《保存版》魚が劇的に美味しくなる! 津本式・究極の血抜き完全マニュアル

さて、2023年4月24日に発売の『津本式・革命魚レシピ』の発売を記念しまして、まずは、津本式の方法について解説したいと思います。津本さんのYouTubeと合わせて見ていただければ、理解が深まると思います。

●文:ルアマガプラス編集部(深谷真)

2024 シーバス特集

津本式とは?

津本式とは、宮崎県の長谷川水産に所属する津本光弘(つもと・みつひろ)さんが考案した、魚の仕立て方を指します。この仕立て方には『究極の血抜き』と呼ばれる、ホースと水を使った灌流血抜きを主軸とした血抜き技術を施すことで、魚の保存力を劇的に高めることができます。また、従来、活魚(生きた魚)の状態でしか施すことができなかった血抜き術を、死魚の状態で施すことができることから注目されています。

津本光弘(つもとみつひろ)

『津本式・究極の血抜き』の開発者。宮崎県の⻑谷川水産で魚卸しを生業にする傍ら、水産業界の革命とも言える、水道水を魚に灌流することで、死魚でさえ血抜きを行える「究極の血抜き」の技法を開発。その技法を体系化し、水産の現場でローコストで効率よく活用できるようにしたのが「津本式」。

YouTubeで技術の発信を無料で行いながら、その技術の啓蒙に務める。理念は、「魚を余すことなく食べ尽くすこと。食べる人が笑顔になること」。株式会社水流を立ち上げ、プロ向けの商品なども展開する。

津本式に必要な道具は何ですか?

津本式を行うために最低限必要な道具は包丁などの調理器具を除けば、ホースのみとなります。つまり、どなたでも簡単に行えます。ですが、津本式は水産の現場、飲食の現場などで効率的に処理を行うためにさまざまな専用の器具が開発されています。

こちらの器具を揃えていくことによって、ひと処理に必要だった時間が秒単位で短縮されていきますので、プロの現場では欠かせないアイテムになっています。逆説的に言えば、時間を追及せず、処理の精度を必要以上に追い求めない場合は、これらの器具は必要ありません。

こちらでは、最近、津本さんが現場で好んで使用している専用アイテムをいくつかご紹介します。そのほとんどが津本式の公式サイトで購入が可能です。

ホース/津本式の技術の根幹を支える道具

ホースも必要なのですが、ホースをつなげるためのシンクも必要になります。水産の現場などではさほどそういった環境を見出すのは苦労しませんが、最近の一般家庭ではそのホースをつなげるための蛇口が無かったりします。繋げられる蛇口があれば、一番に用意したいのがこのホースです。ここから水を流し、血抜き処理を水の力で行います。

津本式の中の血抜き技法『究極の血抜き』を行うために必要な道具。

ウォーターシューターとノズル

元々はエアダスターのアタッチメントを使用していたが、そもそも水を使って使用することを想定していない道具であったことから、耐久力や錆の問題が浮上。そこで、水を使うことを前提としたアタッチメントを津本さんが開発しました。こちらは、主要な道具となる津本式血抜きノズル各種や、血合取りリムーバーなどを接続するので、プロユースアイテムとしては、用意しておくことをお勧め。優先度が高いアイテムとなっています。

ウォーターシューターとは右の黒いアタッチメントのこと。左が血抜きノズル。

各種専用ノヅル(ノズル)/津本式ノヅル

尾を切断後、露出した血管にこのノズルを差し込み、水を噴射することで圧迫血抜きを行う。そのための道具。また、活魚に対しては神経締めを行うために、神経穴に同じくこちらを差し込み、水の噴射による圧力で神経締めを行う。ノズルには現在5種のサイズが用意されているが、使い勝手が良いのは1.5と1.8のサイズ。こちら、『究極の血抜き』の補助的役割を担う血抜きで、商用のため、より高い精度の血抜きを行ったり、血の臭みを徹底的に排除し、魚本来の味をより繊細に引き立てる必要のあるような料理に魚を使う場合や、長期の熟成を意識した魚を仕立てたい場合などに必要になる。また、内臓周りの血をより精度高く抜きたい場合は尾からのノズル血抜きが推奨されています。

