アジといえば美味しい大衆魚でたくさん釣れる魚。アジの多い地域であれば堤防などからサビキ仕掛けで簡単に釣ることもできるが、大きいサイズのアジを釣るとなると、断然船釣りがおすすめ。特に黄金アジなどと呼ばれる美味しいアジがたくさん生息する東京湾では、20mほどの浅場狙いのLTアジ釣り(ライトタックルの意味)として大人気で、電車で行けて手ブラ釣行もOK、費用もお安くお手軽に楽しめる。東京湾など都市圏のLTアジ釣りを中心にアジの船釣りを紹介しよう。
●文:ルアマガプラス編集部
船アジ釣りのシーズン
東京湾LTアジ釣りシーズン
船釣りで狙うアジのシーズンは季節によって釣れ方が異なるが、近年東京湾では群れが常に留まるようになり年間を通して楽しめる。冬場は脂の乗った大型サイズ中心で数が少なめ、夏場は小型アジの大釣りが多くなるというイメージだ。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
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○ | ○ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ○ |
釣れるアジは高級魚!
マアジには沖の深場を回遊する沖合型と、浅場の瀬に留まる居付きの近海型の2種類がいる。釣りの対象となるのは近海型が中心。近海型は黄色みがかったアジで沖合型と比べると脂の乗りが良く、東京湾では黄金アジや金アジ、黄アジなどと呼ばれる高級ブランドアジとして知られている。
アジの船釣りに道具は必要ない?
最初はレンタルタックルがおすすめ! 借りられるものは借りてOK
アジ釣りは船釣りでも最も人気がある釣りで、ほとんどの釣り船で釣り竿やリール、寄せエサを入れるカゴがついた天ビンを貸してくれる。自前で専門的な道具を揃えたほうがより快適に楽しめるが、初めて挑戦するのであればレンタルタックルでもまったく問題ない。予約する際に貸道具の有無を確認してみよう。
LTアジ釣りに必要な道具(持ち物リスト)
自前でアジ釣りタックルを用意する場合に必要な道具や持っていくと便利なものをご紹介。
必要な道具 | 必要度 | 道具の解説 |
---|---|---|
汎用船釣り竿 | ◎ | オモリ負荷50号に対応する汎用船釣り竿かアジ釣り竿。 |
両軸リール | ◎ | 太さ1.5号の糸を100m以上巻ける両軸リール。 小型の水深メーター付きタイプがおすすめ。 |
釣り糸 | ◎ | 1.5号のPEライン。船によって太さが指定されている。 |
アジ釣り用カゴ付き天ビン | ○ | 40号を使用。ビシとも呼ぶ。借りられる釣り道具。 |
アジ釣り仕掛け | ○ | 現地の船宿で購入するのがベスト。 |
竿受け | ○ | 釣りがものすごく楽になる。竿を固定できるタイプで。 |
ハサミまたはナイフ | ○ | 血抜きに使う。より美味しく食べたい方はぜひ。 |
針外し | ○ | 危険魚対策やハリを飲まれた場合にあると便利。 |
クーラーボックス | ○ | 現地の船宿で発泡スチロールを販売している場合がある。 |
ライフジャケット | ◎ | 確実に借りられるが買ってもOK。着用が義務付けられている。 |
タオル | ○ | 手拭き用と沖上がり後用で2枚あると便利。 |
エサ | △ | 現地で貰えるか購入できる。アオイソメかイカを使う。 |
帽子 | ◎ | 日除けがないため熱中症対策は必要。 |
サングラス | ○ | 目が長時間海面の反射に晒されるため、保護用に。 |
防水ウェア | ○ | 魚やエサや海水などで、服は必ず汚れると考えよう。 |
食料と水分 | ◎ | かなり体力と水分を消耗する。水分は少なくとも1L必要。 |
酔い止め薬 | ◎ | 釣行前日にしっかり寝ることが船酔い対策に有効だ。 |
日焼け止め | ◎ | 日除けがないことと、 晴れていても曇っていても水面からの反射で日焼けする。 |
LTアジ釣り竿を買うなら、汎用船釣り竿かアジ釣り専用竿がおすすめ
自前で釣り竿を購入する場合は「長さ180cm前後」の「オモリ負荷50号」に対応する船釣り竿で、可能であれば軽量なものを選ぼう。竿の調子(釣り竿の曲がり方です)は「6:4」か「7:3」のものが標準的で使いやすい。
LTアジ釣りはオモリのサイズ40号程度の天ビン吹き流し仕掛けを使い、水深20m前後を狙う。一般的な汎用船釣り竿はオモリ負荷(使用できるオモリの重さ)20~100号程度の設定になっており、アジ釣り以外にも様々な釣りに使えるのでおすすめ。ライトゲームロッドなどとも呼ばれる釣り竿だ。
純粋にLTアジ釣り専用で使う場合はオモリ負荷20~60号程度に絞られたアジ釣り専用竿があり、アジ釣りには最適。
LTアジリールを買うなら、小型の船釣り用水深メーター付き両軸リールがおすすめ
