
限られた実釣時間、流れのないバックウォーター、そして姿を見せないバス。高知県・さめうら湖で奥田学氏が挑んだのは、決してイージーとはいえない1DAYゲームだった。状況が動く瞬間を先読みし、ウッドチップの変化とバスのレンジを見極めながら、シマノの新作「フェイサー85+SF」を投入。果たして、厳しい状況を打破した奥田学氏の一手とは。
●文:ルアマガプラス編集部
【奥田 学/おくだ・まなぶ】ビッグベイトやジャイアントベイト、そしてアンブレラリグなどストロングスタイルを主軸に、常に現場最大級を仕留めるBIG BASSハンター。愛称は誰が呼んだか“ロボ奥田”。直立不動かつ精密機械の如く隙のない動きで狙った獲物を仕留めるのがその名の由来。近年は国内のみならず世界へと繰り出し、淡水海水の大物ゲームに挑んでいる。
厳しい状況を先読みする、奥田学のさめうら湖1DAY戦略
高知県に位置する四国最大のリザーバー、さめうら湖。吉野川最上流部に位置し、広大な水域と複雑に入り組んだワンドを擁する、豊かな資源に恵まれたフィールドである。この地に、ビッグバスハンターとして名高い奥田学が降り立った。
今回の釣行は、奥田の過密スケジュールの合間を縫って敢行された強行日程である。朝マズメと夕マズメの実釣が不可能な厳しい時間制限の下、いかに効率良く魚を仕留めるかという、精度の高いゲームメイクが求められた。
釣行時期の6月初旬は、ポストスポーン期に当たる。バスの活性は気温や水温次第で上下しやすく、当日の朝は曇天となり、若干の冷え込みを感じさせる状況であった。実釣を開始した奥田が最初に直面したのは、カレント(流れ)がほぼゼロで、魚の姿もまったく見えないという極めて沈滞した状況である。
この厳しい現状に対し、奥田は冷静に状況打開の鍵を模索し、バックウォーター最上流域周辺に広く形成されたウッドチップに着目した。「ウッドチップを起点に流れの変化が起きる場所が良い。ただ、まだチップがバラけとる。カレントが出て密になった瞬間からが勝負やと思う」。
流れや風によってウッドチップが押し流されて密集すれば、太陽が出た際にその下へ好都合なシェード(陰)が形成され、周囲をクルーズする魚が集結し始める。たとえ光量がなくとも、カレント自体が魚を引き寄せる強力な要素になる。奥田はウッドチップの動きを鋭く観察しながら、流れが発生して状況が好転するタイミングを静かに待ち続けたのである。
状況を打破するシマノの新作「フェイサー85+SF」とタックルセッティング
時間の経過とともに流れが発生し始めると、エリアに変化が現れてようやくバスの姿が視認できるようになる。奥田は様々なレンジを試した結果、バスの多くが水面下20〜50センチの浅いレンジを意識していると確信した。そこで「魚は水面下20〜50センチくらいに多い印象。ならば、コレやね」と、シマノの期待の新作タイニー・スイムベイト「フェイサー85+SF」を投入した。
フェイサー85+SFは、全長85ミリ、重量8グラムのスローフローティング仕様のハードプラグである。あらゆるフィールドに生息するベイトフィッシュのサイズに対応するよう設計されており、既存のタイニースイムベイトである「Btベイト」(77ミリ、99ミリ)の中間に位置する絶妙なサイズ感を持つ。極限の「マッチ・ザ・ベイト」を具現化したルアーである。
この新作には、シマノ独自の画期的なギミックが凝縮されている。その筆頭が、ジョイント部からボディを折り畳んで飛行させる「アーマブースト」機構である。キャスト時にはボディが折り畳まれることで空気抵抗を劇的に削減し、小粒ルアーの弱点であった飛距離とキャスト精度を完全回復させている。
飛行時のスライスや回転によるトラブルもほぼ発生しないため、狙ったピンポイントへの正確なアプローチが可能となる。着水後は、磁力の働きによってジョイントの可動域が制限され、艶めかしいスイミングアクションを演出する。
さらに、誘い方を切り替える「2種類のテール」と「3タイプのリップ」が、状況への柔軟な対応を可能にする。 テールには、水をしっかりと切り左右にワイドなテーリングを見せる標準スイミング仕様の「スライステール」と、引くことでテール自体が微細に振動しi字系として誘う「ウェッジテール」が標準装備され、状況に応じて換装できる。
リップシステムは、水面下約20〜50センチをトレースする「ショートリップ」、約1〜1.5メートルへ潜行させる「ロングリップ」、表層用の「リップレス」が用意されており、今回はバスのレンジに合わせて「ショートリップ」が選択された。
このルアーを正確に撃ち込むために奥田が用意したロッドは、シマノの「キャプチャー264L/M-2」である。奥田の伝家の宝刀「274M-2」と同コンセプトの1.93メートルショート仕様のスピニングロッドであり、カバーやウッドチップが絡むピンスポットへ隙のない精度で撃ち込んでいく釣りに極めて適している。これにリール「ステラC3000HG」を組み合わせ、精密な操作環境を構築した。
カレントの発生とウッドチップの密集、奥田流カラー理論で連発
最上流域のエリアにおいて、ついに来たるべき時が訪れる。散らばっていたウッドチップが流れの発生によって徐々にエッジに集結し、高い密度を形成し始めたのである。
「ウッドチップが密に集結すればバスも集結することがわかっていた」。
この決定的なチャンスにおいて、奥田はさらにルアーの「カラー」を最適化させた。奥田がカラーを選ぶ基準は「フラッシング」「透け感」「膨張色」の3大要素である。
当日はクリアな水質の中、バスがベイトフィッシュを追っており、光量も強まった状況であった。そこで、それまで使用していたフラッシング系から、ナチュラルな透け感を持つ「STチアユ」カラーへシフトした。色のアプローチを変えた瞬間、バスのチェイス速度が劇的に向上し、即座にバイトへと持ち込むことに成功する。
密集したウッドチップのエッジへフェイサー85+SFを正確に落とし、スローに、かつ丁寧にトレースする。ウッドチップのカバー下から猛然と湧き上がってきたバスが、次々とルアーをひったくっていった。奥田は狙いすました戦略で、確実にグッドサイズを連発させていった。
「狙い通り。チャンスが来た時に仕掛けてズバッとハマった。それが本当に気持ちいい!」。
限られた時間と厳しい沈静状況からスタートしながらも、自然の流れを読み、ルアーのギミックとカラー理論を完璧に調和させて仕留めた1日。奥田学の緻密なフリースタイル戦略は、さめうら湖の初夏の旬を完全な形で捉えてみせたのである。
※本記事はWEB向けのダイジェスト版です。フルバージョンは『ルアーマガジン2026年9月号』に掲載されています。
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