
釣り人が出す水中ごみ削減のため、2030年までに生分解性ルアーの完全移行を目指す日本バスプロ協会。今回は、米国バスマスターオープンに参戦中の青木唯と、今季JBトップ50への昇格を果たした藤川温大が河口湖にボートを浮かべ、生分解性ルアーを実際に使ってみた。
●文:ルアマガプラス編集部
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私たち釣り人が水中に残したルアーは水中プラスチックごみとして海底や湖底に回収しきれないほど沈んでおり、社会問題化する可能性を常に孕んでいる。2030年までにトーナメントでの生分解性ルアーの完全導入を目[…]
青木唯(左)
あおき・ゆい/河口湖を中心に圧倒的な強さを誇るトーナメンター。2024年からは米国バスマスターオープンに参戦中。好きなスタイルはフロッグとジグ。得意な釣りはサイトとライブシューティング。好きな食べ物はラーメン、スルメ、鮭とば。「お酒は飲めません(笑)」。なお、本取材の後に悲願のオープン戦1勝目を実現した。1999年10月、山形県生まれ、血液型B型。
藤川温大(右)
ふじかわ・はると/ 2024年JBマスターズ年間8位の好成績で今年からJBトップ50への昇格を果たした期待の若手。好きなスタイルはスト系の釣りで、得意な釣りはサイトフィシング。大のゲーム好きで、「太鼓の達人のプロを目指していました(笑)」。2001年11月、兵庫県生まれ、血液型O型。父親は阪神タイガース新監督の藤川球児氏。
アメリカを経験した青木唯とアメリカを目指す藤川温大
青木「1年間で多くのことを学んで、まずは行ってよかったなっていう気持ち。正直、最初はちょっとナメていた部分があった。日本の釣りを使ったら余裕で魚を食わせられるだろうって。でも初戦がフロリダのレイクオキチョビっていう大きな湖での試合だったんだけど、ほぼ最低順位。220人くらい出て185位だった。もう現実を見せつけられた試合。それでも1年間やってきて、日本の数倍はあるフィールドでも4日半のプラクティスでだいぶ紐解けるようにはなってきた。そこは日本では絶対に味わえない部分
がアメリカにはあるし、やっていて楽しいって思えた」
藤川「実際1年間アメリカに行ってみて、生活や言語の部分はどうでしたか?」
青木唯の今期の目標
バスマスターでは今年から新ルールにより、オープン戦で年間50位以内の選手に出場権が与えられるEQ(エリートクオリファイ)シリーズ全3戦の年間9位までの選手にエリート昇格資格が与えられる。青木「日本で鍛えた食わせの技術をアメリカ寄りに応用すれば
大きな武器になる。あとはベイトフィッシュなどアメリカの『自然』を知ることが課題です」。
青木「僕は英語が話せないんだけど、案外伝えようと思ったら伝わる部分もあって生活は割と成り立っちゃうことが多い。でも僕が今困っているのは、向こうの釣り人と会話ができないこと。釣り人同士の会話ってやっぱり楽しいじゃないですか。そこを今楽しめていないっていうのが悔しい。アメリカ人も僕のことを海外から来た日本人選手として話しかけてきてくれるから、それに応えたいんだけど。やっぱり英語をしっかり勉強しなきゃなって思ってます」
藤川「実際に行ってみないと必要性を感じないですよね」
青木「コミュニケーションを取りたいから話したいっていう部分がすごく大きいかな。あと、僕のサポートメーカーさんのこともアメリカで紹介したいんだけど、それにも英語力が必要。恩返しする部分でもやっぱり英語を話したいなっていうのはある。あとね、アメリカの釣り人って、なんていうか『素直』なんだよね。例えば、大会でこのルアーが釣れたってなったら、もうすぐにみんなこぞってそのルアーをドカッと買って真似するんだよね。だから僕たちがこうやってバスボートに乗って、スポンサーのメーカーを掲げて釣り具を使って戦っているからこそ、日本の製品を英語で伝えられたらもっと恩返しができる。その点でもアメリカはいいところなんじゃないかなって、この1年間やってみて思いました。ところで、藤川君もアメリカを目指しているって聞いたけど、いつ行きたいとか決めているの?」
藤川温大の今期の目標
3年間のマスターズ経験ののち、藤川温大が今季、最高峰カテゴリーのトップ50に昇格。藤川「まずは1勝を目指してがんばります。トッププロは厳しいと言われる状況でも釣ってくる選手が多く、自分も毎試合を安定して釣っていくことが課題です。まだ経験がないフィールドが多いので、そこもしっかり練習していきたいです」。
藤川「もう今から1、2年後ぐらいには行きたい。僕の中で、プロになるって決めたときから将来はアメリカに行きたいという目標が元々あったので。だけど、アメリカに行くんだったら日本である程度しっかりやってから行くべきなのかなと思ってJBに出ています。最近結果が出せるようになってきたのは、自分の課題を明確にして目的意識をもった良い練習ができるようになってきたからだと思います。ただ漫然と釣りをしているだけでは上手くならないので」
