長ですら、めったに見ることがない、スーパーSランク級の希少生物だ。居合わせた釣り人が大興奮するのも当然のことである。