各サイズ使用の目安は下記の通りです。(津本式.comより抜粋)

ノズルサイズ参考サイズ対象の魚
φ1.1 100g~300gアジ、イワシ、カサゴ、小型のうなぎ・アナゴ
φ1.5 400g~800gチダイ、イサキ、小型ハタ系、チヌ、サバ等や、うなぎ・ハモのような長物
φ1.8 800g~4.0kgオールマイティなサイズ。汎用性が高く「一本だけ」購入・使用するならコレ。
φ2.0 1.0kg~4.0kgタイ、石鯛、フエダイ、中型ハタ等
φ3.0 2.0kg~5.0kgブリ、カンパチ、カツオ、比較的大型魚
φ4.05.0kg以上カンパチ、ブリ、ヒラマサ、クエ、オオニベ、ランカーシーバス等の大型魚

血合取りリムーバー

元々は、津本式の処理の過程で、血合肉を掃除する工程があります。血合肉を露出させ、そちらを取り除いていくのに、後ほど紹介するTINY血合ウロコ取りなどを使っていくのですが、それだけの処理では細かな血合が取り除けないことがありました。

それ自体が品質に影響するわけではないのですが、津本式といえば、高い精度で血を抜く技術と喧伝されていますから、血合肉が残っていると商品価値が下がる側面があります。そこで、水圧を使って細かな血合や内臓の残り滓を掃除する器具として、このリムーバーが開発された経緯があります。

しかし、うまく加減を調整しながら使用すればこのノズルを使って血抜きも可能であることが開発途中で分かったため、ある意味、究極の血抜きもこなすことができる汎用性の高い器具として重宝されるようになります。津本さんのようなプロの水産の現場では、1日に大量の魚を処理する必要があります。このリムーバーはそういった処理の速度を向上させ、精度の高い掃除を可能にしたアイテムです。

血合取りリムーバー用ノズル

こちらは、血合取りリムーバーの先端に装着するノズルで前述した『津本式ノヅル』と機能的には同等品になります。津本式のルーティンの中で、なるべく器具の交換などの時間や工数を短縮したいという津本さんのプロならではの目線で開発された道具です。津本式ノヅルを所持している方はそちらで十分、行いたい尾からのノズル血抜きは可能です。

TINY血合いウロコ取り

以前は少し大型の血合取りを使用されていた津本さんですが、最近はこのTINYを多用される傾向が強いです。背骨の下の血合い肉の書き出しから、内臓処理。その名の通りウロコ取りと活躍します。ホースと繋げて水を流しながら処理することも可能になっています。

アサシンナイフ

津本さんが、津本式を効率的に行うために徹底して機能を煮詰めたナイフ。まさにプロ向け。魚を締める、内臓を処理する、叩くなど仕事として津本式をスムーズにすすめていくために先鋭化されています。これが必ず必要かと問われれば必要はないですが、『津本式』を行う上ではその効率が格段に上がるナイフといえます。元々は個人用にワンオフ品として開発したナイフですが、あまりにも購入したいというエンドユーザーが多いため、現在も少量生産され販売されています。

価格は3万8500円。締めて切って仕立てる。津本式をスムーズに行う細かなデザインが魅力。

ルアマガからはアサシンナイフJr.と呼ばれるオリジナルのアサシンナイフの汎用品が販売されていますが、こちらは原価が元々高いアサシンナイフのオリジナルが少量生産で手に入りにくく高価なので、手に入りやすい汎用品を開発しましょうという流れで作られたものです。オリジナルよりも安価なので、気軽に釣りなどの現場で使っていただけるように、丈夫な構造になっております。オリジナルよりも、フィールドでの使用感が良くなるようにデザインアップされています。

