見た目はカツオ食べると絶品トロ!幻のレア魚「スマ」見分け方を解説。養殖はしてる?

カツオとひと口に言っても、実は様々な種類が存在している。ただ、一般的によく市場に流通するカツオは、ホンガツオやマガツオなどと呼ばれ、他のカツオと区別される。このカツオに見た目はよく似ているなのだが、食味はカツオをはるかに凌ぐ旨さの魚が存在することをご存知だろうか? 本記事では、その幻の魚を紹介。

●文:ルアマガプラス編集部

釣り人には認知度が高いが、一般的にはあまり知られていないスマ(ガツオ)

釣りをする人の中では認知度が高いが、一般的にはあまり知られていない魚、スマガツオ。正式には「スマ」なのだが、俗称として「スマガツオ」と呼ばれることも多い。

カツオが市場に広く流通するのに対して、スマは市場にはあまり出回りにくい。これは、カツオに対してスマの漁獲量が少なく、捕れたとしてもほとんどが地元で消費される傾向にあるからだとも考えられ、場所によってはホンガツオよりも食味が良いため珍重されている。

ではなぜ、漁獲量が少ないのか? その要因の1つとして、スマの習性が考えられる。カツオが大きな群れを作って回遊、移動する一方で、スマは少量の群れで回遊するため、安定した漁獲量を得にくいということもあるのだろう。

ルアー釣り(ショアジギング)で釣れた小型のスマ。場所は五島列島の北端にある宇久島。すぐにルアーを入れ直したが、釣れたのはこの1尾のみだった。

スマを釣ったことがある人ならご存知かも知れないが、この魚は狙って釣るというのが難しく、また、たとえ1尾釣れたとしても、後が続かず、単発で終わることが多い。これはつまり、群れの規模が小さく、偶然良いタイミングでスマの群れに遭遇したときに釣果が得られるが、次にルアーや仕掛けを投入しても、スマの群れが小規模なためすでに通り過ぎてしまっているのだとも考えられる。

スマ

[スズキ目サバ科スマ属]
地方名や俗称として「ヤイト」「ホシガツオ」という呼ばれ方もある。これは、スマの特徴でもある胸ビレ下の斑点に由来。食味は非常に良いことで有名。カツオとは違い、大きな群れを作らず回遊するため、漁獲量は少ない傾向にある。

カツオ

[スズキ目サバ科カツオ属]
普段目にするのがこのカツオ。他の種類と区別するために「ホンガツオ」や「マガツオ」とも呼ばれる。酸化・劣化が早いとされる。スマとは違い、大きな群れを形成して回遊するため、安定した漁獲量を得やすい。

スマの見分け方

フォルムや鱗の形状などから一見カツオにも似ているように見えるが、両者を並べてみると模様が全く違っているのがわかる。特に、スマは背の部分に縞模様があるのに対し、カツオは腹の部分に横のラインが入っているので、見分け方は明確だ。

スマの外見的特徴1:背中の縞模様

スマで最も特徴的なのが、背中に入った縞模様だろう。この模様から「シマガツオ」と呼ばれそれが「スマ」に変化したという話しもある。

背中に縞(模様)があることから「シマガツオ」と呼ばれ、それが変化して「スマガツオ」と呼ばれるようになったという説もある。地方によってはヤイト(灸)という呼び名もあり、これは、特徴的な胸ビレ下の黒い斑点が、お灸をすえた跡のように見えるからだという。ちなみに、この黒い斑点の数や大きさは個体によってバラバラ。斑点が1つしかない個体もあるし、複数の斑点を持つ個体もある。

スマの外見的特徴2:胸ビレ下の斑点

スマのもう1つのわかりやすい外見的特徴は、胸ビレの下にある黒い斑点(赤丸で囲った部分)。この個体には斑点が1つだけだが、数や大きさには個体差があり、3個、4個と複数の斑点があるスマもいる。

食味はまさにトロ! とろけるような脂と旨味が絶品!

スマは食味が良いことでも知られている魚で、その味や脂の乗り方はカツオとは全くの別物だと考えた方が良いだろう。どちらかと言うとマグロのトロに近い味わいで、酸味が少なくクセがない、旨味と甘さがある脂が印象的。小型のものよりも大きいものの方が美味しい傾向にあるようだ。

釣れた当日に刺身で食べても十分に美味しい。3人でこの量があっという間でなくなった。ちなみに、スマの左にあるのはその日釣れたアオリイカのお刺身で、こちらも美味。

カツオと同様に劣化・酸化が早いため、鮮度管理は重要となる。筆者の体験では、釣ったその日に食べても非常に美味だった。適切な処理と鮮度管理で熟成した場合、食味にどのような変化が生じるのか? 筆者には知見がないためお伝えすることはできないのだが、興味深いところである。

写真は、ジギングで釣れたスマをその場で船長がさばいてくれたときのもの。手が滑るほど脂が乗っていた。

ワイルドにぶつ切りにしていく。

お醤油を豪快にぶっかけわさびをつけて完成。脂が乗っていいて美味。

スマの養殖がすでに始まっており、2019年からは市場にも流通

ここまで、スマは非常にレアな魚で市場流通量が少ないと説明してきたのだが、実は、愛媛大学がスマの完全養殖に成功しており、すでに2019年から「媛スマ」として市場にも流通している。主に都市部のスーパーや料亭などに出荷されているという。

スマは成魚でも2kg程度と、マグロなどに比べて養殖がしやすいのが特徴。

ただ、まだその流通量は多くなく、希少なことには変わりないようだ。今後、スマの養殖の技術がさらに向上してさらに規模が大きくなれば、身近な回転寿司店やスーパーなどでも「媛スマ」を目にする機会が増えるかもしれない。天然のスマと養殖のスマ、その違いを是非味わってみたいものである。

愛媛県産の養殖スマは「媛スマ」としてブランド化を目指している。良質で育成の早い個体をかけ合わせる選抜育種で品質と安定した出荷量を実現する計画。

※この項目で使用した2点の写真の出典:農林水産省


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