さて、重版決定・好評発売中の魚食革命『津本式・究極の血抜き』完全版(ルアマガブックス・1月20日発売)編集中、編集後に得た様々な、お魚マニア情報を「津本式」の視点から抜き出しWebで紹介していこうかと思っております。今回は解説本の中では語られなかった「サバ」という魚について、少しマニアックに語ってみたいと思います。そして、魚の美味しさ、熟成の秘密についても少し解説しますね!

画像: サバは5日寝かせて、刺し身で食べよう! 熟成魚の美味しさのひみつ【津本式マニアックス】

【ちなみに】解説本、Amazonでは欠品中につき重版分を1月24日に納品予定。転売さんの高いやつ買わなくても大丈夫ですからね! 初版が欲しいかたは釣り具屋さんか、書店の在庫をお探しください。

サバは寝かせて5日前後が美味しいお魚

サバと言えば、足の速い魚として有名ですよね。鮮度が良ければ抜群に美味しいけれど、腐敗するのも速い。だから酢じめにしたりとさまざまな保存法が確立されていたり、アニサキスなどの寄生虫もつきやすいことから、とにかく鮮度の良い状態で処理したい魚の筆頭格だと思います。



ですが、この津本式の一連の処理を行えば、サバに限らず、足の速いと言われている魚たちの鮮魚保存時間がぐーんと伸びます。しかも旨味が増すことがわかってきました。津本式処理を導入されている釣り人や料理人さんの界隈では「サバは最低5日は寝かせよう」なんてのがあたりまえ。

画像: サバの熟成鮨。sushi bar にぎりて(西新宿)

サバの熟成鮨。sushi bar にぎりて(西新宿)

でも、これは熟成の初級導入編で、家庭でもできるお話なんですが、料理人さんたちは1ヶ月熟成なんて異次元ワールドにも難なく突入させていて、「サバが痛みやすい魚だなんて誰が言った?」状態なのであります。

まぁ、料理人さん云々の話はおいといて、アニサキスを含めた問題をクリアすべく、釣り人向けのサバの扱い方について、少し時系列で追ってみたいと思います。そして熟成魚のちょっとマニアックなお話も含めます。かなりマニアな話なので、ご容赦くださいませ。こちらは料理人さんにも、少しお役に立てるかもしれません。

アニサキスは内蔵から、魚の死後に身に移動する

津本「アニサキスは注意していれば、大丈夫よ。といっても実は僕もあたったことあるんやけどね(笑)。原因は割にはっきりしてるんよ」

どうすれば防げるんですか?

津本「釣り人の場合は釣り上げたあとに、脳締めして、そのあと身をしっかり冷やして保冷することやね。アニサキスの動きが抑えられるから。で、早く、津本式の処理をするとだいたい大丈夫やよ。僕があたったときは、実はほんの少し、魚の入れ替え時に常温で放置してたんよね。そしたら身に入ってて(笑)。ちゃんと魚の芯まで冷やしてると大丈夫やから(絶対ではありません)。それ怠ったんよね」

書籍で解説している処理ですね。身をしっかり冷やしてからクーラーボックスで保存する。これは、共通ですね。ちなみにアニサキスは内蔵のどのあたりに多いんですか?

津本「腸というか肛門のあたりは特に注意かな。その一連の手順を踏んでいたとしてもまな板に移ったのを気づかずにとか、結構あるから、さばくときは注意してみたほうが良いよ」

それでもアニサキスは怖いです?

鮮度の高い状態から、処理ができればアニサキスの危険はサバに限らずかなり減らせることがわかってきました。でも、やはり、細心の注意をと考える人もいるかと思います。残念ながら、酢じめ程度や熟成時間を経たところで、アニサキスは死滅しないので、以下の方法が有効であると言われています。

加熱か冷凍。そして目視。

焼き魚であれば、加熱により死滅するのでアニサキスを過度に恐れることはないですが、サバの刺し身の旨味を知っている人であれば生で食べたいと考える人も多いことでしょう。そういう場合は冷凍して家庭用冷蔵庫の場合は2日程度経過した後に、自然解凍させていただくのが安全とのお話。

ただし、冷蔵は魚の旨さをやや損なうので注意。-60度や液体窒素による瞬間冷凍設備があれば、いくぶん状態の劣化を抑えられるようですが、家庭用の冷蔵庫だと途端に食味が落ちることが知られています。

なので、究極系ということであれば、やはりアニサキスには細心の注意を払いつつも生で食べたいというのがグルメ道なのかもしれませんね。

じゃあ、サバをどうやって鮮魚状態で長期保存させるのか

もっとも手っ取り早く、コストが掛からないのが津本式の枠組みで処理、保存することです。津本式処理の最終手順、血抜き・内蔵処理をして脱水した魚を、ビニール袋に紙で包み、脱気して袋から空気を抜き、2度前後の冷水下で保存。という工程ができれば1週間程度ならば、なんの手当もせずに保存が可能です。

【注意】どちらにせよ鮮魚の取り扱いになりますので、短期間の保存でも過信せず注意を払ってください。ハードルは非常に低い技術ではありますが「正しい理解」が必要です。

この状態ですとイノシン酸熟成の恩恵を受けた旨味が強いサバを食べることができるでしょう。

【ちなみに】魚は、ATP(アデノシン三リン酸)という生命エネルギーが死後、イノシン酸という旨味成分に変化することで美味しくなります。それ以外に、グルタミン酸などの遊離アミノ酸類も持ち合わせてはいますが、通常の熟成は前者のイノシン酸の旨味が優位に働きますので、小社の解説書やwebでは短期熟成を「イノシン酸熟成」と言語化しています。