4-5mm厚のステンレス鋼を使用し、フィールドワークでの使用を想定したアサシンナイフJr.価格は14080円。アウトドア用途にも最適。

津本式手順/目利き

津本式のスタートはここから。津本式といえど魔法の技術ではありません。死魚に処理を施せるといっても、鮮度が低く状態の悪い魚に処理を行ったところで、やらないよりやったほうがマシ程度にしかなりません。

基本的に、津本さんは『お客さん』に満足していただける良い魚を、選んで処理されている。と考えて良いでしょう。つまり、目利きは津本式の工程で非常に重要な工程です。良い魚を選ぶことで、その魚の持つポテンシャルを最大限に引き出すことができる処理というのが津本式であるとご理解ください。

例えばですが、鮮度状態が悪い魚、保存状態の悪い魚に津本式を施すと、場合によっては身に水が回ったり、看過できないレベルで血管から水が漏れる可能性があります。血管への水の圧迫灌流を主軸とした技術ですので、劣化がすすんでいない魚を処理することが肝要です。

仮にある程度、鮮度状態が悪い魚を使用し、津本式で仕立てた場合、上記のような現象が起こったとしても、それをリカバリーするために水を抜いたり処理する工程が存在しますので、そのような魚に津本式を施すと魚がダメになるというわけでもありません。ですが、津本式のポテンシャルを活かす結果にはならないかもしれません。

津本式手順/脳締め

さて、まずは魚を締める作業です。とはいっても、釣った魚や活魚の処理で必要な工程となります。すでに絶命している場合は、あえてこの処理をする必要もありません。

エラの線とエラの内側の線の交点が、だいたいどの魚も脳の位置になる。そこにナイフを入れて倒して締める。

続く神経締めの処理をする際に、脳の位置を締めておくとで神経組織の排出などが可能にはなりますので、この処理を絶命している魚に施すこと自体は無駄な作業ではありませんが、本来、なぜこの処理を行うのかという部分とは少し要点がずれてきます。

この処理は、生きている状態の魚の脳を破壊することで、生命活動を停止させることが目的です。

なぜ、生命活動を停止させる必要があるのかというと、魚は水中という生活圏から離れてるといずれは死んでしまいます。しかし、その死に至るまでにATP(アデノシン三リン酸)と呼ばれる生命エネルギーを消費しつつ死に向かいます。このATPは、魚の生命活動が停止するとともに、イノシン酸という魚の旨み成分に変化していくのです。つまり、たくさん残ってる方が旨みになる成分が残っているという簡単な解答に行き着くと思います。

そうです、エネルギーをなるべく使わせないうちに魚を絶命させることが大事な理由がここにあります。魚を生け簀などに入れて体力を回復させる手法もあるのですが、期待した効果を得るためには知識も設備も必要になりますので、釣ったり採った魚は、なるべく早く脳締めするというのがシンプルな処理の方法です。現場ではこの後、魚をしっかり冷やし込みます。現場では神経締めをこの後に行う場合がありますが、今回は津本式のスキームを優先して解説します。

津本式手順/エラ膜切り

ホース血抜きのための下準備となります。魚のエラを捲し上げると、エラにそって膜が見えます。これが便宜上、『エラ膜』と呼称している部位になります。エラの上端部側にナイフ、もしくは包丁の刃を逆刃に返して突き立てます。狙うのは背骨の下に通る腎臓と動脈を切ることです。

ちょうどエラの上端部、背骨の下に穴を開けて、背骨下の腎臓、血管をカットします。

軽く背骨下を撫でるだけで腎臓と血管はカットされます。この作業で空いた穴を覚えておいてください。

よく、エラを切ればいい。と、勘違いされる方がいらっしゃいますが、エラを切るだけでは一部の血管が損傷しているだけで、狙っている部位が切れていないことがあります。ですので、逆刃を使って背骨に刃を当てることを意識してください。どこを切るかが理解できていないと、血管ではなく別の部位に水を圧迫灌流することになり、場合によっては身割れなどの現象が起きてしまいます。

津本式は非常に簡単に出来る反面、魚の構造に沿って仕立てられる技術ですので、正しい理解が必要になります。このエラ膜切りは津本式の処理において重要な工程ですので、しっかりとマスターしておきましょう。

