アユ同士の白熱のナワバリ争い!? 棲みかを守る生存競争 水中写真で見るサカナの生態:アユ編



海の中はどうなっていて、どんな魚がいるのだろうか。魚たちが暮らす場での、そのリアルな生活を垣間見たい。そんな思いで水中に潜り、撮りためた写真を集大成しました。アユは日本の代表的な清流魚。川底の石につくコケを食べるので、コケがよくつく石はアユの大切な食生活の場。だからよい石があると、ここはオレのナワバリだぞ! と言わんばかりに石を守る。この習性を利用したのがいわゆる「友釣り」なのです。

(※本原稿は『水中釣魚ワールド』からの抜粋です。)

水中写真で見るサカナの生態:アユ編

【Target Profile】

アユ

北海道から九州まで全国の河川などに分布しているアユ。清流の女王と呼ばれるほど清楚で気品のある川魚だ。1年で一生を終えるいわゆる「年魚」で、小アユが春に海から遡上して川で成長。秋には産卵のため再び川を下る。

川の中では絶えず熾烈なナワバリ争いが!?

アユは川底の石に付くコケを食べて生きている。コケがよく付く石は、アユの大切な食生活の場。だから、よい石があると、ここはオレのナワバリだぞ! と主張して石を守る。接近するアユがいれば必死で追い払う。

良質なコケが付く石には追いのきつい元気なアユが付く。よそ者がきてコケを食おうとすれば追い払う。

水中で見ると、アユたちの興味深い行動が分かる。日がよく当たるめぼしい石には、たいてい生きのいいアユが付いている。中小の石が多い川だと、アユは複数の石をナワバリにしてパトロールしていたりする。そこへ迷い込んでくる他のアユたち。彼らもよりよい食生活の場を求めて、必死で模索中なのだ。

石に付いたコケをはむ野アユ。陸上から見ればキラッと光って見えることもある。


アユは相手の尻ビレ付近を狙って攻撃しあう

そしてナワバリを持ったアユと迷い込んだアユが出会う。アユはたがいに相手の尻ビレ付近を狙って攻撃しあう。ときには2尾が尻ビレを狙いあって、同じ場所でクルクルと回り出すことさえある。追いつ追われつ、そんな光景が展開される。

ナワバリ争いはお互いの尻ビレ付近を狙って追い合う。クルクルと回るように争う。

アユのこの習性を利用したのが有名な「アユの友釣り」だ。

アユのナワバリにオトリアユ(友釣り用の仕掛けを装着したアユ)を入れていくと、ナワバリの持ち主は当然それを追い払いにかかる。これに反応してオトリアユが反撃にでると、ハリ掛かり。しかし、オトリアユが弱々しく泳いでいるだけならばニアミスの連続で、ハリにはなかなか掛からない。

活性の高い追いのきつい野アユだと、オトリからかなり離れていてもナワバリを守るためにかっ飛んでくる。

水中で友釣りシーンを観察していえると、ナワバリアユとオトリアユとのニアミスは数えきれないほどある。オトリアユの前や横を通過したり、上を通過したり、ニアミスのパターンもいろいろだ。当然のことではあるが、掛かるという結果に至るには、オトリアユに付けられている掛けバリにナワバリアユが触れなければいけない…。

元々このナワバリのヌシだったアユがオトリなので、侵入者への反骨心はすさまじい。掛かる直前のシーン。

川中にはナワバリアユや他にも多くのアユがいて、オトリアユとのチェイスは少なくとも1分間に1回以上はある。ナワバリアユを見つけてオトリアユを入れているから当然といえば当然なのだが、その多くはナワバリアユからの攻撃だった。しかし、撮影後、オトリアユを操作していた釣り人にこの話をすると、それほど多くのチェイスがあったとは思っていなかったという。

透明度が高い川では、石を守るアユの守備範囲も広い。3mも向こうからすっ飛んでくることもある。写真は三重県銚子川。

(※本原稿は『水中釣魚ワールド』からの抜粋です。)

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