しかし、何度か当サイトでも解説しているとおり、魚の旨味の素となるイノシン酸は比較的早い段階で量のピークを迎え(魚によって変わりますが、半日から1日前後)、徐々に減少していきます。減少はしていくのですが、津本式の処理を行うとイノシン酸の減少率が優位に抑えられるエビデンスがとられています。

ようは津本式は美味しさ長持ち! ってことなんですが、この恩恵、さらに魚の味をネクストステージに引き上げる一助になっているんですね。そして、ここからが津本式の真骨頂です。

ネクストステージ熟成。「遊離アミノ酸類熟成」のひみつ。

ATPがイノシン酸に変化して美味しさが増すけど、そのピークは意外に早い段階に訪れるという事実を咀嚼すると、長期に寝かせることは実は愚策なのではないか? と勘づく方もいらっしゃるかもしれません。

ただ、単純な旨味のピークタイムと、美味しさのピークタイムは別であることも理解しておく必要があるかもしれません。肉質などの食感、香りなど、様々な要因が「美味しさ」と関わっていきますので....。どちらにせよ、これらの話はロジックとして意識しておいたほうがいいかもですが、一般的にはそういうのがあるんだくらいの認識で十分かと思います。

さて、これ以上詳しく解説していくと、また本1冊書けそうな勢いですので、ぎゅっと凝縮しますが、イノシン酸のピークタイムが短いということは、日が経てば経つにつれ、魚の旨味は減っていくという従来言われていた事の真逆の事実にぶちあたります。

でも、熟成魚は美味しいですよね。食べた方は特に頷いてくださると思います。となるとどういうこと? というお話になります。そこで注目したいのが「遊離アミノ酸類」の旨味のお話なんです。

遊離アミノ酸類ってなに?

代表的なのはグルタミン酸でしょうか。グルタミン酸などは、前述しましたが、魚の旨味成分のひとつです(もともと魚にある旨味です)。昆布だしや、調味料として知られる味の素などもグルタミン酸類の旨味です。このグルタミン酸はざっくり言うと、魚の筋肉などに代表される蛋白質が変化して増加していきます。※おなじみ「味の素」はサトウキビを発酵させて生成していますよね。

今までの魚食の概念で言うと、せいぜいイノシン酸がぐっと増えてくる死後1〜2日後を楽しむものでした。この状態というのはイノシン酸の旨味が優位に働いている状態で、そのグルタミン酸などに代表される遊離アミノ酸類の旨味というのに気づきにくい状態だったんですね。

しかし、東京海洋大学の高橋希元助教などの熟成魚研究などにより、魚種や状態にもよりますが、魚を寝かせて10日前後に、その遊離アミノ酸類が優位に増えてくる現象が確認されました。

つまり、鮮魚状態で10日以上の熟成を経ることが可能になれば、その旨味の恩恵に預かりやすいという結論になります。そう、従来ではそんな熟成状態を出現させることは難しかったのですが、長期保存に長けた津本式なら、ネクストステージが見えてくるのであります。

【ちなみに】旨味の谷間的なタイミングもあったりするわけです。



イノシン酸とグルタミン酸のゴールデンクロスポイントを見つけろ!

あー、もう理屈っぽくて、よくわかんねぇな。

ですよね。すみません。簡単に言うと、かつお出汁(イノシン酸)と、昆布出汁(グルタミン酸)。魚では相まみえて紡ぎ合うことのなかった2人が、津本式によって出会った〜(ウルルン滞在記風)。という奇跡が起こるのであります。

合わせ出汁効果というのをご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、双方の割合が1:1になると人間の感じる旨味は7〜9倍になると言われています。単純に比率1:1にすればいいなんて浅い話ではありませんが、これを素直に受け止めると、それに近いタイミングを魚に見出すことができれば、旨さが爆発や〜。ということになるわけです。

その見極めこそが、津本式開発者の津本さんが常々言われている「料理人」の領分なんですね。

画像: 今の状態の魚を見極め、どう調理するかは職人の腕の見せどころ。鮨処 ゆう心(宮崎県)

今の状態の魚を見極め、どう調理するかは職人の腕の見せどころ。鮨処 ゆう心(宮崎県)

当然ですが、ピークタイミングで食材を提供できればベストですが、場合によってはピーク前、ピーク後にそれを提供しなければいけない場合も出てくると思います。その調整を調味や調理で補完していく技術こそ、まさに料理人のテリトリーというわけでございます。

サバの熟成もしかり、食材の幅が広がる津本式というスキーム

はい。津本式の活用によって魚の長期保存が可能になったということは、単純に魚という食材の活用の幅が広がったという事実に気付かされることになります。特殊で高価な機材がなくとも、津本式の基礎をしっかりと理解すれば、我々釣り人だけでなく、一般の家庭、流通、料理人にとってもかなり有意義な魚の活用ができるわけですね。

画像: サバの熟成もしかり、食材の幅が広がる津本式というスキーム

ただ鮮度が下がり美味しさが低下する魚。ではなく、適切な処理をすれば鮮度という概念が薄れるどころか、美味しくなる魚。この技術に出会った小生が、「これは単に魚が旨くなるって話ではなく、魚食の革命や!」と鼻息が荒くなった理由が少しご理解いただけたでしょうか。

日本だけでなく、世界の魚食が変わる技術。誰でも試せるこの技術を惜しげもなく公開してくれた津本さんに感謝ですね。詳しい技術に関しては、津本式で検索、津本光弘さんのYouTubeをご覧にいただくか、発売されました書籍で習得くださいませ。




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