津本式手順/尾のカットからノズルによる神経締め→ノズルによる血抜き

次に尾をカットします。これは後の『究極の血抜き』における圧力調整のための血管のカット、および津本式ノヅル(ノズル)を使った血抜きのための動脈の露出と神経部位の露出を目的としています。

この露出すべき動脈穴と神経穴は背骨の上下に沿ってありますので、そこを露出させるとよいでしょう。

尾をカットして動脈穴と神経穴を露出させる。便宜上動脈穴しかイラストには書き加えておりませんが、静脈も並走しています。基本的に組織的に細く視認しにくいこと、ノズルを差し込みにくい構造であることから動脈穴しか明記しておりせん。

まず、神経穴にノズルを差し込みます。神経穴にはワイヤーなどを差し込み神経締めするのが今までの方法でした。なぜ、津本さんがこのノズルで神経締めを行うかというかと、次の血抜きノズルの作業をするのに、器具を持ち替えなくていいからです。もちろん、脳締めした際の頭の穴から神経を排出する目的もあります。以前はこちらも腐る部位になるので、なるべく取り除きましょうと解説しておりました。厳密にいえばそういった側面もありますが、神経さえしっかり潰れていれば、遅延性痙攣が起こるのを抑えられますので、水圧による神経締めを必ずしなければいけないというわけではありません。津本さんご自身も、ワイヤーによる神経締めを行われる場合も多々あるようです。

この神経締めも寝かせや熟成が進めば、その差がわかりすくなってきます。釣ってすぐ、とってすぐ食べるという場合に神経締めの意味を問われれば、意味がないとも言えますが、そうはいっても神経締めが行われておらず、魚の暴れなどにより物理的に身が傷んでしまっては食味を損ないますので、可能な範囲でこの処理を行うことは無駄ではありません。

骨の上側に露出した神経穴にノズルを差し込み、2〜3秒水を注入する。

動脈穴については、骨のすぐ下側にある。そこにノズルを差し込む。身に張りが見えたら中断。

次に、動脈穴にノズルを差し込み、水を注入します。血管から水が周り張りがでてきたら水の注入を止めます。比較的強い水圧を血管から注入しますので、断続的に圧力を調整しながら処理するなど、魚の状態やサイズなどをみてコントロールします。楽しくって、水をこれでもか!と注入すると、イメージとしては容量の少ない風船を膨らませていくようなものですから、魚にダメージを与えかねません。繊細さが求められる工程とも言えるでしょう。やりすぎはとにかく注意しましょう。

こちらの血抜きは構造的に内臓への水の灌流がしっかりと行われますので、内臓類などを血抜き処理したい場合にはやっておきたい血抜きです。場合によっては省くこともあり、津本さん自身も100%の血抜きを120%にするための補助的血抜きであると明言されています。長期の寝かせ、熟成を目指す場合はこのほんの少しの血抜き精度向上が美味しさにつながる可能性がありますので、魚を食べる着地点を見て処理を行なっていくことも大事です。

津本式手順/究極の血抜き(ホース血抜き)

ノズルでの血抜きが終わったら、エラ膜切りで開けた穴を指でさぐり、そこにホースを当てて流水を流し込む。これもノズル血抜きと同じで、身の全体に張りが出たら終了。ホースから出る水の量は、魚のサイズや種類、状態などで加減するが使用する水の量は多くないため、適切な圧力をかけられる程度の水量で処理すること。イメージとしては、ジョボジョボからドボドボの間くらいの水量で十分です。穴にホースを当てっぱなしにせず、当てたり離したりを繰り返しながら、血管や腎臓に送り込む水の量を調整したりします。

ホースをナイフや包丁で開けた穴に当てて水を流し込んでいく。

切断した尾から血が出ることがありますが、出なくてもOK。基本、メインとなる動脈や腎臓に水を送り込み、全体の血管に水が行き渡れば、あとは浸透圧による溶血作用で血が流れ出ます。