先入観を捨てて、まずは生分解性ルアーを投げてみよう
ここで、現在JBが開発している生分解性ルアーを実際に投げてもらってみた。
青木「僕たちが日頃釣りをしていると、根掛かりはするし、ラインブレイクも起こる。じゃあそのあとに何をしたかって、やっぱ釣りを続けるよね。がんばって外そうとはするけど、できるだけラインを残さないように根っこから切るとかそれぐらいしかできなくて。そのあたり、目を背けていた部分は正直、みんなあると思うんですよね。釣り人以外の人から見ればゴミを捨てているのと変わりがない。でももし、生分解性ルアーを使うことで根掛かりしたルアーが5年10年経って溶けてなくなるのであれば、僕たちがこうやって釣りをしていることも、世の中に認められやすくなると思う。それが僕たちプロやメーカー、釣り具に携わってる人たちが率先してやるべきことなのかなって、今日実際にルアーを投げてみて感じた。正直に言うと、この生分解性ルアーの話を最初に聞いたときは固定概念から自分の中で反対していた部分がありました。『何を言ってるんだろう?』って。だけど、今日実際に投げてみて、意外とルアーとしてもちゃんと動くし、これを自分達プロが真剣に作ったら、しっかり釣れるルアーがこの生分解性素材でできるんじゃないかって本気で思えたんです。こういう機会をもらうまで試しに投げてみなかった自分を反省しましたね」
藤川「僕も2023年のJB40周年記念式典のときに配布された生分解性ルアーを、結局今日まで一回も投げていなくて。実際に使ってみたらめちゃくちゃいい動きをしているルアーも中にはあった。これから、このプロジェクトを進めていっても可能性があるというか面白いのかなと思いましたね。素材として全然アリというか」
青木「まだ強度の部分などで、いろいろ改善すべき点はあると思うんすけど、素材は(山下)会長が見つけてくれたから、あとはこれで実用的なルアーを作るのが僕たちの仕事。みんなで本気で試したら意外とすぐいいルアーができるかもしれない。みんな釣りを続けたいし、これから生まれる子供たちに釣りができる環境を残していかなきゃいけないから。それは僕たちの責任でもある。これには率先してみんなで取り組むべきかなと今日思いました」
藤川「僕がバス釣りを始めたのは16歳のころだったんですけど、その頃にはもう地元の多くのため池が釣り禁止になっていたんです。その原因のひとつとしてゴミ問題は大きい。少しでも減らせるのであれば減らしたほうが絶対いい。日本はそんなに釣り場が多くないので、生分解性ルアーも含めていろいろな可能性を模索する必要があると思います。近年は釣り場自体にいろいろな制限がかかってきている時代だなと感じるので」
青木「ルアーを成型する技術が進化しているから、それに伴って素材のほうも進化すべきだとは思います。日本はものづくりが得意だから、こういった技術の先進国になれたらすごい。水中ゴミの問題は日本だけではないと思うので日本が率先してこの技術を世界に伝えられたらいいですね」
ゆいぴー&ハルト
リコメンド生分解性ルアー
青木「このミノー、動きがいいです。ただ巻きよりはジャーク。浮力が高いのでジャークで潜らせてシミーライズさせることができる。春の河口湖でハワイ沖に風が当たるタイミングがあって、ジャークベイトパターンがはまるんです。細身のミノーよりはこれくらいボリュームがあってしかもフローティングがちょうどいい」
藤川「今ここにあるルアーの中でこの青いクランクベイトが一番好きでしたね。目がポイントで片方ずつ違ってかわいい。ルアーって釣れる釣れないももちろん気にするけど、愛着が湧いて、これで釣りたいって思えることが大事ですよね」
青木「このフラットサイドクランクは使ってみたらなんとシンキング仕様でした。ボトムに当てても使える感じだったし、一定のレンジをシェイキングしながら引いてきてもよかったですよ」
STARTUP TOURNAMENTを開催!
2025年6月29日(日)/7月27日(日)
会場:河口湖大池公園(山梨県)
参加料は無料! 誰でも楽しめるバイオマス含有ルアーの釣り大会を開催! 岸釣りでもボートでもOK。魚種問わず1番重い魚を釣り上げた方にはなんと50万円分のJCB商品券をプレゼント。特別賞として、大きさ問わず釣り上げた魚1匹ごとに1000円分のJCB商品券がもらえるぞ。
※Feco+製品のみ使用可能。
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私たち釣り人が水中に残したルアーは水中プラスチックごみとして海底や湖底に回収しきれないほど沈んでおり、社会問題化する可能性を常に孕んでいる。2030年までにトーナメントでの生分解性ルアーの完全導入を目[…]
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