〈初心者の釣り〉“イワナ”の生態/釣りシーズン/釣り方/仕掛け/食べ方【渓流の王者を追う、深山の愉しみ】

●文:ルアマガプラス編集部

イワナとは?

イワナは、サケ科イワナ属に分類される魚。日本の渓流魚としてはもっとも源流に近い、水温が夏でも15度前後の冷たい清流に生息する。「岩魚」と書く名の通り、岩の多い場所を好み、その陰に潜む習性を持つ。

日本には在来種、外来種含めてイワナの仲間が7種生息しています。

ニッコウイワナ(エゾイワナ)、ヤマトイワナ、ゴギ、キリクチ、ミヤベイワナ、オショロコマの6種。これにブルックトラウト(外来種)が確認されています。

ニッコウイワナ系。水系ごとに模様や色合いが異なるのが特徴。

ヤマトイワナ系。日本の2大イワナ種のひとつ。中部、北陸の一部の川に生息。

ここで、イワナと定義するのはオショロコマを除く在来5種。その精悍な顔つきと、警戒心の強さ、そして原生的な自然の奥深くに生息することから、多くの渓流釣り師にとって憧れの対象となっています。

イワナの生態

イワナはとても貪欲な肉食魚ですが、基本、水生昆虫や陸生昆虫を主食とします。さらには小魚/カエル/サンショウウオまで捕食すことがあります。普段は岩陰や淵の底に潜んでいますが、餌を見つけると素早く躍り出て捕らえる。産卵期は秋(10月~11月頃)で、オスとメスは川を遡上し、浅瀬の砂礫底に産卵床を作ります。イワナはグッと下に潜るファイトが特徴的な魚で非常にトルキーな引きです。

水生昆虫がメインディッシュ。暖かくなると落下して川に流れる陸生昆虫も好んで食します。大型魚は小魚なども積極的に捕食します。

イワナの釣りシーズン

イワナ釣りのシーズンは、本州以南の多くの河川で漁業協同組合が定める解禁期間に準じます。一般的に3月から9月末までが遊漁の期間。それ以外にあたる禁漁期間は産卵期にあたる秋から冬(10月頃~翌2月または3月頃)に設定されています。その期間にイワナを釣ることは基本NGと覚えておきましょう。

イワナは岩や草陰、窪んだ地形に潜む。

春(解禁~5月)

3月頃の解禁当初は、まだ水温が低く、雪代(雪解け水)の影響で水量が多いこともある。イワナの活性は低いが、水温が安定しやすい淵や深みに定位していることが多い。桜が咲き、水生昆虫のハッチ(羽化)が活発になる4月下旬から5月にかけて、イワナの活性は徐々に高まり、本格的なシーズンへと突入します。

夏(6月~8月)

梅雨時期は水量が増え、イワナの活性がもっとも高まるハイシーズン。瀬にも出るようになりますが、基本流れのよどみに好んで着きます。真夏になり水温が上がり過ぎると、より水温の低い支流や源流部へと移動する傾向があります。

秋(9月~禁漁まで)

産卵を意識したイワナが、越冬と繁殖のために体力を蓄えようと荒食いをするシーズン。大型の個体が狙えるチャンス。とはいえ季節を経て、釣り人に釣られることで魚の数が河川から減ってきますので、出会える確率は徐々に低くなります。禁漁期間が迫るため、釣行の際は各漁協の規定を必ず確認する必要がある。

イワナの釣り方

渓流ミャク釣り

竿/糸/目印/オモリ/ハリというシンプルな仕掛けで、自然の川虫やイクラなどをエサにして釣る、日本古来の伝統的な釣法。イワナが潜んでいそうなポイントの上流に仕掛けを投入し、エサが自然に流れるように演出するのがコツだ。アタリは「ミャク」と呼ばれる手元に伝わる感触や、目印の動きでとる。

仕掛け例

  • 竿:5.3m~6.1m程度の渓流竿(硬調または超硬調)
  • 道糸:ナイロン 0.4号~0.8号
  • 目印:ナイロンやPE素材の視認性の良いものを3~4個
  • オモリ:ガン玉B~5B(流れの速さや水深によって調整)
  • ハリス:道糸通しか、0.3号~0.6号を30cmほど接続
  • ハリ:渓流バリ 6号~8号
  • エサ:キンパクやヒラタなどの川虫/ブドウ虫/ミミズ/イクラ

ネイティブトラウト

ルアーやフライ(毛鉤)を使ってイワナを狙う、ゲーム性の高い釣法。キャストの正確性や、ルアー/フライを巧みに操るテクニックが求められる。岩陰や流れのヨレなど、ピンスポットを正確に狙うことが釣果に繋がる。

仕掛け例(ルアーフィッシング)

  • ロッド:5フィート前後のトラウト用スピニングロッド(ウルトラライト~ライトアクション)
  • リール:1000番~2000番クラスのスピニングリール(ハイギアモデルが有利)
  • ライン:ナイロン 4lb~5lb、またはPE 0.6号+ショックリーダー 4lb
  • ルアー:
    • ミノー(4~6cm):シンキング/ヘビーシンキングタイプ。トゥイッチで誘う
    • スピナー(2~4g):ただ巻きでブレードが回転し、広範囲にアピールできる
    • スプーン(2~5g):流れの中でヒラヒラと舞い、弱った小魚を演出する

4~5cmのミノーや小さいスピナー、スプーンで狙うのもゲーム性が高く人気。

仕掛け例(フライフィッシング)

  • ロッド:7~8フィート、#3~#4番のフライロッド
  • リール:ロッドの番手に適合したフライリール
  • ライン:WF(ウェイトフォワード)のフローティングライン
  • リーダー/ティペット:5X~7X程度
  • フライ(毛鉤):
    • ドライフライ:エルクヘアカディス/パラシュートアダムスなど(水面に浮くタイプ)
    • ニンフ:フェザントテイル/ヘアズイヤーなど(水中に沈むタイプ)

虫に模したフライで狙えるイワナ。

イワナの食べ方

イワナは清冽な水で育つため川魚特有の臭みが少なく、上品な味わいが特徴。ややタンパクな食味。さまざまな調理法で美味しく食べることができますが、源流部の魚は数が限られており、釣り人による釣獲圧で簡単に絶滅に追いやられます。食べることは否定しませんが、必要な尾数だけを持ち帰り資源保護に努めることも、天然魚が年々減りつつある昨今の釣り人の嗜みといえます。

臭みが少ないイワナは塩焼きや唐揚げなど、さまざまな料理で楽しめる。

塩焼き

イワナの食べ方としてもっともポピュラーで、そのものの味を堪能できる調理法。ヒレに飾り塩をして、炭火やグリルでじっくりと焼き上げる。パリッとした皮と、ふっくらと柔らかい白身は絶品。

唐揚げ

やや小ぶりのイワナは、頭から骨まで丸ごと食べられる唐揚げにするのがおすすめ。二度揚げすると骨までサクサクになる。塩コショウや醤油ベースの下味で楽しめる。

骨酒

焼き上げたイワナに熱燗を注いで作る骨酒は、釣り人ならではの贅沢な一品。イワナの香ばしい出汁が日本酒に溶け出し、体の芯から温まる深い味わいとなる。

刺身

寄生虫のリスクがあるため天然のイワナを生食することは推奨されないが、管理釣り場で釣れたものや、信頼できる養殖場のイワナであれば刺身で食べることも可能。締まった身の歯ごたえと、上品な甘みを楽しむことができる。

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