原理としては、太い血管に真水を流し込むことで浸透圧による溶血を促し、毛細血管などから脱血を行います。続く脱水処理と合わせることで、体内から血抜きに使用した水と共に血を抜き去ります。魚の血液量は多くて魚の自重の5%程度ということですから、使用する水量はさほど多くなくて良いことがわかります。

津本式/エラ外し

究極の血抜きで処理した後、次は魚のエラを外していきます。エラはプラモデルのモールで接続されているようになっています。ざっくりとした言い方で解説すると、エラの上端部左右2箇所、エラに沿うように接続されている薄い膜(左右)、そして、顎の部分の筋、喉の天部あたりで支えられていますので、それらをカットしていけば簡単に外れます。

エラの上端部に刃を入れてエラの形に刃を添わすように入れていく。 [写真タップで拡大]

喉元まで撫でるように薄い膜を裂いていく。 [写真タップで拡大]

最初の難関。喉元の筋に刃をいれて切り込む。 [写真タップで拡大]

逆側の幕も刃を沿わせて剥いでいく。 [写真タップで拡大]

エラを下側にひっぱりながら、喉の天部に筋のようつながっている部分に刃を入れて切断する。筋に対して直角になるように刃をあてると切り離しやすい。 [写真タップで拡大]

喉の天部の筋を外せば基本、エラを引き剥がせる。 [写真タップで拡大]

心臓の膜と呼んでいる喉元と内臓を繋いでいる壁のような膜をナイフを逆刃に入れて突き切っておく。同時に背骨下の腎臓の膜を裂いておくと後での作業がしやすい。この処理の時になるべくニガ玉(胆嚢)を傷つけないように注意。刃を入れたあとは指などで、心臓の膜の部分を掻き切っておくと、後ほどの内臓処理時にスムーズに内臓が取り除けるようになる。

津本式手順/内臓の処理

エラの処理を行った後に、内臓を処理していきます。津本式では、寝かせや熟成などの処理を念頭にすることが多く、極力、切断部を少なくする工夫が処理時に行われます。

これは、刃物などの切断面から酸化や腐敗が進みやすいからです。なるべく過食部を多くとるために、そういった気遣いがなされます。逆にいえば処理後5〜7日程度、もしくは数日のうちに食べてしまうのであれば、そこまで厳密になる必要もありません。ですが、やれることをやっておけば、確実に保存時間は伸びます。

まず、肛門部に刃を入れます。 [写真タップで拡大]

腹鰭のあたりで刃を止めます。長期の寝かせや熟成を意識しない場合は、処理がしやすいように顎のあたりまで開いても問題はありません。 [写真タップで拡大]

開腹したら、指で肛門部あたりと接続されている腸を指で掻き切る。 [写真タップで拡大]

そのまま内臓を取り出します。このとき、エラ側からホースを入れ、流水と共に処理をしていけばその水圧で内臓が取り出しやすくなりますし、胆嚢などの臓器を傷つけてしまった場合もその匂いが身に移りにくくなります。流水をこのタイミングで使ったところで、魚が水っぽくなることはありませんのでご安心ください。 [写真タップで拡大]

津本式手順/腎臓の掻き出し、血合い掃除

内臓をとりだしたら、背骨の下にある腎臓などの臓器を掻き出します。ちょうどそこを保護するように膜が張っておりますので、それをナイフや包丁まずは掻き切り、露出させて血合取りリムーバーや、TINY血合取りなどで掻き出すことになります。この保護膜が残っている状態であれば内臓を処理した後の魚であってもある程度のホース血抜きができますので、応用的に覚えておくと良いでしょう。その膜内で水圧を維持できるのである程度血抜き処理ができます。

背骨下の膜を刃を入れて割く。全体の開腹をしないので、エラ処理時で逆刃で入れたカットが生きてくる。 [写真タップで拡大]

しっかりと全体が掃除できるように、カットしたらささらやTINE血合ウロコとりなので腎臓を掻き出していく。 [写真タップで拡大]