自前でリールを購入する場合は、小型船釣り用両軸リールで、釣り糸の太さ1.5号が100m以上巻けるものがおすすめ(ほとんどのリールが対応している)。水深メーターは必ずしも正確な水深が測れるわけではないが、「前回と同じ水深」を狙うとか、少し違う水深を狙うという調整がしやすく、かなり釣りが楽になる。
電動リールという選択肢もあるが、狙うのは深くても20mほどなので手巻きリールでまったく問題ない。糸はPEラインの1.5号を購入してリールにセットしよう。
初めて両軸リールを買う場合、ハンドルの位置が左タイプか右タイプで迷いやすい。お好みの範囲ではあるが、右ハンドルはリールを巻きやすく、左ハンドルは利き腕で竿を持てるので魚をあしらいやすいと覚えておこう。
また、リールには同じモデルでもギア比が違うものが発売されていることがある。「ハイギアタイプ(Hと表記される)」はハンドル1回転で巻き取れる糸の量が増え、素早く仕掛けを回収できて投入回数が増えるが、巻き取る際に「重く感じる」ので疲れやすい。通常のノーマルギアタイプは巻き取り速度は遅いが、疲れにくい。好みなので、どちらを選択しても問題ない。
なお釣り竿を購入する場合はリールも購入をおすすめする。船宿のレンタルタックルは竿とリールがセットになっており、どちらかだけというパターンは少ないためだ。
LTアジ仕掛けを買うなら、40号のビシとハリ数2~3本のアジ船釣り仕掛けがおすすめ
LTアジ釣りの仕掛けは、天ビンにオモリ40号のコマセカゴ(寄せエサを入れるカゴで「ビシ」とも言う)をセットした吹き流し仕掛けを使うのが一般的。天ビンとビシは使用後にかなり汚れるため借りたほうが楽だ。自前で購入する場合、カゴが大きいものを使うと1回の投入で長い時間釣れるようになり、水中で様々な駆け引きを試しやすく、釣果に差がつく大きな要素になる。ただし、小さいもののほうが扱いやすくなる。
仕掛けは2~3本のハリがついた船釣り用ビシアジ仕掛けを使う。釣り船は船ごとに釣行時の仕掛けの長さや太さ、ハリの大きさといった設定を自船で販売している仕掛けに合わせて想定しているため、仕掛けは現地の船宿で購入するのがおすすめだ。
仕掛けのハリ数は多いほうが魚を1回の投入で幅広い水深を狙えるので釣りやすい。ただしハリが少ないほうが糸が絡む心配が減るためかなり使いやすく、初めて挑戦する場合やトラブルを減らしたい人は2本針の仕掛けも選択肢に入る。
LTアジ釣りの釣り方
アジ釣りのエサの付け方と使い方
エサはゴカイのアオイソメをつけるのが一般的。なぜかアジはゴカイがものすごく大好物。ハリから外れにくいので何度も使いまわしできることもある。
イソメはハリに引っ掛けるだけの「ちょん掛け」か、胴にハリを通す「通し刺し」でエサをつけ、1cmほど身を垂らそう。あまりにも小アジばかりが釣れる場合は敢えて垂らしを長くして小アジが食べにくいようにして中アジを狙う方法があるが、この場合はイシモチやカサゴといった口の大きいゲストもよく釣れるようになる。
イソメを使わなくてもよく釣れるようなアジの活性が高い場合は、赤タンと呼ばれる食紅で赤く染めたイカの切り身を使う。活きエサではないため扱いやすく、何度か使えるので手返しが良くなる。
寄せエサ(コマセと呼ばれる)は東京湾では一般的にイワシのミンチを用いる。これをカゴに8分目ほど詰めて使う。詰め過ぎるとエサが詰まってかえって釣りにくくなるので注意しよう。
アジの釣り方
船が釣り場に到着したら仕掛けを下ろしていく。船長から「タナ(アジのいる水深)は底から1.5(m)」などと、狙う水深が指示される。これは、仕掛けを海底に落としてから1.5m巻き上げた位置に仕掛けを漂わせてくださいという意味(つまり仕掛けは船宿で売っている指定のものを使うのがベター)。指示ダナは海底の状況や魚の活性によって頻繁に変わることがある。船長のアナウンスはよく聞くようにしよう。わからなければ船長に聞くと丁寧に教えてもらえる。
仕掛けが海底についたらリールのクラッチを固定し、竿を数回あおってコマセを撒きながら、仕掛けを指示ダナに固定。さらにエサを3回ほどあおって待ってみよう。こうすることでちょうど仕掛けがコマセの煙幕にかぶさり、夢中になってエサを食べに来たアジがイソメを食うという寸法だ。
アジがエサに食いつけば竿が震えてアタリが分かるはずだ。他の釣りで見かけるような竿をあおってハリに掛ける「アワセ」を入れる必要はない。リールをゆっくり巻き上げて取り込もう。
1分待ってもアタリがこなければ軽く竿をあおってエサを撒き様子を見て、それでも何もなければ仕掛けを回収してエサを詰め直してやり直そう。一般的にはコマセが空っぽのまま長く待つより投入回数を増やすほうがよく釣れることが多い。
なお、アジの食いが渋い場合は軽く竿をあおることで「誘いを入れる」と、エサがふわっと浮く動きに惑わされて食いつくリアクションバイトで釣れることもある。