血合取りリムーバーなのどもつかって、汚れをきれいにする。 [写真タップで拡大]

あとは、流水などを使いながら全体を掃除する。 [写真タップで拡大]

津本式手順/立て掛け(脱水)

血合取りが終わったら、究極の血抜きや、ノズル血抜きなどで体内に入れた水を脱水する。主要な血管内に巡った真水が血栓を溶かし、毛細血管を含めた部位の血液の脱血を促す。15〜30分程度、写真のように頭を下に向けて放置する。

極論をいえば、よほど状態の悪い魚でない限り、ミスによって体内に漏れ広がった余分な水分をこの工程である程度排出することができます。この処理を行わず、津本式は水っぽくなると言われる方がいますが、この処理は必ず行ってください。この後にも脱水を促す処理はありますので、ある程度、リカバリーは可能ですが、ここでの処理が脱水としては重要な役割を担っています。

頭を下にして、脱水と脱血を促す。

津本式手順/リードペーパーなどで魚を巻く(保存準備)

立て掛けによる脱水をしっかりと行ったら、キッチンペーパーや保護紙などに巻きつけ、魚をビニール袋に脱気梱包する。キッチンペーパー系は寝かせている最中にドリップされた水を吸い取る役目。保護紙は、運搬時やビニール保護のために巻き付ける。

最近、津本さんはW-PHマット(エフピコ)などの、一旦給水すると吸い戻しが起きにくいペーパーなどの使用を開始しており、さらなる鮮度維持の研究が進んでいる。

リードペーパーなどの給水力のあるペーパーを魚に巻き付ける。最初の数日間はドリップが起こるのでこのペーパーを交換していくと雑菌などの繁殖、吸い戻しなどを防げます。 [写真タップで拡大]

グリーンパーチ紙を巻きつけます。こちらは一般家庭などでは省いても問題ありません。魚の保護、搬送時の保護などが目的になります。 [写真タップで拡大]

厚めのビニールに魚を入れてホースなどで空気を抜きます。魚のサイズによってはジップロック系で行ったりもします(家庭向き)。その場合はストローなどで脱気します。 [写真タップで拡大]

しっかりと脱気して弱真空状態にします。 [写真タップで拡大]

この状態にすることで、不用意な酸素との接触を避けることができ、魚の長期保存が可能になります。業務を意識した方法ですので、この処理をラップなどで行う方法をとる料理人の方もいらっしゃいます。 [写真タップで拡大]

脱気は行いますが、不必要に圧を与えると魚の負担なりますので、脱気状態は加減すると良いでしょう。この後、津本さんは水に魚を丸々沈める工程をとりますので、水が入らないようにしっかりと封をしておきましょう。 [写真タップで拡大]

津本式手順/水に沈めて冷蔵

弱真空状態にして袋に入れた魚を、冷蔵庫内に張った冷水のプール(津本さんは2度前後の冷水)に沈めて保存します。

  1. 水に沈めることで冷蔵庫の開閉などによる温度変化が起こりにくく安定した状態で冷蔵できる
  2. 水に沈めることで重力による偏りで身を痛めることが防げる
  3. 水に沈めることで身を適度に圧迫し、脱水を促すことができる。
  4. ビニールで覆って、酸素に触れないようにはしているが、そもそも酸素透過の問題もあり、完全には酸化を促す空気との接触を免れませんが、水に沈めることでそういった酸素透過もある程度防ぐことができ、より安定した保存が可能になる。

水冷保存にはこれだけのメリットがありますが、家庭でこれを行うハードルは高いという方も多いかもしれません。その場合は釣り用のクーラーボックスに氷を入れて擬似的にそういった状況を作り出すことができます。が、夏場などの温度管理には注意する必要があります。

メリットとデメリットを理解した上で、直接冷蔵庫で冷蔵保存をすることも検討できるでしょう。(1)についてはより温度変化が生じないように専用の冷蔵庫を使用するか、チルド室の温度を氷温にならないように利用するなどの方法が検討できます。(2)の問題はクッションなどを設置することである程度、回避できます。(3)の問題はより酸素透過率の低い素材でくるみ回避できるかもしれません。どちらにしろ、魚の調理の着地点を考えて工夫をすることができます。津本さんが言ってるから水に漬けなければいけないという思考停止に陥らないようにしましょう。

なぜこの処理をしているかということを理解すれば、より良い方法も見つかるかもしれません。

津本さんが所属する長谷川水産では、プラボックスに水を貼りそれを冷蔵庫に設置。そこに魚を沈めて上からタオルや毛布を被せます。そうすることで魚が不必要な圧力を受けずに全体が冷やされます。こういった方法が取れない場合の代替案も見つけ出すのが津本式の面白いところです。 [写真タップで拡大]

こういった保存時に魚のトゲなどでビニールに穴があいたりしないようにグリーンパーチ紙が役立ちます。 [写真タップで拡大]

冷蔵までが津本式。そこから先は『調理師』の領分。

ここまでが、津本さんの基本的な作業のルーティンとなります。基本ですので当然、応用も存在しますが、それぞれの所作がまさに空手の型のような意味を持ちます。それぞれの所作がなぜ行われているかを理解することで、省いても良い作業や、逆に応用するからこそ必要になってくる作業などもわかってくるはずです。

日々進化する津本式。それは、この基本ルーチンをどれだけ最適化していくかというところにひとつは向けられています。津本さんが開発する専用器具は日々の魚の仕立ての中で、数秒の時間短縮を実現するアイテムです。

上記の処理を行っておけば、魚の種類や状態によりますが、その魚の常識的な保存力を超えて鮮魚利用が可能です。ただ保存できれば良いわけでなく、なぜ保存が効くことによって食材としての価値が広がるかを理解することで利用の可能性が大きくひろがります。

この保存により、魚にどんな変化が起こっているかを理解しておかないと、『津本式をしたのに、魚が不味くなった』と評価する方もでてくるでしょう。そういった知識も含めて探究することで、『津本式によって料理の可能性が広がった』ことを実感できるはずです。

かなり、本家津本さんの処理の方法に寄った解説を行ってきましたので、家庭でも試せる津本式の方法についても、もう少し簡単に解説できればと思います。

アウトドアスパイスほりにし津本式

釣った魚を血抜きをすることで魚の保存力を格段に向上させ、魚の食材としての可能性を広げた津本式。このエポックメイクな処理法を開発した津本光弘氏の掲げる大きなテーマのひとつは魚を余すことなく食べ切ること。そこで魚用スパイスを模索した結果「ほりにし」とのコラボが決定!

ほりにし 津本式 白味噌

ひとつめの『白味噌』フレーバーは、その名の通り、味噌風味。お味噌もグルタミン酸系の旨味が強い調味料のひとつ。オススメは、味が画一化しやすい白身魚にどうぞ。主力となる塩味を囲むように、白味噌を主体とした調味料と、配合された様々なスパイスが相まって、味のレイヤーが広がっていくことに驚かれることでしょう。

ほりにし 津本式 わさび昆布

ふたつめの『わさび昆布』フレーバーは、その昆布の旨みと、わさびが持つ和風の辛味を厳選した塩に加え、まだ「若く」旨みが眠っている「鮮度の高い魚」でさえも、一気に味のボルテージを引き上げるようなパンチ力を有しています。

Amazon以外に購入できるショップ

Amazonには順次在庫補填を進めておりますが「ほりにし 津本式」はAmazon以外でも購入できます。ショップによっては、お一人様一本までと購入制限があるのでご注意ください!

売り切れてしまったらゴメンナサイ

販売開始をしたときには想像以上の人気ですぐにアマゾンから在庫がなくなってしまいました。限定品ということもあり、次の在庫を作る予定も今の所ないので売り切れてしまったら最後です。ぜひ在庫があるうちに購入してくださいませ!


※本記事は”ルアマガプラス”から寄稿されたものであり、著作上の権利および文責は寄稿元に属します。なお、掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。 ※特別な記載がないかぎり、価格情報は消費税込です。