なかなか釣れないような日は、タナを少し変えてみる、コマセをガンガン撒く、エサの大きさを変える、針数を増やす、誘いを入れる、あるいは全く動かさないなど、あの手この手を試して釣れるパターンを探ってみよう。
釣れたアジの取り込みにご注意
アジの口はとても弱いため、アジが釣れたら仕掛けを掴んで魚をまっさきに船内に放り込むようにして取り込もう。このとき仕掛けが竿先までくるほどリール巻きすぎると竿が破損する可能性があるので、ビシをコマセの桶に置いてから仕掛けを掴んで魚を取り込むと安全だ。
30cm近い大きいアジは抜き上げると自重で口が切れてバレる(針から外れて逃げられる)可能性が高くなる。大型の魚が釣れたと思ったら船に常備されているタモ網ですくって取り込むようにしよう。隣の人が大きな魚をかけたときはタモ入れを手伝おう。
アジの連掛けに挑戦
アジのアタリがあったら50cmほど仕掛けを上げて少し様子を見てみよう。アジが暴れてきらきらひらめくことで周囲のアジの活性が瞬間的に上昇して、リアクションバイトのように2尾目のアジがかかることがある。こうなればしめたもの。連掛けの達成だ。
ただしアジの口は弱いので連掛けを狙って待ちすぎるとハリから外れてしまうこともあるし、魚が大きい場合は周囲の人と仕掛けが絡みやすくなるので注意しよう。
釣れたアジの美味しい処理の仕方
釣れたアジは海水氷でよく冷えたクーラーボックスに直接入れて「氷締め」にして保管するのが一般的。海水氷の低温で魚は素早く締まり、釣行中でも鮮度を維持しやすい。逆に氷を入れていない海水につけておくと物凄い勢いで鮮度が下がるので注意してほしい。
なお、もっと美味しく食べてみたいという方は、釣れたアジの頭にナイフを入れて「脳締め」で即死させ、エラ蓋から背骨の下側の血管をナイフやハサミで切ったあと、尻尾をもって20秒ほど海水の入ったバケツの中で「フリフリ」して血抜きをしてみよう。これだけで相当量の放血ができ、持ち帰ったあとで捌いてみると、身から血が抜けて白っぽくなっているのがわかる。
血が抜けていると臭みが減るため、特に刺し身にする際は効果的だ。血抜きをしたアジはそのままクーラーに入れて保管しよう。
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アジの美味しい食べ方
アジは年間を通して釣れるが、季節によっては釣れるサイズが異なってくる。とはいえ脂を蓄え黄色く光る金アジは非常に価値の高い美味しい魚。サイズごとに美味しい食べ方がある。ぜひさまざまな料理で召し上がってみてほしい。
釣れたアジのサイズ | 向いている食べ方例 |
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小アジ 10~20cm | アジフライ、唐揚げ、南蛮漬け、小アジの押し寿司、握り寿司、なめろう |
中アジ 20~30cm | アジフライ、刺し身、握り寿司、なめろう、煮付け、塩焼き、干物 |
大アジ 30cm~ | 半身大アジフライ、刺し身、塩焼き、干物 |
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LTアジ釣りの乗船方法について
釣り船の探し方と予約
東京湾のLTアジ釣りは最も人気の釣り物とあって、ほぼ湾内全域から出船している。
船を探すには釣り船予約サービス『釣割』を利用するのが便利だ。船は誰でも乗れる「乗合船」プランで出船しているところを探そう。貸し切りをするのであれば「仕立船」だ。乗合船であれば、午前か午後の半日便でだいたい6,000~8,000円ほどで釣行可能。
釣り船の出船地
千葉県であれば千葉、船橋、市川、浦安。東京都であれば葛西、深川、芝浦、品川、大森、羽田。また江戸川、中川、荒川、隅田川。埼玉県からも河川の船着き場から出船している船がある。神奈川県であれば、川崎、鶴見、横浜、根岸、金沢八景。
いずれにしても釣り場は東京湾中央部であることが多く、出船地が釣り場から遠い船は航走時間が長くなり、釣り場に近い船はあっという間に釣り場に着くが、都心からは遠くなる。お住まいから行きやすい船を探そう。船宿はどこも個性的。お気に入りの船を見つけ出すのも船釣りの楽しみのひとつだ。
関東で駅から近い船は多くが電車釣行可能で、始発のダイヤに出船時間が合わせてある。また、早朝発の午前便だけでなく、お昼発の午後便で出船している釣り船も多い。午前と午後のどちらが釣れるかは当日の潮回りや海況次第によるところが大きく、有意な差はない。また、乗船手続きは混雑することもあるので、必ず出船時間の30分以上前には船宿に到着するようにしよう。
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